新田二五は何もしたくない

綿貫早記

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二章

episode 13 まるで別人

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 翌日、十時頃に旅館を出た三人は双山村の事を調べるため双山村郷土資料館に向っていた。
 星野は車を走らせていると、双山村祭りのポスターが至る所に貼られている。

「昨日こんなに双山村祭りのポスター貼ってたか?気づかなかったな」
「この村の人達が祭りをやろうがどうしようが、双山村名物が水だと知った僕にはもう関係ない」
「まだ水のこと言ってるのかよ、根に持つ男だな!そう思わない?日向ちゃん!」

 後部座席に座る日向は上の空で、新田と星野の話など聞いていなかった。

「お~い日向ちゃん大丈夫かい?どっか具合でも悪いなら遠慮しないで言ってくれ」
「・・・・・」

 やはり日向はボーッとしていて、返事をしない。
 助手席に座る新田に、星野は小声で話しかけた。

「おい新田!日向ちゃんどうしたんだ?様子が変だぞ」

 いつも日向を近くで見ている新田は、様子が変だと、旅館を出るときから気づいていた。

「石川さん、なにかあったの?」
「・・・・・・」
「石川さん!!」

 日向はビクッと驚く。

「え!?あっ、すいません聞いてませんでした、なんですか?」
「いや、石川さん朝からボーッとしてるけどなにかあった?」

 日向は夜中の出来事を、一人で考えるより二人に話した方がいいと思い、口を開こうとした。その時星野が急に嬉しげな声で言った。

「あそこ歩いてるの琴子さんじゃねーか!?」

 向かい側の歩道を琴子と一緒に男性が歩いている。車を停車してハザードランプを点灯させた。運転席の窓をあけると星野は琴子に向って話しかけた。

「琴子さん!昨日はどうも!」

 琴子は星野の顔を見るなり顔を背ける。

「あれ?…あの~昨日村長の家の中に案内してもらった星野です!」

 星野の言葉を無視し、琴子はスタスタと歩いて行く。昨日見たあの美しい琴子とはまるで別人のようだ。
 琴子と歩く男性は星野達の車の方を見ると会釈をした。
 その男性の顔を見た星野は驚いて言った。

「あの男って昨日、俺達の部屋に来た宇佐美とかっていうスタッフじゃねーか!?」

 日向も琴子と一緒にいる男性を見て「あっ!動画の人」と言った。

「動画の人?」と、新田と星野は、後部座席に座っている日向に向かって言った。

 すると日向は頷いた。


 **
 双山村郷土資料館はこの先一キロメートルと書いてある看板に従って、星野は車を走らせた。すると、軽量鉄骨造で平屋建ての二十坪程度の双山村郷土資料館が見えて来た。
 星野はそのまま双山村郷土資料館専用駐車場に車をとめた。三人は車から降りると双山村郷土資料館の中に入る。すると、受付の男性が箒で床を掃除しながら、こちらに気づいた。

「おはようございます、ごゆっくりご覧下さい」

 三人は軽く頭を下げる。
 星野は観光客が一人も郷土資料館にいなかった事を不思議に思い、掃除をしている受付の男性に訊いた。

「あの~この村って観光客が来ているわりに、双山村郷土資料館にあまり立ち寄ったりはしないんですか?」
「観光客?この村に観光客なんてめったに来ないですよ」
「いやでも、この村は輝水という水が有名で、観光客が訪れると聞きましたけど」

 すると受付の男性は外をキョロキョロ見まわし、誰もいない事を確認すると手招きをしてきたので、星野は男性に近づいた。

「実は俺、地方の役場からこの村の役場に一年前に異動してきて、双山村郷土資料館の受付をしているんだけど、ほとんどこの資料館に来る観光客なんて見たことがない。あなたが言う観光客っていうのは、それは観光客ではなくと呼ばれる不思議な力をもった者が、悩みや辛さがなくなり、魂、心、精神が幸福に満たされる力を与えた【輝水の水】を買い求めに来ている人達のことだよ…でもそのことを知っていて、あなた達もこの村に来たんだろう?」

 星野は受付の役場の男性の話を聞いて、思い出した事があった。昨日、村長の久遠ものおかげと言っていた。

「あの、一つ訊いてもいいですか?って誰なんです?」

 すると役場の受付の男性は驚いた表情に変わった。
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