期限付きの猫

結城 鈴

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 エアコンを効かせて、温かな室内。孝利のベッドにいた。まだ、掃除でも入ったことのない部屋の中にいる、不思議な感覚。孝利は、羽毛の布団をばさりとかけると、休んでおいで、とどこかに行ってしまった。なんだろう、と思っていると、ややあって、孝利が帰ってきた。ふわ、とミントの香り。
「あれ?孝利さん、歯磨きしました?」
自分も食後に済ませたが、孝利もその時済ませたはず。
「リンス。万が一にでも、ばい菌入ったら大変だからね。
「って、生ですか。ゴム、つけてくれていいですよ。」
ゴムをつけること自体、初体験だったが。
「味わいたい。」
「っ・・・。」
妙にぎらつた目でそう言われ、気分は虎にでも食べられるウサギの気分だ。しかも、食べられるのは急所だ。
「俺も初めてだけど、齧らないようにするから、心配しないで?」
怯えを察したのか、孝利がニコリと微笑む。
ふわ、と布団をのけられる。つま先を、さわ、と撫でられて、鳥肌が立った。
「あ・・・。」
いいのかな。孝利にこんなことさせて。据え膳みたいなものだけど、いいのかな・・・。
手が、徐々に上に登ってくる。部屋着にしているスウェットの腰の部分に手がかけられた。とっさに、脱がされないように押さえてしまう。ちら、と孝利を伺うと、どうして?と目で問われた。
「こんな・・・こと・・・。」
「だめ?」
わからなかった。押し切られて流されても、誰にも咎められはしないだろうけれど。でも・・・。
「キスする場所が変わるだけだよ?」
「っ・・・。」
気持ち・・・いいんだろうな・・・。
でも。
「孝利さんにしてあげられないこと、してもらっちゃだめな気がします・・・。」
「タマは真面目だね。・・・なら、手ならいい?」
立っちゃってるよ。苦しそう。と、一瞬のスキをついてスウェットがパンツごと脱がされてしまった。プルン、と表に出てきてしまう性器。
「かわいい。こんなに期待してるのに、なんでだめかな?」
「・・・だからそれは・・・。」
口で愛せないのに、してもらうばっかりなんて。
「キスはいい?」
頷いて、唇を舐める。孝利の方に身を乗り出すと、捕まえられて抱き締められた。
「俺だって、こんなこと・・・ドキドキしてるよ?」
ほら、と耳をみぞおちあたりに押し付けられる。孝利の心臓は、思っていたよりもずっと早かった。
「夜がゆっくりできる日、しばらくなくなりそうだから、させて?タマが一人でしてるの想像したら、仕事どころじゃなくなっちゃう。」
ぎく、と体がこわばる。まるで、今日、電話の前に何をしようとしていたか、見破られてるみたいだ。
「タマ?」
なんでもない、と頭で孝利の胸を押しのける。
「待って、タマ。何か隠してる?」
「し、してないからっ。」
あ。
しまった!
恐る恐る、孝利を伺うと、きょとんとした顔をしていた。
「もしかして、今日はもうしたの?」
「・・・してない。」
「ほんとに?」
「・・・しようとしたら・・・孝利さんから電話で・・・。」
とぎれとぎれに言い訳する。
「じゃぁ、してほしいんだ?」
ちゃんと、俺の手思い出した?と孝利が追い詰めてくる。
「うん・・・。」
答えると、ぎゅむっと抱きしめられる。
「・・・かわいい。タマいい子だね。」
なでなでと頭を可愛がられているが、パンツを降ろされ、局部は丸出しだ。そこが、孝利の腰にあたる。
「あっ、わっ?」
存在を主張するそれに、思わず声が出る。
「ふふ。えっちなことするのに、こうならないわけないよね。
すごく、興奮してる。」
頭では、こんなの、万が一突っ込まれでもしたら大惨事、と思っているのに、なぜか手が伸びていた。
「わ・・・。」
すごい。固くなってる・・・。
「触ってくれるの?嬉しいな。」
いつの間にか、指先でなぞるように手を動かしていて、孝利の言葉にハッとする。
「こっち・・・手ならいいの?」
手なら一度してもらっている。それはいいような気がして、コクリと頷いていた。
「もう先が濡れてるね・・・。期待されすぎて困っちゃうな。自分のするようにしかしてやれないのに。」
ってことは、この間のあれは、ああいう風に、孝利も自慰をするということで・・・想像すると、よりそこは熱くなった。
「たれちゃいそうだね。君の味、覚えてるよ。」
そういえば、孝利は風呂場で、搾り取った精液を舐めていた。
耳元で囁かれて、ゾクゾクした。男にこんなことされて、こんな風になるなんて。こんな・・・。
「シーツが染みになる。手がいい?口がいい?」
迷ったのは、ほんの少しだった。
「口がいい・・・。」
「タマはいい子だね。」
きゅ、と急所を握られて、へたりと腰が抜けた。そのまま、ベッドに押し倒される。
「楽な姿勢でいいよ。」
言われて、孝利の枕にしがみついた。孝利の、シャンプーと体臭の混じった匂い。すうっと胸に吸い込むと、不思議と力が抜けた。
腿をさすっていた孝利の手が、足の付け根に迫る。さわ、と袋を撫でられて、ゾクゾクが背中を駆け上がった。
「ふぁぁ・・・。」
とっさのことで、声を我慢できなかった。それを見て取って、可愛いね、と囁く。口を枕に押し付けて、声は出さないようにした。
「ふうん?」
孝利が、それを見て悪戯っぽく笑う。横目で軽くにらんでみたが、すぐに諦めた。孝利が、袋の、さらに奥に指で触れたからだ。くっと会陰を押されて、じわぁっと快感が広がる。
そんなところ、自分では触ったこともなかった。そこがそんなに気持ちいいなんて・・・。
「ん・・・くぅ・・・。」
声を押し殺そうにも、呼吸の合間に漏れ出てしまう。だんだん息が苦しくなって、枕から顔を放すと、孝利は待っていたように、秘部に触れた。
「あっ!やだ・・・。」
「入れないよ。今度の時は、ローション用意しておくね。」
今度の時は、指を・・・?
酸欠で、ぼんやりした頭で、孝利を伺う。
「きっと気持ちいいよ。」
そんなこと、男未経験の孝利にわかるのかな。
指先で、そこを撫でたり擦られたりしながら、孝利は身をかがめた。
「すごい濡れてる。ここをいじられて感じてるの?」
それとも、興奮する?と聞いてくる。
「・・・わかりません・・・。けど・・・。」
「けど?」
「心臓壊れそう。」
ドキンドキンと高鳴る胸。これ以上何かされたら、どうにかなってしまいそうだった。
「タマ、かわいい。」
可愛い可愛いと言われて、何かが外れた。多分理性の箍。はやく、と身をよじると、孝利が先をペロ、と舐めた。
「ふうん・・・しょっぱいんだね。」
先走りの味見をされて、かっと顔が熱くなる。シーツを爪で手繰り寄せて掴むのと、孝利が先を含むのと、どっちが早かったか。
「あぁん・・・。」
咥えられ、裏筋を舌でざら、と舐められて、あられもない声が出てしまった。その声に気をよくしたのか、孝利はそこばかりを舐めてくる。ギリギリまでじらされていた官能は、あっという間に高められてしまう。くっと、腿に力がこもる。それを宥めるようにさすりながら、孝利は竿を横に咥えると、はむはむと唇で挟んで往復した。
「あ、孝利さん・・・さっきのして・・・先、舐めて。」
もうちょっとでイケそうだったのに、じらされて涙声になっている。すると孝利は、口を放してニヤリと笑った。
「もうなの?早いよ・・・。楽しませて?」
「ぁ・・・やだ。イきたい。」
腰を揺らして、孝利の口に突っ込みたい衝動を必死で抑える。それほどまでにじれていた。高みはもうすぐそこなのに。
「お願いだから・・・。」
「うん。」
しょうがないな、と孝利が、先を咥えてくれる。温かな口中に招き入れられて、腰が跳ねた。はぁはぁと荒い息遣いが、鼓膜を揺らす。ぬるぬると舌と唇で舐めしごかれて、イキそうになった。
「あ、も・・・でそう。」
「んー・・・。」
孝利は、聞こえているのに口を放そうとしない。それどころか、握った手を上下させて、さらに追い上げてくる。
「だめです・・・。でちゃう。でちゃうってばぁ・・・。」
頭をのけようとするも、力が全く入らない。それをいいことに、孝利は、音を立ててじゅぷじゅぷとそこを愛した。
「あっ・・・もう・・・っううっ。」
呻きをかみ殺して、孝利の口の中に放つ。気持ちが良すぎて、孝利が、絞るようにして出した精液をちゅる、と吸い上げるのに気が付かなかった。そしてそれを、耳元に来た孝利が、ごく、と飲み下した。
「あ・・・孝利さん・・・ほんとに飲んだの・・・?」
「うん。あんまり美味しいものではないね。・・・イケたんだから、気持ちよかったよね?」
こく、と頷くと、孝利は満足そうだった。濡れた口元を手の甲で拭う。
「う・・・あの・・・。僕もしないとだめ?」
「してほしいけど、できるの?」
頭の中で、うーんと唸ってしまう。気持ちよくはしてもらった。してもらったからにはなにか返したい。でも・・・。
「なんて。手でいいよ?それならできそう?」
譲歩した孝利に、うん、と頷いていた。さっきまで、自分が横になっていたところの隣に、孝利が寝そべる。おいで、と招かれて、危うくキスされそうになった。
「味・・・します?」
「くっ・・・嫌ならいいよ。俺も自分の味は知りたくない。」
孝利は笑いをかみ殺して頭を撫でてくれた。
「自分の、するみたいにできる?」
体を起こして、孝利の熱い高ぶりに触れる。それだけで、ぴくんと震えて、より硬くなった。その反応が嬉しくて、孝利がしてくれたように、親指と人差し指で輪を作り、根元からしごく。何度かするうちに、徐々に滑りがよくなってくる。孝利の先走り・・・同じようにしょっぱいのかな、と少し興味がわいた。しかし、直に舐めとることはできずに、手についたものを少しだけ口にやってみる。臭いはない。ペロ、と舐めると、塩の味がした。
「ほんとだ。しょっぱい。」
「何してるの。」
クスクスと孝利が笑う。余裕を見せてくる彼に、我に返り、愛撫に熱を込める。先走りを使って、鈴口を指先で撫でる。
「それ。好き・・・。」
はぁ・・・とやっと孝利が感じ始めた声を聴かせてくれる。
声、嬉しいもんなんだな・・・。恥ずかしくて我慢しちゃったけど・・・聞きたかったかな・・・。
孝利の息遣いを感じながら、熱心にそこを愛撫する。でも、それだけでは足りないようで。
口で・・・?
迷ったが、このままイケなくてはつらいだけだろう。横を向いている孝利に上を向いてもらい、そこに顔を寄せた。嫌な感じはしなかった。恐る恐る、裏筋に舌を合わせてみる。熱い。大きさ的には、大ぶりのあんず飴。ただし、味はしょっぱい。そんな感じで、意外と抵抗なく咥えることができた。
鈴口、好きだって言ってた。舌の先で、そこをそっと舐める。すると、先走りがどんどんあふれてきた。
「ん・・・ん・・・あぁ・・・気持ちいい。」
はぁ、と孝利が吐息交じりに快感を訴える。それが壮絶に色っぽくて。もっと、どうしたら気持ち良かったのか、どうされたら良かったのか、つたない舌使いで必死に快楽を与えようとした。そうするうちに、孝利が、そっと頭を起こした。
「イキそう。口に出していい?」
ためらったが頷いた。深く咥えて、吸いながら先へと往復する。続けていると、孝利の逞しい筋肉に力がこもるのを感じた。
イケそう・・・かな?
ちら、と目で伺うと、頷かれる。裏側を舐めながら、先端を吸った。すると、とぷ、と口の中に数度、ねばねばとした青臭いものが飛び込んできた。びっくりしたが、終わるまでを咥えたままでいた。すぐに、孝利がティッシュを渡してくれるが・・・
飲める、かな・・・。
孝利を伺うと、笑いをこらえていた。それがなんとなく悔しくて、思い切って、ごくんと飲み込んだ。息を吸い込むと、鼻に青臭さが抜けた。
「あーあ飲んじゃって・・・。無理しなくていいのに。」
ほら、とティッシュを差し出される。それで口元を拭う。手もべとべとだった。
「口すすぎに行こう?あとシャワー。」
ティッシュが張り付いてしまった手を見て、孝利が苦笑している。自分のでこうなったことはあるけど、人のでもやっぱりなるんだなぁ、としみじみ見つめてしまう。
「どうしたの?」
「え?・・・あ、いや。べたべただなぁって。」
「気持ち悪い?」
悪いかな?特にそんなことは思わなかったな。
「ほら、シャワー行こう?」
孝利は、気持ち悪くて固まってると思い込んだらしい。そうではないのだが。なんとなく、男同士ってこうなんだなって思っていただけで・・・。
「タマ?」
「あっ。はい、シャワーですよね。行きます。」
バスローブの支度するんで、先どうぞ、と孝利を促すと、待ってるから一緒に入ろう?と首を傾げられる。なんとなく、そのしぐさに弱くて。ランドリールームの乾燥機から、ふかふかのバスローブを持って、脱衣所へと向かった。
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