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バレリア決戦編
第82話 裸でご飯?
しおりを挟むアル達がアストリナ城にやってきて数日経ったこの日。
「じ…… ジリ貧過ぎる…… なっ、なぁシナモン」
「何なのです? 今とっても忙しいのですよ」
ここはアストリナ城にある執務室。
そこに設置された大きなテーブルの上には、書簡が山のように積まれていた。
アルとシナモンは午前中から執務室に籠もり、うんうんと唸りながら作業している。
アルは山積みになった書簡に目を通しながら、深く溜息を吐いていた。
「ったく…… 何で俺がこんな事しなきゃいけないんだよ……」
ブツブツと文句を言いつつ、シナモンに視線を送る。
「えーーっと…… 建築費用はアレで賄って…… ……なのです」
アルの声が聞こえてないのか、しかめっ面をしたシナモンはブツブツと呟いていた。
「はぁ…… こんなの他の奴にやらせろよ…… 俺は【烙印】も集めなきゃいけないのに……」
アルは文句を言いつつも、山積みにされた書簡に目を通していく。
すると隣に居たシナモンの手がピタッと止まる。
そしてクルッとアルの方を向き、ジッとアルの目を見つめていた。
「な…… 何すか? ちゃんとやってますけど……」
真剣な表情で見つめるシナモンに対し、アルは少し圧倒されるように引きつった笑顔を向けた。
「今、何て言ったですか?」
「何て? いやぁ…… 他の奴にやらせろって…… そんな怒るなよ」
睨むようなシナモンの視線に対し、アルは申し訳無さそうな表情で返答する。
「そうじゃないのです。 その後の事なのですよ」
「あと? あとって…… あぁ、【烙印】を集めるって話かな?」
アルの問いかけに対しシナモンは、うんうんと首を縦に振る。
「それがどうかしたのか?」
「どうかするですよ! そんなの集めて、どうするつもりなのですか?」
シナモンの問い掛けに対し、アルは俯くと思案するような様子を見せていた。
(うーーん。 まぁ何の為にって言われてもなぁ。 元の世界に戻る為とは言えんし)
アルは少し思案を重ねながらも、改めてシナモンに視線を送る。
(まぁ…… 適当に誤魔化しておくか……)
「そりゃ当然だろ。 【烙印】を持ってる奴が多ければ、それだけアストリナの為になるだろ?」
「まぁ確かにそうなのですが…… アルさんがまともな事言うのが、ちょっと引っ掛かったのですよ」
そう言うとシナモンは呆れた表情で溜息を吐いた。
「お前なぁ…… 俺はいつだって、まともな事しか言わないだろ……」
少しムッとした表情で話すアルに対し、シナモンは少し真剣な表情に変わる。
「確かにアルさんは一目見ただけで【烙印】の特性が分かるですし……」
(まぁそりゃただの漢字だからな……)
「それを利用して【神狼】だって倒す事が出来たですし……」
(むしろ俺じゃどう頑張ったって倒せないしな……)
「でも…… 【烙印】を確認すると称して、ヤラしい目つきで女体を舐め回すように見てるですが」
「おいっ! 誰が舐め回してんだよっ!」
シナモンの呟くような言葉に対し、アルはムッとした表情で抗議する。
そんなアルの言葉を無視するように、シナモンはアルに問い掛けた。
「本当は女体を舐め回したいだけじゃないのですか?」
「お前それは何かちょっと意味が変わってくるだろ……」
「居るですよ?」
「居るって何が?」
少し怒ったような表情のアルを気にする素振りも見せず、シナモンが言葉を発する。
「【烙印】を持った人が居るのですよ。 アストリナに」
「えっ? マジ?」
アルは驚いた表情で確認すると、シナモンはゆっくりと首を縦に振った。
「会うですか? まぁ…… アルさんと一緒なのですが……」
シナモンの言葉を聞いたアルは、更に驚いた表情に変わる。
「一緒ってまさか……」
「なのですよ。 アルさんと一緒でグータラで女たらしなのですが」
「グータラでも女たらしでもないし……」
アルは一瞬【数字の烙印】が居ると勘違いしたが、シナモンの言葉を聞いて呆れた表情に変わった。
「まぁ会うなら一つ忠告しておくですよ」
シナモンは目を瞑り右人差し指を立てながら、少し偉そうな口調で話を続ける。
「アルさんには一応、王様として会って貰うのです。 なので威厳のある態度で接して欲しいのですよ」
「充分、威厳あるだ」
「無いのです! 会うなら謁見の間に呼んでくるですが、どうするです?」
「あぁ。 じゃお願いしよっかな」
アルはテーブルの上に山積みにされた書簡に視線を送る。
(正直、こんなのやってられないしな…… 何とか誤魔化して後はダラダラするかなぁっと……)
書簡を見つめるアルに対し、シナモンは少し呆れた表情で言葉をかける。
「分かったのですよ。 じゃそんな格好じゃなく、ちゃんとした服装に着替えると良いのです」
そう言うとシナモンはスッと立ち上がり、部屋を後にしようとする。
しかし出口の前でピタッと立ち止まると、アルの方を振り向き声をかけた。
「言っておくのですが…… 終わったらお仕事の続き、頼むですよ」
「えぇ…… お前、心読めんの……?」
アルが返事をする間も無く、シナモンは部屋を後にした。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
謁見の間にはセバスタンを始めとした人々に加え、リナやアズサ、レイの姿も見えた。
着替えを済ませ威厳のある王族の衣装に着替えたアル。
玉座に腰掛けたアルの隣にはリナが座り、リナの傍らにはアズサが立っている。
レイはアルの横で退屈そうに立ち、セバスタンを始めとした家臣団も脇に控えていた。
謁見の準備が整ったのを確認したアルは、周りを見回しながら心の中で呟いていた。
(はぁ…… ここまでしなきゃいけないのかねぇ……)
そんなアルを他所に、音を立ててゆっくりと謁見の間の扉が開く。
ギギギギギギ…… バターーーンッ……
「アルヴァイン王に拝謁するのです!」
シナモンが大声を上げ、アルの返答を待っていた。
「えっ? えーーっと……」
「んむむ……」
口籠るアルに対し、シナモンは怒ったような表情で睨みつける。
そんなシナモンの後ろに控えていた男が、「フッ」と小さく笑みを漏らし話し始める。
「小さなレディ、そろそろ良いかい?」
「んなっ!!」
怒るシナモンを他所に、男は颯爽と歩き出しアルの前へとやってきた。
そして片膝を付くと、にこやかな笑顔で話し始める。
「キミがアルヴァイン王かぃ?」
「えっ? あぁ…… まぁ……」
キザっぽくタメ口で話す男に対し、アルは少し呆れた表情で返答する。
「僕の名前はロダン。 まぁ、天才にして天才。 神の奇跡が生んだ天才彫刻家さっ」
ロダンの自己紹介を聞き、アルは小さく溜息を吐く。
(何回、天才って言ってんだコイツ…… これは…… 出来れば関わるのパスしたいかも……)
そんなアルの様子を他所に、遅れてアルの前にやってきたシナモンが片膝を付く。
そしてロダンをギロッと睨みつけると、少し怒った口調で話しかけた。
「アルさんに対して失礼なのですよ! ちゃんと何ていうかその…… う、敬うのですよ」
「いや、お前もアルさんとか言ってるしな…… もうそういうの良いから、普通に立ってもらえる?」
「んなっ! アルさん! ちゃんと言った通りに威厳の……」
そんなシナモンとロダンの様子を見ていたアズサは、ハッとした表情でリナに小さな声で話しかけた。
「リッ、リナちん。 アレだよ、ボクの裸にご飯奢って城壁壊した人」
リナはアズサのよく分からない話を聞くと、目を瞑り少し眉間にシワを寄せていた。
そしてアルにチラッと視線を送ると、小さい声でアルに話しかけた。
「アレだって…… 裸でご飯で城壁壊した人……」
「はっ? 裸でご飯?」
アルは少し驚いた表情でリナに聞き返すが、リナは眉間にシワを寄せたまま目を瞑っていた。
その表情を見たアルはリナの奥に居るアズサに視線を送る。
「うんうん! アレアレ!」
「何がだよ……」
自信満々で頷くアズサの表情を見て、アルは呆れた表情に変わっていた。
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