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秋田県秋田市手形のジャズ喫茶にてコーヒーとチーズケーキと人生相談を
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土日、手持ち無沙汰になっていた俺は、秋田にある大学付近で良いジャズ喫茶があると聞き、そこへ向かってみた。
近場まで来てみると、看板と木造の建物が見えた。ジャズ喫茶は人生初めての経験だ。ちょっと敷居が高い感じがある。心の中でよしいくぞと準備をして、ドアを開けた。
ギィ~ チャリン チャリン
「いらっしゃい」
店内に入るとマスターさんの挨拶が聞こえた。見た感じは人の良さそうな方だ。店内に流れているジャズの音量はほどよい音量である。とある漫画を読んだ時に、ジャズ喫茶は耳が破裂するくらいのけたたましい音楽を流しているというイメージがあったが、これはこれで良いし、むしろこっちの方が落ち着いてコーヒーを飲めそうだ。
マスターがいるカウンターには大量のレコードが置いてあった。カセット・CD世代の俺にはこの良さが分からんが、マニアにはたまらん店、いわばディープな店だなという感じがすごくある。
「レコードに驚きましたか? 結構プレミアのついているレコードも多いので、盗難されないか心配なんですよ」
「へぇ~、高いのでおいくらくらいですか?」
「そうですね、一枚で五十万円払う人がいてもおかしくはないものもありますね」
「す、すごいですね」
「立ち話もなんですので、席にお座り下さい」
カウンター席が数席あるな。奥の方に喫煙可能な席は一カ所のみあると。非喫煙かの俺としてはたばこはコーヒーの香りを味わうのに邪魔だ。しかし、この店は喫煙家と非喫煙家に対しても気遣いをしている。どちらもないがしろにしていない感じは好印象だ。俺は喫煙席から離れた位置に座るとするか。
そして、やはり店内に漂うコーヒーの香りが素晴らしい。昔、俺の親にコーヒー豆の良さを説かれ、コーヒーミルとコーヒー豆、ドリップ式でいれる紙と容器を貰って以来、俺はコーヒーにはうるさい男となった。胃袋がコーヒーに一目惚れし、求婚をしている。
さて、メニューメニューと。コーヒーは一杯500円、チャージで250円、回数券もありと、それに本日のデザートか。
「注文良いですか?」
「はい、どうぞ」
「コーヒーと本日のデザートで」
「はい、ちょっと待って下さいね~」
待っている間、店内を見回してみた。平屋の喫茶店だと思ったが、実は地下に続く階段もあり、グループでくつろげるソファやテーブルがある。一人でなければ下の空間も使ってみたいな。
「お客さんはご近所に住まれている方ですか?」
「はい、仕事で秋田に滞在していますので」
「ははは、そうですか。ジャズ喫茶はお好きで?」
「実は今日が初めてです」
「そうですか。このお店では良心的な値段でコーヒーとジャズを楽しめるようにしています。ゆっくりとしていってください」
ふんわぁ
マスターがドリップ式でコーヒーをいれた瞬間、店内にむせかえるほどのコーヒーの魅惑的な香りが広がる。これはマスターとの距離が近い喫茶店だからこそ楽しめる要素だ。
「今日のデザートは、私が焼いたチーズケーキです」
チーズケーキか。コーヒーとチーズケーキの相性はいかがなものか。いや、甘いものにはコーヒーは絶対合う。これは世界の常識である。
「はい、お待たせしました」
〇コーヒー〇
マスターがその場でいれてくれたものだ。フルーティーかつ、こうばしい香りが漂う。コーヒーカップが手作り感溢れるいびつな形なのも味わい深い
なんか心の中でゴローちゃん風に解説しちゃったぞ。まあ誰も聞いていないからいいだろう。
〇本日のデザート〇
マスターの手作りチーズケーキである。ちょっとポロポロと形が崩れているのは愛嬌。
まずはコーヒーから頂くか。
ごくり
おお、これはいい。コーヒーの個性は強いが、すぅーと入るような感じがある。コーヒーの味というのは豆の産地とか豆の比率とか焙煎具合で味は変わるんだろうが、美味しければそんなことは気にしなくてもいいや。どんなコーヒーにも良さがある。それを認めてこそ真のコーヒー通だ。まっ、缶コーヒーとか安いコーヒーに関しては、気軽に飲めるとしかフォローはできんがな。
「うちは大平山の湧水を使っているんですよ。なかなかいいでしょ」
なるほど、普段飲むコーヒーより味に柔らかみのある感じがある。これならコーヒーそのものの良さを壊さないな。そしてやはりジャズもいいな。俺はガキっぽい男ではあるが、こうやっていると今の俺は大人の男って感じだな。
「どうでしょうか? 今日は私が試しに作ったブレンドなんですよ」
「ええ、そうなんですか! とても良いお味です!」
「それは良かったです。正直私もこれが良いのかよく分からないのもので」
「自分はどんなコーヒーにも良さがあると思うスタイルですので、こういう日替わりというか気ままで適当なブレンドというのは凄く好きですよ」
「ありがとうございます」
さて、そろそろチーズケーキをと。形が崩れやすいからフォークで上手くすくってぱくりと。
おぉ、これはまさにチーズケーキだ。普段食べるチーズケーキがチーズ風味のケーキに感じられるほど、チーズの味がしっかりとしている!
「形の悪いチーズケーキですがどうでしょうか? 私好みに作ったので味は悪くはないかなと思うんですが」
「こちらもとても美味しいです」
「そういってもらえるとありがたいです。ジャズ喫茶では雰囲気を味わって貰うためにあまり私はおしゃべりしない方がいいのですが、どうにもおしゃべり好きでしてね、ははは」
いつの間にかレコードの曲も終わっており、マスターが別のレコードをセットした。
俺はこの当時自身の仕事の道を悩んでいた最中である。このマスターなら人生の悩みを打ち明けても良いかなと思う気になった。
「マスター、自分は今は料理人をやっているんですが、ちょっとこのままでいいのか悩んでいるところなんです」
「そうなんですか。実は私は脱サラしてこのお店を始めたんですよ。私も初めて働いたところは酷い環境だったもので、後に私の当時の先生に助けて貰ってまともな会社に入れましたね。でも、こういうお店をやってみたいという気持ちが強くなってジャズ喫茶をやるようになりました。人生長いと色々あります。そうだ、よろしければ」
マスターが俺に名刺を渡してくれた。
「どうもです。俺は名刺はないのですいません」
「いいですよ。それよりも大事なのは簡単な形でもいいので名刺を作れるようになることです。自分を名刺で紹介できる程の人間になるという事は、自分に誇りや自信があると言うことです。次に会う時は是非名刺で自分を紹介できる人間になって下さい」
「ありがとうございます」
なんだかマスターに人生相談してもらったみたいでコーヒー一杯とデザートだけで、値段以上のものを頂いた感じがある。今日はこのお店に入って心から良かったと思う。
ぎぃ~ ちゃりん ちゃりん
「こんにちはマスター、TVいいかな?」
常連さんらしい中年の方が来たようだ。マスターがジャズを止めて、店内のTVをつける。
「すいません。曲はいったんストップします」
店内の大きなTVには競馬の様子が映し出された。俺はこのお店には競馬を見に来たわけではないが、客に合わせてこういう対応をするのも個人の喫茶店らしくて良いな。チェーン店ではまずしない。
さて、コーヒーもケーキも食べたし、全く興味の無い競馬でも見ながら、お店のフランクな雰囲気を味わい尽くすとするか。
近場まで来てみると、看板と木造の建物が見えた。ジャズ喫茶は人生初めての経験だ。ちょっと敷居が高い感じがある。心の中でよしいくぞと準備をして、ドアを開けた。
ギィ~ チャリン チャリン
「いらっしゃい」
店内に入るとマスターさんの挨拶が聞こえた。見た感じは人の良さそうな方だ。店内に流れているジャズの音量はほどよい音量である。とある漫画を読んだ時に、ジャズ喫茶は耳が破裂するくらいのけたたましい音楽を流しているというイメージがあったが、これはこれで良いし、むしろこっちの方が落ち着いてコーヒーを飲めそうだ。
マスターがいるカウンターには大量のレコードが置いてあった。カセット・CD世代の俺にはこの良さが分からんが、マニアにはたまらん店、いわばディープな店だなという感じがすごくある。
「レコードに驚きましたか? 結構プレミアのついているレコードも多いので、盗難されないか心配なんですよ」
「へぇ~、高いのでおいくらくらいですか?」
「そうですね、一枚で五十万円払う人がいてもおかしくはないものもありますね」
「す、すごいですね」
「立ち話もなんですので、席にお座り下さい」
カウンター席が数席あるな。奥の方に喫煙可能な席は一カ所のみあると。非喫煙かの俺としてはたばこはコーヒーの香りを味わうのに邪魔だ。しかし、この店は喫煙家と非喫煙家に対しても気遣いをしている。どちらもないがしろにしていない感じは好印象だ。俺は喫煙席から離れた位置に座るとするか。
そして、やはり店内に漂うコーヒーの香りが素晴らしい。昔、俺の親にコーヒー豆の良さを説かれ、コーヒーミルとコーヒー豆、ドリップ式でいれる紙と容器を貰って以来、俺はコーヒーにはうるさい男となった。胃袋がコーヒーに一目惚れし、求婚をしている。
さて、メニューメニューと。コーヒーは一杯500円、チャージで250円、回数券もありと、それに本日のデザートか。
「注文良いですか?」
「はい、どうぞ」
「コーヒーと本日のデザートで」
「はい、ちょっと待って下さいね~」
待っている間、店内を見回してみた。平屋の喫茶店だと思ったが、実は地下に続く階段もあり、グループでくつろげるソファやテーブルがある。一人でなければ下の空間も使ってみたいな。
「お客さんはご近所に住まれている方ですか?」
「はい、仕事で秋田に滞在していますので」
「ははは、そうですか。ジャズ喫茶はお好きで?」
「実は今日が初めてです」
「そうですか。このお店では良心的な値段でコーヒーとジャズを楽しめるようにしています。ゆっくりとしていってください」
ふんわぁ
マスターがドリップ式でコーヒーをいれた瞬間、店内にむせかえるほどのコーヒーの魅惑的な香りが広がる。これはマスターとの距離が近い喫茶店だからこそ楽しめる要素だ。
「今日のデザートは、私が焼いたチーズケーキです」
チーズケーキか。コーヒーとチーズケーキの相性はいかがなものか。いや、甘いものにはコーヒーは絶対合う。これは世界の常識である。
「はい、お待たせしました」
〇コーヒー〇
マスターがその場でいれてくれたものだ。フルーティーかつ、こうばしい香りが漂う。コーヒーカップが手作り感溢れるいびつな形なのも味わい深い
なんか心の中でゴローちゃん風に解説しちゃったぞ。まあ誰も聞いていないからいいだろう。
〇本日のデザート〇
マスターの手作りチーズケーキである。ちょっとポロポロと形が崩れているのは愛嬌。
まずはコーヒーから頂くか。
ごくり
おお、これはいい。コーヒーの個性は強いが、すぅーと入るような感じがある。コーヒーの味というのは豆の産地とか豆の比率とか焙煎具合で味は変わるんだろうが、美味しければそんなことは気にしなくてもいいや。どんなコーヒーにも良さがある。それを認めてこそ真のコーヒー通だ。まっ、缶コーヒーとか安いコーヒーに関しては、気軽に飲めるとしかフォローはできんがな。
「うちは大平山の湧水を使っているんですよ。なかなかいいでしょ」
なるほど、普段飲むコーヒーより味に柔らかみのある感じがある。これならコーヒーそのものの良さを壊さないな。そしてやはりジャズもいいな。俺はガキっぽい男ではあるが、こうやっていると今の俺は大人の男って感じだな。
「どうでしょうか? 今日は私が試しに作ったブレンドなんですよ」
「ええ、そうなんですか! とても良いお味です!」
「それは良かったです。正直私もこれが良いのかよく分からないのもので」
「自分はどんなコーヒーにも良さがあると思うスタイルですので、こういう日替わりというか気ままで適当なブレンドというのは凄く好きですよ」
「ありがとうございます」
さて、そろそろチーズケーキをと。形が崩れやすいからフォークで上手くすくってぱくりと。
おぉ、これはまさにチーズケーキだ。普段食べるチーズケーキがチーズ風味のケーキに感じられるほど、チーズの味がしっかりとしている!
「形の悪いチーズケーキですがどうでしょうか? 私好みに作ったので味は悪くはないかなと思うんですが」
「こちらもとても美味しいです」
「そういってもらえるとありがたいです。ジャズ喫茶では雰囲気を味わって貰うためにあまり私はおしゃべりしない方がいいのですが、どうにもおしゃべり好きでしてね、ははは」
いつの間にかレコードの曲も終わっており、マスターが別のレコードをセットした。
俺はこの当時自身の仕事の道を悩んでいた最中である。このマスターなら人生の悩みを打ち明けても良いかなと思う気になった。
「マスター、自分は今は料理人をやっているんですが、ちょっとこのままでいいのか悩んでいるところなんです」
「そうなんですか。実は私は脱サラしてこのお店を始めたんですよ。私も初めて働いたところは酷い環境だったもので、後に私の当時の先生に助けて貰ってまともな会社に入れましたね。でも、こういうお店をやってみたいという気持ちが強くなってジャズ喫茶をやるようになりました。人生長いと色々あります。そうだ、よろしければ」
マスターが俺に名刺を渡してくれた。
「どうもです。俺は名刺はないのですいません」
「いいですよ。それよりも大事なのは簡単な形でもいいので名刺を作れるようになることです。自分を名刺で紹介できる程の人間になるという事は、自分に誇りや自信があると言うことです。次に会う時は是非名刺で自分を紹介できる人間になって下さい」
「ありがとうございます」
なんだかマスターに人生相談してもらったみたいでコーヒー一杯とデザートだけで、値段以上のものを頂いた感じがある。今日はこのお店に入って心から良かったと思う。
ぎぃ~ ちゃりん ちゃりん
「こんにちはマスター、TVいいかな?」
常連さんらしい中年の方が来たようだ。マスターがジャズを止めて、店内のTVをつける。
「すいません。曲はいったんストップします」
店内の大きなTVには競馬の様子が映し出された。俺はこのお店には競馬を見に来たわけではないが、客に合わせてこういう対応をするのも個人の喫茶店らしくて良いな。チェーン店ではまずしない。
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