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やっぱり好き
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しおりを挟む「………おか、えり……」
「……う、ん……」
絞り出した会話は瞬時に終わり、親慶はやるせない空気を打ち払うようにシャワー直後の濡れた髪をタオルで乾かし、義経は上半身裸の格好の親慶に目を逸らし頭の中で必死に自室へ逃げる道を思案していた。
「っ…ちょ、待って!!」
「っ…ゃ、だ!!」
意を決して勢いよく数歩踏み出した義経だったが、すぐに伸ばされた親慶の手に捕まってしまうのだった。
「なんで逃げんの…?」
そう言ってしまってから親慶の頭は「お前がそれを言うか?」の言葉に苛まれる。
「…」
義経は黙って俯いたまま親慶の問いかけに答える気配はない。
その間も激しく窓を叩く雨粒の音だけが静寂を邪魔していた。
「…雷、嫌いだったっけ…?」
「…」
義経の表情も伺えない親慶だったが雷鳴が近くで聞こえる度、眩しい程の閃光が窓を照らす度、掴んでいた手が微かに揺れるのを見逃さなかった。
「義経…?」
「っ…!!」
顔を覗きこもうと親慶が近付いた瞬間、外が一際眩しく光ったかと思った瞬間、地面が揺れるほどの凄まじい轟音が鳴り響き、同時に部屋の電気も消え、辺りは暗闇に包まれてしまった。
「…」
「…」
視覚を奪われてしまえば触れているところからお互いの温度をより強く感じることになり親慶は平静を装うために深い呼吸を何度も繰り返す。
「……結構近くに落ちたよな、今の…。大丈夫か、義経…」
「離、して…」
振りほどこうと力を入れる義経に親慶はさらに力を加えそれを阻止する。
「離したらお前逃げるだろ…」
「…意味、わかんねぇ…」
「なにが」
「…………なんで………キス、したの……」
「…」
躊躇いがちに紡がれた言葉は先程まで親慶の頭の中を占領していた悩みの種であり、親慶の全身の血の気を引かせるには十分な効果のあるものだった。
…忘れてたっ!!
義経の顔見たら考えてたこと全部ぶっ飛んで。避けられたから慌てて腕掴んで…。
キスことしたのに、避けられるのが嫌だなんてわがままにも程があるだろ…。
義経の表情は相変わらず親慶には分からず、掴んだ肌が汗ばんでいるのは緊張からか閉めきった部屋の暑さのせいか…。
…チカは、なんて答えるんだろう…。
もし……好きだからなんて言われたら…?
バカな期待は何回頭から追い出しても消えなくて。期待なんてしたってきっと欲しい言葉をチカはくれない…。
暗闇に視界は塞がれているが、零れ落ちそうな涙を誤魔化すために義経は強く目を瞑った。
「…なんでって…」
ごくり、義経の喉が鳴る。
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