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ルイスside 不完全なインキュバス
02
しおりを挟むその時のリトは俺が夢に入っていることにまだ気付いておらず、気付かないうちに去ろうと思っていたのに、ふと聞こえてきたリトの言葉が足を止めてしまったのだ。
『なぁ、インキュバスっていう魔物が載っている文献はあるのか?』
インキュバスの文献? と思い、リトの夢の状況を確認するとギルド内だと把握した。夢でも調べるぐらいインキュバスのことが気になっているのかと思うと、少しだけからかってみたくなったのだ。
それに自慰が中途半端だったせいで、熱をもったリトのを挿れたくてたまらなかったというのもあった。
……ただ、この後大変なことになるとは思わなかった。
潮吹きしちゃったし、失神しちまったし、名前言っちゃうし。潮吹きはともかく失神とかインキュバスらしくなくて凹む。
それに名前を言うのは契約以外では考えられない。インキュバス・サキュバスは人間からして空想の存在で、夢でしか会えないと思いこませるためでもあるが、実際は空想の存在ではなく人間にカムフラージュしながら暮らしていて、夢の中だけじゃなく現実でも精気を貰いながら生きていたりする。——上級インキュバスでしか出来ないけれど。
ただし存在に気付かれ、名前まで呼ばれると上級インキュバスでさえもカムフラージュが解けてしまうため偽名を使っているのだが、俺はそれどころじゃなかった。快感で頭が真っ白になってた。
もし現実でリトが俺の存在だけでなく名前まで呼ばれてしまうと、魔物撲滅対象扱いになってしまうためなにがなんでも現実に存在しているってことをバレないようにしないといけなかった。
今日もまた、リトからの情欲を嫌というほど感じる。しかも飽きもせず俺の名前を呼び続けているのも分かる。
「美味しそうなのを出すんじゃねぇよチクショウ」
そろそろ精気が尽きそうで、下手すると2回目と同じように無意識に入ってしまうおそれがあるのが否めない。何度も入るなら契約を交わしたほうが安心なのだが、俺はリスクのほうが怖い。
契約といっても、人間には夢でも現実でも性欲を常に満足させるかわりに、インキュバスは常に精気をいただくといった内容で、もし人間がインキュバスの存在をバラそうとすると死に至る。
そこまではいい。
俺にとって問題なのが、契約中に人間が他のインキュバスと契約を交わしてしまうと、俺が消滅してしまうのだ。消滅つまり死に繋がっちゃうのだ。
だから下級インキュバスは契約をしたがらない。上級インキュバスに取られたら適わないからだ。俺なんか不完全だからあっさり消されそうでそうそう出来ない。
リトは今のところ俺に執着しているようだが、他のインキュバスを見たら心変わりするかもしれない。俺よりも美しくて色気がとんでもないのはザラにいるのだ。
……やっぱり契約するのはやめとこ。でも、リトの精気は欲しいんだよなぁ。とりあえず今のところあの極上な精気にみんなは気付いていないようだし、その間は俺が得られ続けても……いいよな?
契約は絶対にしないし、万が一他のインキュバスと出くわしても、リトを渡して逃げればいい。
うん、そうしよう。
先ほどから俺にまとわりつくようなリトの情欲を捕らえ、夢に潜った。
◇
「やっと来たか。ルイス」
「……まだ3回目なのに夢って自覚するの早いね?」
「お前が居る時点で気付けって言っただろうが」
何を言ってるんだ? という顔をされる。そういえば初めて会った時もすぐ自覚してたなこいつ。
普通はなかなか気付かないものなのに。
「なかなか精気が溜まってるね。感心感心。今回も極上にありつけそうだ」
人間の前ではいっぱしのインキュバスとしてやってみたが、リトには通じなかったようだ。
「いっぱしの口をきいてるようだが、セックスで失神するやつがいっぱしとは言えないよな? しかもまだ痕が残ってるようだし——」
突然俺のベストを掴み、胸がすべて見えるように開かれた。
前回からそんなに日が経っておらず、強く噛まれた部分はまだうっすら痕が残っている状態だった。
「……っ!」
「完全なインキュバスじゃない、とお前は言っていたが、俺にはよく分からん」
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