【完結】ひたすら。

まこ

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数ヶ月が経った頃、突然ひなたに呼び出された。

「どうしたー?初めてだよねプライベートで会うの」

指定されたカフェへ行くと、ホットコーヒーを飲んでまったりしているひなたの向かいに腰掛けた。

「麗くん突然ごめんね、今日は来てくれてありがとう。早速なんだけどさ、俺キャストは辞める事にしたんだ」

「え?何で?」

「特に目標があってこの仕事をしてたわけじゃないって話したと思うんだけどさ、やっぱり麗くんと槙田さん以外と接客してる時は前程モチベーションが上がらなくて。今、就活もしてたんだけど、たまたま先輩に誘われて同じ業界でキャストをサポートする様な仕事しないかって言われてさ。そっちに行く事にした」

頼んだカフェオレが届いたのでそれを飲みながらひなたの話を聞いていると、俺も将来どうしようかとぼんやり考えた。

「麗くんと槙田さんには楽しませてもらったからきちんとお話ししておこうと思って。改めてありがとね」

「こちらこそ」

「それでさ。最後に一つ俺からお願いがあって」

「何?」

「一緒にサポートする仕事しない?稼げるお金は今現在よりかは下がるかもしれないけど」

ひなたにそう言われて、正直揺らいでいる自分が居る。実際、最近は先輩以外とプレイする時辛いと思う事が増えた。

「麗くんと居ると楽しいからさ、一緒にこれからも居れたらいいなって思っただけ」

「…でもキャスト辞めたら、先輩ともうこういう事出来なくなるのかな、って思うと中々辞める勇気が出なくて」

「それ本気で言ってるの?」

「え?」

「…槙田さんって、麗くんにガチ恋だよね。というより明らかに両想いだよね」

ひなたが目を丸くしながらそう呟くと、俺はぶわっと顔が熱くなった。

「え!?うそ!?」

「うん。何で敢えて店で会ってるのか不思議だったけど、そういう事だったんだね。麗くんが槙田さんの事好きなら告白してみたら?すぐOKくれると思うよ」

「……」

「ま、折角大学行ってるからやりたい事とかあると思うし無理強いはしないけど、全部含めて考えておいてよ。今日は時間作ってくれてありがとね、またね」

そう言うとひなたはお金を置いてさっさと帰って行ってしまった。

先輩が俺を好き?本当に"俺"を好き?

3Pの後、一緒にホテルへ泊まったが手は出してこなかった。

先輩は"麗"だけが好きなんじゃないのか。

でも今までの態度を見ると俺の事好きなのかもと思った事は多々あった。

ひなたと同じ仕事に就く事は一旦置いといて、自分のモチベーションの為にも先輩と一度話をしてみたい。

俺はこのままの勢いで先輩に電話をかけた。

「…何だ、珍しいな」

大学の近くだった事もあり、カフェオレを飲み終える前に来てくれた先輩は、荒い息を吐きながら先程までひなたが居た席に座った。

走ってきてくれたのかと思うと胸が熱くなり、普段格好良いなんて思った事がなかった顔が少しだけイケメンに見えた。

「…あの、俺店辞めようと思って」

「は?まじで?」

「…先輩は…その、俺が…店辞めて麗じゃなくなったら…もう俺と会ってくれませんよね」

勢いのまま言葉を紡いでいく俺に、先輩は驚いた様に目を見開いた。

「…え、会いたい。というか、辞めるなら言わせてほしい。俺、河村の事がずっと好きだった。だから、付き合ってほしいんだけど」

「え?本当に?」

「好きじゃなかったらこんなに通うわけねーだろ」

「麗が好きなのかと…」

「俺の中では麗も河村も同じ人だから。…告白したらNG出されて会えなくなると思ったからずっと我慢してた。何度も会ってる内に反応の可愛さとか、半ば脅しにも近かったのにNGにせず仕事してくれた所とか、たまに見せる素のお前を見て、どんどん好きになっていったんだ」

俺の一番の葛藤は、ひなたの発言ですぐ解決した。お互いの顔は染まり、妙に恥ずかしさが漂う空気感。

頼んだアイスコーヒーが届くと、一気飲みの勢いで飲み込む先輩。

「……じゃあ、辞める。そんで俺と付き合ってよ先輩」

「…嗚呼」

その後は沈黙の時間が続く中、お互いの飲み物がなくなった頃に先輩が口を開いた。

「…二人になれる所、行きたいんだけど」

「じゃあ俺ん家来ます?」


◇ ◆


「なんか殺風景だな」

「だって物欲ないし」

人を招くのが初めてなので指摘された事がなく気付かなかったが、確かに必要最低限のモノしかない俺の部屋はかなり殺風景。

「…いつ辞めんの?」

二人きりになり、床に座った俺を後ろから抱き締めてくれる先輩は相変わらずデカい。

「ひなたと一緒に辞める」

「え、ひなたさんも辞めんの?」

「うん。先輩と会う前にひなたと会ってた。キャスト辞めるから一緒にサポートする仕事しない?って。……俺が店辞めたら、先輩と会えなくならないか相談してた。それで決心ついたから、今日先輩の事呼び出して気持ち伝えようと思って」

クルリと体勢を変えて先輩に抱き付くと優しく背中へ手を回してくれた。

「普通に金キツくていつまで会えるか不安だったから、まじで安心した」

「今まで使ってくれた分、これからは俺が飯代とか払いますよ」

「いや、いい。俺に払わせて」

「割り勘にしましょ。もう先輩後輩でもキャストと客じゃなくて恋人で対等なんだから。まぁ先輩後輩は変わらないか」

「…ん、恋人か。嬉しい響きだな。…なぁ、キスしたい」

「いいすよ」

体を離すと真っ赤に染まる先輩と目が合った。最初は嫌で嫌で仕方なかった先輩との行為はいつしか俺のビタミン剤の様な物になっていた。

先輩が居るから続けたいと思うようになった時点でキャストとしては向いていなかったんだろう。あれだけ自分に向いてると思っていた事は、恋愛が絡むと真逆になるのかと気付かされた。

俺は近付いてくる唇に自ら合わせると、ゆっくりと舌を入れた。

「…ん、」

今まで散々キスなんてしてきたが、気持ちが通じ合ったからか前よりもどの時よりも幸せ。

「…麗くん、もう勃ってんじゃん」

「悠麗って呼んでよ、もう先輩の前では麗じゃない」

「…悠麗」

「何?槙田」

「…何で苗字呼び捨てなんだ。それなら先輩のがマシだ」

「ふ、じゃあ慣れないから先輩って呼びますよ」

そうして甘い雰囲気がいつもの俺達の空気感へ変わると俺はベッドへ連れて行かれた。

「…ん」

甘い甘い恋人の時間が始ま…

るわけもなく。

「は?何で拘束具持ってんの?」

「たまたまだ」

「持ち歩いてるとかキモすぎる」

ガッチリと腕を固定されると枕へかまされて上手く下げれない様にされた。

「これからは恋人として宜しくな」

「……こ、ここ壁薄いから…!待って、うぎゃああああ!」

そこからいつもの先輩の激しい愛情表現が始まり、初めての恋人同士の愛の確かめ合いは全く普段と変わらない結果になった。

それでも心から満たされて嬉しいと思う自分は、いつの間にか先輩の事をかなり好きになっていたんだと思う。体を許してる内に、心まで許してしまっていた様だ。


◇ ◆


「はぁ!? ひなたも麗も辞めんの!?」

先輩と付き合い始めて、一ヶ月が経った頃。

ひなたと二人揃って店へ最後の挨拶へ行くと、ランキング3の常連で共に戦ったもう一人のキャスト、律が驚きの声を上げた。

「うん。麗くんと一緒にサポートの仕事する事にした~この業界には居るからよろしくね」

「律さんも頑張って下さいね」

俺達が軽い挨拶を終えると、事務所から出てひなたと二人になった。

移り変わりの激しい夜の店は、飛ぶ事はもちろん突然辞める人も多い。

そんな中、俺達は辞めると話し合ってから実際に辞めるまで一ヶ月の猶予を儲け、その間に今までの指名客に挨拶をして綺麗な卒業を迎えた。

「じゃあこれからもよろしくね」

「こちらこそ宜しく。確かひなたって本名なんだよね?俺、麗は源氏名だからこの業界に居る時はこのままで居るつもりだけど、なんて呼べばいい?」

「俺は源氏名は響にした。これからは仕事ではそう呼んでよ。プライベートの時とか、二人の時はひなたでいいけど」

「響ね、了解。じゃあこれからもよろしく、またな」

「うん、またね。麗くん」

ひなたに手を振ってその場を去ると、俺はすぐに先輩の元へ向かった。一ヶ月待たせてしまったが、今日から俺は完全に先輩だけの"俺"になった。

「槙田先輩っ」

「おー河村、長い間お疲れ様」

「うんっ!ご飯行こ!お腹すいたーっ」

「おーいいな。何食いたい?」

「先輩がいつも行く店行きたい」

腕を組んで一緒に歩ける日が来るなんて思わなかった。付き合う事になったのはみんなに打ち明け、外でも腕を組んでも怒られない。

幸せな日常に、俺は心から笑顔を見せた。

end.
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