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お城奪還編
第67話 対峙
しおりを挟む「こっちこっち! 良い? よく見ててねっ!」
身を低くし急いで城壁へと近づいたアル達。
眼前には指をかける僅かな窪みも見当たらない程、真っ直ぐに高くそびえる城壁。
大理石のブロックが綺麗に積み重なった城壁の継ぎ目に、アズサが矢の先端を当てる。
カチンッ…… ゴトッ……
するとピタリとハマっていた大理石の板が取れ、中は空洞となっていた。
「あのロダンって人が彫ってたとこ、板を嵌めただけで直されてないんだよねっ」
皆に笑顔を向け得意げに話すアズサ。
「向こう側にも行けるのか?」
「もちろん! ボクは何度も忍び込んでるから、間違いないよっ!」
その言葉を聞いたリナは、少し焦ったように城壁の中へと潜り込んでいく。
「おっ、おい…… はぁ…… 俺達も続くぞ」
(ここまで来てリナに落ち着けってのも…… 無理があるか……)
アルは少し呆れながらも、リナの後に続いていく。
最後に入ったアズサが城壁の板を中から戻すと、皆の後に続いていった。
ガッガッ…… ガタン……
城壁の出口にハマる板をリナが蹴ると、音を立てて倒れ城壁の内部に明かりが差し込む。
「ちょっと待て! 落ち着けとは言わんけど…… 慎重に……」
先行しようするリナの腕をガッチリと掴んだアルは、城壁の内部から辺りを見回す。
「人の気配が無いな…… どっか良い場所は…… っと……」
アルは人の気配が無い事を察すると、城壁の近くにある生け垣に目をつける。
そして振り返り、内部に居るレイ達に声をかけた。
「静かに…… 様子を見てくるから、ちょっと待ってろよ?」
アルは頭を下げ、コソコソと生け垣に近付く。
生け垣は城の側面から正面扉の方まで続いており、身を隠すには絶好の場所と言えた。
「よしっ…… こっちだ」
アルは城の正面扉が見える位置まで近付くと、城壁の出口付近に居るリナ達を手招きする。
皆がアルの元へ集まると、リナが城を見ながら小さく呟く。
「やっと…… やっと……」
「冷静にな…… さて…… 反対側に行くには……」
アルはそう呟くと城壁の門を確認する。
(あそこから、城の扉までは一直線か…… 兵が帰ってきたら、さすがに不味いよな……)
アルは視線を正面扉の近くに移すと、綺麗に整えられた庭の景観をぶち壊すように醜悪な男の像が建てられている。
(あの像の男がゼニールって奴か…… てか兵の数があまりにも少すぎるよな。 何か罠でも……)
そして城の正面扉と、その上のバルコニーに視線を移す。
(とは言え、あまり時間も掛けてられないか……)
アルは生け垣の影に身を潜める皆の顔を見回すと、小さな声で呟く。
「正面は危険過ぎるし…… 引き返して、裏から回り込むか?」
アルの言葉を聞いたアズサは、眉間にシワを寄せ首を横に振る。
「それだと遠回りだし…… 裏は狭いから、人に出くわしたら反対側まで行けないかも」
アズサの言葉にアルは、少し思案するような様子を見せていた。
(となると…… やっぱリスク覚悟で……)
アルは生け垣に身を潜める皆の顔を改めて見回し、声をかける。
「どうする? 一気に突っ切るか?」
「うん! 人の気配もしないし、良いと思う」
アルの言葉に頷くレイに同調するように、リナとアズサも頷いていた。
少し緊張した面持ちのシナモンの頭を、アルはポンポンと叩くと
「ここまで来たら覚悟決めろよ?」
「はっ、ハイなのですよっ!」
その言葉を聞いたアルは再度シナモンの頭を叩き、皆に静かに声をかける。
「よしっ…… じゃリナの後に続いて…… 行くぞっ!」
その言葉を聞いたリナは、少し焦ったように勢いよく飛び出していった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
アル達が城壁を破る少し前。
アストリナ城の謁見の間では、玉座に座るゼニールと会話するレドルジの姿が見える。
落ち着き無く葉巻を吸いながら貧乏揺すりをするゼニールに対し、にこやかな口調でレドルジが声をかけた。
「どうしました? 何やら落ち着かない様子ですが」
「当たり前ゼニ! ったく…… ここ最近、全く良い事が無いゼニよ」
貧乏揺すりを続けながら、不機嫌そうに呟くゼニール。
そんなゼニールの様子を他所に、レドルジは涼し気な表情で言葉をかける。
「まぁまぁ。 貴族達が来たら、良い事だらけじゃないですか?」
「そうゼニが…… 本当に、今日ワシの前に貴族共を連れてくるゼニね?」
イライラした少し落ち着きの無い様子で、葉巻の先端をレドルジに向けている。
その様子を気にする素振りも見せず、レドルジが思い出したように声をかけた。
「そうだ! どうです? ちょっとした余興があるのですが」
「余興? 何の事ゼニ?」
レドルジの言葉を聞いたゼニールは、疑問を浮かべた表情で尋ねる。
「ふふっ。 気分転換にどうです? ちょっとバルコニーまで来て頂ければ……」
「一体、何の事ゼニ?」
「それは来てのお楽しみという事で。 では、参りましょうか?」
レドルジはそう言うと、ゼニールに背を向けバルコニーの方へと歩き出す。
「待つゼニ。 どうせ暇ゼニから、付き合ってやるゼニよ」
「それはそれは。 では……」
そう会話を交わした二人は、ゆっくりとバルコニーへと向かっていった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
バルコニーに到着したゼニールとレドルジ。
「おやっ? 丁度良かったみたいですねぇ」
レドルジがバルコニーから下を指差すと、全速力で駆けるアル達の姿が見えた。
「なっ、あっ、アイツ等は誰ゼニ!? オイっ! お前等、一体何者ゼニ!!」
バルコニーから大声で叫ぶゼニール。
その声に気付いたアル達は、突然の出来事に思わず足が止まる。
「チッ…… 見つかったか……」
城の正面扉の近くまで到達した時点で、ゼニールとレドルジに見つかったアル達。
アルは見覚えのあるレドルジを見て、少し嫌な予感がしていた。
(アイツ…… 集落跡に行かなかったのかよ! どうする…… 兵は……)
「行くよっ」
リナが大きな声で皆に告げると、立ち止まってたアル達はハッと我に返る。
そして再び走り出そうとした時、ゼニールが青筋を立てて大声で叫んだ!
「出会え!! 出会うゼニっ! その賊共を八つ裂きにするゼニよぉーー!!」
「チッ。 ヤベェな…… おいっ! ここは俺に任せて皆」
ゼニールがバルコニーの上から大声で叫ぶと、城の側面から兵達が駆けつけてきた。
その数…… 五人。
「先にって…… あれ? 少なっ」
「うん。 少ないね! これ位なら私達で何とかなるんじゃないかな?」
「……確かに」
「うんうん!」
手に剣や槍を持った兵が五人、正面扉の前に並んでいる。
その兵の数を見たゼニールは、焦った表情でレドルジを睨みつける。
「だから言ったゼニ! どうするゼニかっ!!」
怒りの混じった口調で話すゼニールに、レドルジはにこやかな口調で声をかけた。
「ふふっ。 見た所、女子供ばかりじゃ無いですか」
レドルジは正面扉の前に居る兵士達と対峙する、アル達に視線を向ける。
「まぁ…… そうゼニが……」
「まさかゼニールさんの兵は、女子供にも勝てない…… とは言いませんよね?」
その言葉にムッとした表情に変わったゼニールは、青筋を立てながら叫ぶ。
「えぇぇい! 何してるゼニ! さっさとソイツ等を皆殺しにするゼニよ!!」
「ははっ!!」
ゼニールの言葉を聞いた兵達は、大きな声で返事をすると切っ先をアル達へと向けた。
その様子を見ていたレドルジは、右手で眉間を触りながら思案している。
(まさか【烙印】の者達が女子供とは…… いや…… 本当に【烙印】を持っているんですかね?)
レドルジはバルコニーの下に居るアルの顔を、ジッと見つめながら思案を重ねていく。
(私の予想通りやはり、あのアルという男が絡んでいましたか…… あの者達が本当に【烙印】を持っていたなら…… ここまでは概ねルクレティア様の【予定】と重なりますが……)
レドルジは口元を触りながら、アル達の様子を伺っていた。
そのアル達と対峙する兵士達は、切っ先を向けながら薄笑いを浮かべ言葉をかける。
「女子供とは言え容赦はせんぞ? 覚悟は出来てるんだろうな?」
兵士達の言葉を聞いたレイは、愛用のメイスを兵士に向け大きな声で叫ぶ。
「貴方達こそっ! 怪我しても知らないんだからねっ!!」
レイの言葉に同調するように、アズサとリナも身構えていた。
その様子を見ていた兵士は、「ふんっ」と鼻で笑うと
「威勢の良いガキだ! 死んでから後悔するんだなっ! かかれっ!!」
「オウッ!!」
そう叫んだ兵士達は、勢いよくレイ達に突撃していった。
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