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約束の卵
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『…お前…本当に義経のことが好きなのか…?』
「……」
胸を撃たれた気分だった。
それは思いがけず確信をついた言葉だった。
自分の奥底に沈めて沈めて、誰にも見せないように…自分自身ですら、見えないように…沈めて棄てたはずの想いだった。
そんな感情が生まれたあの頃の僕は何もかも上手くいかなくて、僕もチカ君と一緒でスケートも辞めようかと悩んでいた時期だった。隣の芝生は青く見えるものだと理解はしてたつもりだけどそれまでは見ようともしてなかったから気付かなかっただけなんだ。ふと顔を上げたらチカ君やヨシが楽しそうにスケートをしていて……一人で必死に走り続けている自分がもの凄く惨めに思えて。
そんな時、チカ君にふざけて『お手伝い』をされて、もう、チカ君の大事なものを傷付けてやろうって歪んだ思いで弱みを探していた。
そして、それはすぐに見つかった。いつも身近に置いている古河 義経。誰にでも優しいチカ君が特別大切にしてる存在。
ヨシを攻撃しようと思ったのはチカ君だけが理由じゃない。自分はこんなにどん底にいるのにヨシはいつだってキラキラしててスケートが楽しくてしょうがないって眩しいほどの希望が溢れてて……今思えばただの妬みだったんだけど…。
あの頃の僕はそんなヨシにも苛立ちを覚えていたんだ。
「…ヨシはどうしてスケートを続けてるの?」
気付いたらヨシに話しかけていた。
「好きだから」
さも当然のように、それ以外の答えがこの世界に存在しないかのようにヨシは答えた。それが、自分が失くした大切なものだと気付くのに時間はかからなかった。
「湊和くんは?」
「僕、は…」
…ヨシのように即答できなかった。
その時の僕にはその理由が分からなかったから逃げ出すように義経から離れてふらふらと家路に着いたのを覚えてる。その道中もどう歩いてきたかなんて覚えてなくて、頭の中には義経の答えだけが木霊していて…声が枯れるまで泣いたのを覚えてる。
それから気持ちも持ち直して、スケートにも身が入るようになって、ヨシの事をよく観察し始めて…惹かれ始めたのも多分、その頃からで。
つじつま合わせの、恋なんだとも思う…。
最初は罪悪感から好きになったと勘違いしてたのかもしれないって思ってたけど、どう考えても、何回否定しても胸が締め付けられるほど苦しくなるのはヨシの事を考えてる時だけなんだ…。
その感情に、『恋』以外、なんて名前をつけたらよかったんだろう。
『…お前…本当に義経のことが好きなのか…?』
「……」
胸を撃たれた気分だった。
それは思いがけず確信をついた言葉だった。
自分の奥底に沈めて沈めて、誰にも見せないように…自分自身ですら、見えないように…沈めて棄てたはずの想いだった。
そんな感情が生まれたあの頃の僕は何もかも上手くいかなくて、僕もチカ君と一緒でスケートも辞めようかと悩んでいた時期だった。隣の芝生は青く見えるものだと理解はしてたつもりだけどそれまでは見ようともしてなかったから気付かなかっただけなんだ。ふと顔を上げたらチカ君やヨシが楽しそうにスケートをしていて……一人で必死に走り続けている自分がもの凄く惨めに思えて。
そんな時、チカ君にふざけて『お手伝い』をされて、もう、チカ君の大事なものを傷付けてやろうって歪んだ思いで弱みを探していた。
そして、それはすぐに見つかった。いつも身近に置いている古河 義経。誰にでも優しいチカ君が特別大切にしてる存在。
ヨシを攻撃しようと思ったのはチカ君だけが理由じゃない。自分はこんなにどん底にいるのにヨシはいつだってキラキラしててスケートが楽しくてしょうがないって眩しいほどの希望が溢れてて……今思えばただの妬みだったんだけど…。
あの頃の僕はそんなヨシにも苛立ちを覚えていたんだ。
「…ヨシはどうしてスケートを続けてるの?」
気付いたらヨシに話しかけていた。
「好きだから」
さも当然のように、それ以外の答えがこの世界に存在しないかのようにヨシは答えた。それが、自分が失くした大切なものだと気付くのに時間はかからなかった。
「湊和くんは?」
「僕、は…」
…ヨシのように即答できなかった。
その時の僕にはその理由が分からなかったから逃げ出すように義経から離れてふらふらと家路に着いたのを覚えてる。その道中もどう歩いてきたかなんて覚えてなくて、頭の中には義経の答えだけが木霊していて…声が枯れるまで泣いたのを覚えてる。
それから気持ちも持ち直して、スケートにも身が入るようになって、ヨシの事をよく観察し始めて…惹かれ始めたのも多分、その頃からで。
つじつま合わせの、恋なんだとも思う…。
最初は罪悪感から好きになったと勘違いしてたのかもしれないって思ってたけど、どう考えても、何回否定しても胸が締め付けられるほど苦しくなるのはヨシの事を考えてる時だけなんだ…。
その感情に、『恋』以外、なんて名前をつけたらよかったんだろう。
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