6 / 39
一章
episode 6 あの事
しおりを挟む
*
翌日FAXで送られてきた住所の近くまで車を走らせてきた。
坂を上り端の方まで行くとポツンと二階建てのアパートが見えてきた。
アパートの前で車を停車しハザードを点滅させて車内から外を見た。
「Iアパート…築三十年ってとこくらいか~?結構古いアパートだな…ここに片桐がいるのか?」
周りは殆ど人も歩いていなければ何も建っていない。
あるとすれば公園と老人ホームの施設だけだった。
星野は一度坂を下りてこの辺りの聞き込みをすることにした。
暫く車を走らせていると、小さな商店街があった。
するとこの辺に住んでいるのか、明らかに噂話が好きそうな女達六人が、商店街の入口付近で立ち話をしている。
Iアパートが建つ辺りの事を、何か知っているかもしれないと探偵の勘が働いた。
星野はその女達に話を訊くため、車を近くの道路脇に停車し運転席から降りた。
「あの~皆さんでお話し中すみません。知り合いの家に遊びに来たんですが道に迷ってしまって」
星野は探偵と名乗らず女達に近づいた。
するとその六人の中でもボス的存在の女は目を光らせて言ってきた。
「あら!誰!?誰!?この辺ってどこ!?どこら辺に住んでる人!?どこから道に迷ったの!?」
息をするのも忘れ間断なく喋る女だ。
「いや、えっと‥その」
星野はあまりの勢いに驚く。
すると髪の短い眼鏡をかけた女が、よく喋る女に向って言った。
「いやいや橘さん、そんなにぐいぐい訊いたら可哀そうよ!驚いちゃいますって!」
その言葉に周りにいる四人の女達も大きく頷く。
よく喋る女は橘と呼ばれた。
橘は髪の短い眼鏡をかけた女を見て仏頂面で言った。
「あらあらごめんなさ~い!ぐいぐい訊いちゃって!私ってばすぐ困った方の力になろうとしちゃうのよね!でも田中さんが私に向ってそういう言い方をするなら、もう誰かの力になる事をやめるわ!パン屋の田中さん!ご主人がやっているあの潰れそうなタナカパンを、大学の理事長の私の父に態々お願いして、大学にパンを卸してるけどそれもやめきゃ!それに浜辺さんのお子さんだって―—」
「ごめんなさい橘さん!そんなつもりで言ったわけじゃないの!本当にごめんなさい!」
パン屋の田中と呼ばれた女は頭を下げた。
橘以外そこにいる女達全員がオロオロしながら謝っている。
すると橘は何もなかったかのように笑顔になった。
「やめてよ~謝らないで、まるで私が苛めてるみたいに見えちゃうじゃない」
(女ってこえー)
星野は苦笑いをした。
「あの~なんかすみません俺が道に迷ったせいで」
「いいのよ気にしないで!ところでその知り合いの方ってどの辺りに住んでいるかわかるかしら?」
星野はズボンの後ろポケットから折りたたんで入れていたメモの紙を取り出し橘に見せた。
「この住所なんですけど、わかりますか?」
「ここならこの目の前の道をずっと真っ直ぐ行って、分かれ道が見えてくるから、坂道の方を上って‥…あら?この住所ってIアパートじゃない!?」
そう言った橘は険しい顔になった。
「そうです、Iアパートです」
「あなた片桐さんとお知り合いなの?」
Iアパートと知ってなぜ片桐だけの名前がすぐ出たのか星野は不思議に思った。
「片桐を知ってるんですか?」
「知ってるって言うか、あの事があってから皆あのアパートから出て行っちゃったのよ?だから誰もいないはず」
(あの事?)
突然パン屋の田中が大きな声で言った。
「あっ!もしかしてこの人、この前橘さんが電話したって言う週刊誌の記者の人なんじゃない!?」
橘も思い出したように大きく頷くと自慢げに言った。
「そうだわ!あの時電話した週刊誌の記者の人の声にそっくりだわ!最初から私達に近づいて来た時の雰囲気が記者の人にしか見えなかったもの!」
(週刊誌の記者!?)
でもここは話を合わせた方が何か情報が聞けると思い、女達が言っている記者のふりをする事にした。
「やっぱバレましたか?」
「ほら!やっぱり!確かお名前は、たに、たに、谷崎さん!」
「そうですそうです!谷崎です!すみません今日名刺持ってくるの忘れてしまったもので」
「いいの名刺なんて!そんなことより皆さん私ってなんでも当てちゃうのよね~!?勘が鋭いっていうのかしら!」
パン屋の田中も他四人の女達も「凄い橘さん!」と言って拍手をした。
翌日FAXで送られてきた住所の近くまで車を走らせてきた。
坂を上り端の方まで行くとポツンと二階建てのアパートが見えてきた。
アパートの前で車を停車しハザードを点滅させて車内から外を見た。
「Iアパート…築三十年ってとこくらいか~?結構古いアパートだな…ここに片桐がいるのか?」
周りは殆ど人も歩いていなければ何も建っていない。
あるとすれば公園と老人ホームの施設だけだった。
星野は一度坂を下りてこの辺りの聞き込みをすることにした。
暫く車を走らせていると、小さな商店街があった。
するとこの辺に住んでいるのか、明らかに噂話が好きそうな女達六人が、商店街の入口付近で立ち話をしている。
Iアパートが建つ辺りの事を、何か知っているかもしれないと探偵の勘が働いた。
星野はその女達に話を訊くため、車を近くの道路脇に停車し運転席から降りた。
「あの~皆さんでお話し中すみません。知り合いの家に遊びに来たんですが道に迷ってしまって」
星野は探偵と名乗らず女達に近づいた。
するとその六人の中でもボス的存在の女は目を光らせて言ってきた。
「あら!誰!?誰!?この辺ってどこ!?どこら辺に住んでる人!?どこから道に迷ったの!?」
息をするのも忘れ間断なく喋る女だ。
「いや、えっと‥その」
星野はあまりの勢いに驚く。
すると髪の短い眼鏡をかけた女が、よく喋る女に向って言った。
「いやいや橘さん、そんなにぐいぐい訊いたら可哀そうよ!驚いちゃいますって!」
その言葉に周りにいる四人の女達も大きく頷く。
よく喋る女は橘と呼ばれた。
橘は髪の短い眼鏡をかけた女を見て仏頂面で言った。
「あらあらごめんなさ~い!ぐいぐい訊いちゃって!私ってばすぐ困った方の力になろうとしちゃうのよね!でも田中さんが私に向ってそういう言い方をするなら、もう誰かの力になる事をやめるわ!パン屋の田中さん!ご主人がやっているあの潰れそうなタナカパンを、大学の理事長の私の父に態々お願いして、大学にパンを卸してるけどそれもやめきゃ!それに浜辺さんのお子さんだって―—」
「ごめんなさい橘さん!そんなつもりで言ったわけじゃないの!本当にごめんなさい!」
パン屋の田中と呼ばれた女は頭を下げた。
橘以外そこにいる女達全員がオロオロしながら謝っている。
すると橘は何もなかったかのように笑顔になった。
「やめてよ~謝らないで、まるで私が苛めてるみたいに見えちゃうじゃない」
(女ってこえー)
星野は苦笑いをした。
「あの~なんかすみません俺が道に迷ったせいで」
「いいのよ気にしないで!ところでその知り合いの方ってどの辺りに住んでいるかわかるかしら?」
星野はズボンの後ろポケットから折りたたんで入れていたメモの紙を取り出し橘に見せた。
「この住所なんですけど、わかりますか?」
「ここならこの目の前の道をずっと真っ直ぐ行って、分かれ道が見えてくるから、坂道の方を上って‥…あら?この住所ってIアパートじゃない!?」
そう言った橘は険しい顔になった。
「そうです、Iアパートです」
「あなた片桐さんとお知り合いなの?」
Iアパートと知ってなぜ片桐だけの名前がすぐ出たのか星野は不思議に思った。
「片桐を知ってるんですか?」
「知ってるって言うか、あの事があってから皆あのアパートから出て行っちゃったのよ?だから誰もいないはず」
(あの事?)
突然パン屋の田中が大きな声で言った。
「あっ!もしかしてこの人、この前橘さんが電話したって言う週刊誌の記者の人なんじゃない!?」
橘も思い出したように大きく頷くと自慢げに言った。
「そうだわ!あの時電話した週刊誌の記者の人の声にそっくりだわ!最初から私達に近づいて来た時の雰囲気が記者の人にしか見えなかったもの!」
(週刊誌の記者!?)
でもここは話を合わせた方が何か情報が聞けると思い、女達が言っている記者のふりをする事にした。
「やっぱバレましたか?」
「ほら!やっぱり!確かお名前は、たに、たに、谷崎さん!」
「そうですそうです!谷崎です!すみません今日名刺持ってくるの忘れてしまったもので」
「いいの名刺なんて!そんなことより皆さん私ってなんでも当てちゃうのよね~!?勘が鋭いっていうのかしら!」
パン屋の田中も他四人の女達も「凄い橘さん!」と言って拍手をした。
2
あなたにおすすめの小説
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる