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やっぱり好き
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しおりを挟む「───…カァッート!!チェック入りまぁす!!」
躊躇うように響く声を合図に二人は揃えたように目を開くと親慶はすぐにスタッフに渡されたタオルを義経の頭に被せ、わしゃわしゃと雫を拭き取ると、「風邪引くぞ」と小さく呟いてモニターチェックに集まる人の輪に入っていった。
残された義経はバスタオルをかけてくれたり着替えを用意してくれるスタッフに力なく微笑むとすぐに簡易的なシャワー室へ向かった。
「んー…いいねぇ…これはこのまま使いたいけど…繋がりがおかしくならないか確認してからかな」
顎に手を当て考え込む監督にリハーサルと違うことをした親慶は小さく頭を下げたが優しく微笑みながらその肩を叩いた。
「…若いねぇ、親慶くん?」
「…なにがですか…?」
核心めいた物言いに親慶の背中には嫌な汗が流れる。
「…いや?うまくやりなよ?このドラマと同じ結末は誰も望んでないんだからね…」
「っ…俺と義経は…!!」
「敵は多いだろうね…。でも、少なくても俺は二人の味方だよ。なにかあったら連絡してきな」
口を挟む暇すらなく通りすぎていった監督は終始穏やかな口調で、後ろ手に手を振り親慶から離れていった。
「…どこまで気付いてるんだ…?ってか、俺と義経はそんなんじゃ…!!」
そう考えて先程の自分の行動を思い出し頭を抱えた。勝手な行動をして一番迷惑を被ったのは義経だろう。
キスした理由を…なんて説明すればいいんだろう…。
深い溜め息を吐いて思わずしゃがみ考えあぐねる親慶には丁度いい答えは見つからず…追い立てるように降り出した雨に撮影隊はすぐに解散となり、みなが散り散りに自分達のコテージに帰っていった。
***
本来ならば打ち上げを予定していたが文字通りバケツをひっくり返したようなどしゃ降りの雨に雷鳴まで轟き始めれば誰もコテージからは出たがらず、仕方なくスタッフ達も各コテージで最後の夜を過ごすこととなった。
シャワー室から出た義経は外の大雨に愕然としながらも近くにいたスタッフの車でコテージまで送り届けてもらえたのだが、玄関を開けて真っ先に親慶の靴を見つけてしまい体は無意識に緊張に包まれた。
迷惑なことに、脳裏に焼き付いた親慶の近過ぎる顔と擬似雨によって下げられた体に予期せず与えられた唇への温もりはシャワーを浴びただけでは洗い流せず…義経は唇に手を当てると面白いほど簡単に頬を紅潮させた。
…どんな顔してチカに会えばいいんだろう…。
台本の台詞ではない先程の言葉が親慶の本心ならばどれだけ嬉しかっただろうと義経はシャワーを浴びながら何度も反芻し噛み締めた。
あの状況で唯一、義経の口をついた『……後悔…しない…?』という言葉も紛れもなく義経の本心であり不安を打ち消すための希望の言葉だった。
しかし、現実はいつでも厳しいもので……希望としてはこのまま荷物をまとめて家へ逃げ帰ってしまいたい心境なのだが、変わりやすい山の天気がそれを許してはくれず。仕方なく義経はコテージに上がるとほぼ同時に脱衣所のドアが開き、出てきた親慶と目が合ってしまい二人は気まずい空気をコテージ中に満たしつつそのまま立ち尽くしてしまう。
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