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翌朝、火曜。ブランチはカレーの残りをドリアにして出した。孝利は、最初に言っていたように、何でも食べてくれる。作らなくても、温めるだけで美味しいものはたくさん世にあふれていたが。そういうものにはお金がかかる。それに、便利な家電のおかげで、時間に余裕はあったから、なるべくレシピを調べて、手作りのものを出したかった。今のところ失敗はない。さすがにおやつの甘いものまでは手が回らないので、買ってきたもので済ませていた。
さて、今日は何にしようかな。
ケーキ屋のロールケーキ、美味しそうだった。そう思い出して、時計を見る。そろそろ買い物に行って、おやつを仕入れてこなくては。
「孝利さん、今日はロールケーキでいいですか?」
「コンビニの?」
「ケーキ屋さんの、フルーツ入ってる方です。」
「あぁ、うん。食べたい。」
じゃぁ、買い物出ますね、とコートを羽織る。すると、孝利が、荷物持とうか、とソファーを立った。そのまま玄関についてくる。
「え?いえ。大丈夫ですよ。ハウスキーパーだし。」
「君、まだそんなこと言ってるの?お金いらないなら、普通に恋人でしょう?」
手伝うよ、とコートを手に取る。
恋人・・・恋人か。
昨夜したあれこれを思い出してしまい、身動きが取れなくなる。耳が熱い。
「思い出しちゃったの?」
問われて頷く。
「昨夜のタマは可愛かったな。・・・またしてくれる?」
舐めて、飲むのを、か?
でも、一度したことだ。もうそんなに抵抗はない。頷いて見せると、孝利は本当?と目を細めた。
「嬉しいな。嫌じゃなかったの?」
「嫌ではなかったです。不思議な感じはしましたけど。」
張りのある亀頭の感触は、あんずかライチに似ていて、甘かったらいいのにとは思ったが、さほど抵抗はなかった。
「なんで甘くないんですかね?そしたらもっと・・・。」
言いかけてハッとする。
今何を言おうとした?
もっと・・・もっと舐めるのに?
ちら、と孝利を伺うと、ニヤニヤしている。
「今度はちみつ買ってこようね。」
孝利の卑猥な買い物リストに、はちみつが加わったようだった。
「それよりほら、買い物。おやつの時間に間に合わなくなる。そうだ。カルボナーラの缶詰のお店、まだ行ってなかったね。今日は車出すよ。」
言って、チャリ、と車のキーをポケットに入れる。
「行こう。食費、まだ足りる?なかったらカードで払うけど。」
孝利は、あまり現金を持たないようだ。アンを買った時も、もちろんカード払いだった。
「まだ足ります。」
「十二月になったらまた渡すので足りそう?」
「あまったら・・・繰り越しですか?」
「タマのお小遣いにしていいよ。」
お小遣いか。その程度ならもらってもいいだろうか。クリスマスプレゼントも買いたいし。
「ほら、行こう?」
誘われて、足元についてきたアンに、行ってきます、と言うと、アーンと鳴いて見送られた。
エレベーターに乗り、地下の駐車場に降りる。
「そういえば、タマは免許持ってるの?」
「一応は。」
立派なペーパードライバーだったが。
「そう。じゃぁ、何かあった時は運転頼めるね。」
「何かって?」
「さぁ?」
孝利は、首をかしげると、車に乗り込んだ。おいて行かれないように、助手席に乗る。シートベルトをしていると、いいね、この感覚、と孝利が笑った。
「助手席、あんまり乗せないんですか?」
「うん。恋人を乗せるのっていいね。」
そう言ってくれる孝利に、恥ずかしくなる。
「買い物、遠いんですか?」
話をそらして、恥ずかしさをごまかした。
「いや。行ったら、缶詰とかワインとか、重いものを買うから、車でね。」
炭酸も箱で買うんだもんね?と問われる。
「覚えててくれたんですか。」
「もちろん。タマがなにか買っていいか聞くのは珍しいから。」
言うほど長く暮らしてるわけでもないのだけれど。それでも嬉しくて、ニコニコしてしまう。
「自分で作るレモンスカッシュが好きで。」
「あぁ。じゃぁ、レモン買うの?コンクも?」
「あと、少しだけ入れるんで、ガムシロップも。」
孝利は、忘れないようにしないとね、と車を発進させた。
目的のお店は、車で十分ほど走ったところだった。ゆったりした駐車スペースに車を停めて、カートを持って店内へ。カルボナーラの缶詰と、カットトマトの缶詰、ワインと、今夜の食材だろうか、ひき肉を買った。
「ハンバーグ、ですか?」
「うん。得意料理なんだ。食べさせてあげるよ。」
ってことは、今夜は献立に頭を悩ませなくていいのか。孝利のハンバーグも楽しみで、自然と頬が緩んでしまう。それから自分の買い物を済ませると、結構な重量になった。確かに、ここに来るには車の方がいい。
「ケーキ屋は駐車場ないから、帰ったら一緒に行こう。」
買い物も、二人なら楽しいな。そう思って、それって恋人の発想だ、と赤面する。こんなイケメンと二人で買い物って、世間はどんな目で見ているのだろうか。それを思うと、沈鬱な気持ちになった。
ゲイのカップル、ってことだよな。
「タマ?」
「えっ?・・・なんでしょう?」
「買うの、これだけ?」
「あ、あと朝食用のシリアル欲しいです。」
あぁ、じゃぁ牛乳もいる?と聞かれて頷いた。
「水物ばっかりですね。」
「なくなるんだから仕方ない。タマ、お酒はいいの?」
「一人の時はあんまり飲まないですよ。」
淋しくなるから。とは言わない。仕事に出てしまう孝利に、心配かけたくないからだ。
会計を孝利が済ませ、車に積み込む。積み込みながら、ふと、この大荷物をどうやって家まで運ぼうか悩んでしまった。
「これ、どうやって運ぶんですか?」
「駐車場に、住人用の台車があるよ。全部乗ると思う。」
さすが。
「ゴミ出しに使ったり、いろいろね。」
なるほど。
「あ、聞いてなかったですけど、ゴミの日って・・・。」
「住人用のごみステーションにいつでも出せるよ。段ボールとか、新聞とかも。」
へぇぇぇーと感嘆の声を漏らす。
そんなことを話しているうちに、車は駐車場に戻ってきた。
台車に荷物をすべて乗せ終わり、エレベーターに向かう。
「あ、タマ、それ一人で運べる?郵便受け見てくるよ。」
孝利はそう言うと、スタスタと行ってしまった。仕方なく、台車をエレベーターに乗せ、家まで運ぶ。玄関を開けて荷物をパントリーに運び入れていると、孝利が追いついてきて、手伝ってくれた。リビングのテーブルに、無造作に置かれる手紙類。ダイレクトメールだろうか。気になって見ていると、孝利は少しいやそうな顔をした。
「同窓会の招待状だよ。」
「え?」
行かないのかな?
「タマ、台車返して、ケーキ屋行こう。」
「あ、はい。」
慌てて追いかける。孝利はすでに玄関で待っていた。
午後二時半。日はさしているが、風が冷たい。手袋持ってくるんだったかなと思ったが、この距離だし、と思い直した。
さて、今日は何にしようかな。
ケーキ屋のロールケーキ、美味しそうだった。そう思い出して、時計を見る。そろそろ買い物に行って、おやつを仕入れてこなくては。
「孝利さん、今日はロールケーキでいいですか?」
「コンビニの?」
「ケーキ屋さんの、フルーツ入ってる方です。」
「あぁ、うん。食べたい。」
じゃぁ、買い物出ますね、とコートを羽織る。すると、孝利が、荷物持とうか、とソファーを立った。そのまま玄関についてくる。
「え?いえ。大丈夫ですよ。ハウスキーパーだし。」
「君、まだそんなこと言ってるの?お金いらないなら、普通に恋人でしょう?」
手伝うよ、とコートを手に取る。
恋人・・・恋人か。
昨夜したあれこれを思い出してしまい、身動きが取れなくなる。耳が熱い。
「思い出しちゃったの?」
問われて頷く。
「昨夜のタマは可愛かったな。・・・またしてくれる?」
舐めて、飲むのを、か?
でも、一度したことだ。もうそんなに抵抗はない。頷いて見せると、孝利は本当?と目を細めた。
「嬉しいな。嫌じゃなかったの?」
「嫌ではなかったです。不思議な感じはしましたけど。」
張りのある亀頭の感触は、あんずかライチに似ていて、甘かったらいいのにとは思ったが、さほど抵抗はなかった。
「なんで甘くないんですかね?そしたらもっと・・・。」
言いかけてハッとする。
今何を言おうとした?
もっと・・・もっと舐めるのに?
ちら、と孝利を伺うと、ニヤニヤしている。
「今度はちみつ買ってこようね。」
孝利の卑猥な買い物リストに、はちみつが加わったようだった。
「それよりほら、買い物。おやつの時間に間に合わなくなる。そうだ。カルボナーラの缶詰のお店、まだ行ってなかったね。今日は車出すよ。」
言って、チャリ、と車のキーをポケットに入れる。
「行こう。食費、まだ足りる?なかったらカードで払うけど。」
孝利は、あまり現金を持たないようだ。アンを買った時も、もちろんカード払いだった。
「まだ足ります。」
「十二月になったらまた渡すので足りそう?」
「あまったら・・・繰り越しですか?」
「タマのお小遣いにしていいよ。」
お小遣いか。その程度ならもらってもいいだろうか。クリスマスプレゼントも買いたいし。
「ほら、行こう?」
誘われて、足元についてきたアンに、行ってきます、と言うと、アーンと鳴いて見送られた。
エレベーターに乗り、地下の駐車場に降りる。
「そういえば、タマは免許持ってるの?」
「一応は。」
立派なペーパードライバーだったが。
「そう。じゃぁ、何かあった時は運転頼めるね。」
「何かって?」
「さぁ?」
孝利は、首をかしげると、車に乗り込んだ。おいて行かれないように、助手席に乗る。シートベルトをしていると、いいね、この感覚、と孝利が笑った。
「助手席、あんまり乗せないんですか?」
「うん。恋人を乗せるのっていいね。」
そう言ってくれる孝利に、恥ずかしくなる。
「買い物、遠いんですか?」
話をそらして、恥ずかしさをごまかした。
「いや。行ったら、缶詰とかワインとか、重いものを買うから、車でね。」
炭酸も箱で買うんだもんね?と問われる。
「覚えててくれたんですか。」
「もちろん。タマがなにか買っていいか聞くのは珍しいから。」
言うほど長く暮らしてるわけでもないのだけれど。それでも嬉しくて、ニコニコしてしまう。
「自分で作るレモンスカッシュが好きで。」
「あぁ。じゃぁ、レモン買うの?コンクも?」
「あと、少しだけ入れるんで、ガムシロップも。」
孝利は、忘れないようにしないとね、と車を発進させた。
目的のお店は、車で十分ほど走ったところだった。ゆったりした駐車スペースに車を停めて、カートを持って店内へ。カルボナーラの缶詰と、カットトマトの缶詰、ワインと、今夜の食材だろうか、ひき肉を買った。
「ハンバーグ、ですか?」
「うん。得意料理なんだ。食べさせてあげるよ。」
ってことは、今夜は献立に頭を悩ませなくていいのか。孝利のハンバーグも楽しみで、自然と頬が緩んでしまう。それから自分の買い物を済ませると、結構な重量になった。確かに、ここに来るには車の方がいい。
「ケーキ屋は駐車場ないから、帰ったら一緒に行こう。」
買い物も、二人なら楽しいな。そう思って、それって恋人の発想だ、と赤面する。こんなイケメンと二人で買い物って、世間はどんな目で見ているのだろうか。それを思うと、沈鬱な気持ちになった。
ゲイのカップル、ってことだよな。
「タマ?」
「えっ?・・・なんでしょう?」
「買うの、これだけ?」
「あ、あと朝食用のシリアル欲しいです。」
あぁ、じゃぁ牛乳もいる?と聞かれて頷いた。
「水物ばっかりですね。」
「なくなるんだから仕方ない。タマ、お酒はいいの?」
「一人の時はあんまり飲まないですよ。」
淋しくなるから。とは言わない。仕事に出てしまう孝利に、心配かけたくないからだ。
会計を孝利が済ませ、車に積み込む。積み込みながら、ふと、この大荷物をどうやって家まで運ぼうか悩んでしまった。
「これ、どうやって運ぶんですか?」
「駐車場に、住人用の台車があるよ。全部乗ると思う。」
さすが。
「ゴミ出しに使ったり、いろいろね。」
なるほど。
「あ、聞いてなかったですけど、ゴミの日って・・・。」
「住人用のごみステーションにいつでも出せるよ。段ボールとか、新聞とかも。」
へぇぇぇーと感嘆の声を漏らす。
そんなことを話しているうちに、車は駐車場に戻ってきた。
台車に荷物をすべて乗せ終わり、エレベーターに向かう。
「あ、タマ、それ一人で運べる?郵便受け見てくるよ。」
孝利はそう言うと、スタスタと行ってしまった。仕方なく、台車をエレベーターに乗せ、家まで運ぶ。玄関を開けて荷物をパントリーに運び入れていると、孝利が追いついてきて、手伝ってくれた。リビングのテーブルに、無造作に置かれる手紙類。ダイレクトメールだろうか。気になって見ていると、孝利は少しいやそうな顔をした。
「同窓会の招待状だよ。」
「え?」
行かないのかな?
「タマ、台車返して、ケーキ屋行こう。」
「あ、はい。」
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