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やっぱり好き
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翌日。
結局、あれから二人は一言も発せず各自割り当てられた部屋に籠城を決め込み、別々に集合場所へ来たのだがそこで嫌でも顔を合わせてしまうもので…二人は気まずい空気のまま横には並んだが喋りもしなければ目を合わせることもなくただ撮影が始まるのをおとなしく待っていた。
撮影は順調に進み、残すはもっとも憂鬱なキスシーンのみとなっていた。
このシーンだけは二人が監督、スタッフにわがままを言わせてもらい全ての撮影の最後にしてもらった。
まさか直談判した時よりも気まずい状況になるなと思いもせずに…。
「…あれ?なんか二人ともよく眠れなかった?顔が疲れてるよ?」
「ええ、まぁ…」
分かっていたことだが、撮影が進むにつれて二人の関係は濃いものに変わった。入学式で一目惚れした親慶が義経に告白、戸惑いながらもそれを受け入れ恋人になる…そのほとんどを取り終えた今日、二人はこのドラマでは唯一で役としては初めてのキスをする。とはいうもののドラマなので本当にするわけではなく顔を近付けて角度的にそう見えるようにするというだけのもの。
しかし気まずい雰囲気の続く今の二人には厳しい状況で、ましてや昨日の件で二人は目を合わせることすら出来ない。
この状況でキスシーンは拷問だろ。
重く暗い溜め息を吐くのは親慶。
今さらだけど…逃げちゃダメかな…。
俯きながらこそこそと逃亡準備を進めるのは義経。
だが。
「嫌な雲が出てきてるし山の天気は変わりやすいからね…さくっとやって終わりにしちゃおっか!」
容赦なく笑顔で撮影を促す監督に二人は力なく返事をするが、落胆の色を隠さない。
こうなったら開き直るしかないと腹を括り
急遽追加になったシーンの撮影中の義経を凝視していると、生徒役の女の子と話しをしていた義経がふいに微笑んだのを目の当たりにし親慶は慌てて顔ごと視線を逸らした。
そう…だよな…。
学校では義経だってきっとあんな風に女の子と笑ってたりするんだよな。義経だって…いつか誰かと付き合ったりして、手を繋いでデートもして、キスもして…それ以上も…。
あぁ…嫌だなぁ…。
自分が高校生の時はスケートの練習もせずに同級生の女子と想像したことをしていたというのに義経では許せないと苛立ちを覚えていた。
そしてキスシーンの番になるが、親慶と義経は相変わらず目を合わせずにスタッフと打ち合わせを済ませた。
あらすじとしては親慶の告白から付き合いだした二人だったが、義経はこの関係にずっと不安を抱えていた。それを安心させるように親慶は義経にキスをするというもの。
向かい合う二人はお互いの存在を確認するように視線を重ねると緊張からごくりと唾を飲み込んだ。
撮影用の雨が降り始め、親慶と義経の体はすぐにびしょ濡れになり髪からは滴が止めどなく流れ落ちていく。
濡れた制服のワイシャツから透ける肌が親慶にはあまりに扇情的にうつった。
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