夢で会ったインキュバスが忘れられないんだが

Sui

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ルイスside 不完全なインキュバス

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 俺は不完全なインキュバスのレッテルを貼られている。

 インキュバスのイメージといえば、人間の精気を吸い取る魔物で、角があり魔物特有の尻尾があり黒い翼があるといったイメージだろう。
 だが、俺には黒い翼がない。出さないのではなく、元々ないのだ。そしてそのせいなのか分からないが、能力も他のインキュバスと比べて劣っている。人の夢に入るのに時間がかかってしまうし、それで逃してしまうこともよくあるのだ。

 リトの夢に入った時も、実はオンナの情欲を捕らえようとしてなかなか上手くいかず、やっと入ったと思ったらあいつの夢だったのだ。

『……しまった。入る夢を間違えちまった』

 人の夢を入るには、人間の情欲を捕らえる必要がある。普段のインキュバス・サキュバスはいとも容易く捕らえられるため、俺がようやく見つけた矢先に他の奴に取られてしまうのはいつものことだったりする。精気が魅力であればあるほど、先に取られてしまうため俺がたどり着ける先はいつも並よりも下なのばかり。
 それでもやはり精気は欲しい。一応セックスせずに他の夢へ移ることは出来るのだが、次の情欲を捕らえるのにまた時間かかるのが面倒くさいし、精気を得るために最低一回はセックスしときたいがために、相手にはセックスしないと目覚めることは出来ないと嘘をつく。
 能力は劣っているものの、外見は見目麗しいと人間から好評のため、その面は問題なかった。

 ……ただ、オトコの夢に入るのはリトが初めてで、しかも情欲として捕らえたわけではない。話が通じるのだろうかと不安はあったが、問題なかったのは安心した。
 ただ珍しいやつだったなとしか。

 インキュバス・サキュバスの能力の一つで、夢の主の今までの性的事情を把握することが出来る。
 リトの場合は性欲処理をするためだけに娼館へ出向くぐらいで、そしてオンナしか選んでない。性的対象は確実にオンナだった。

 それなのに、オンナになった俺を見てオトコがいいっていうのは、どういうことなんだ?

 リトの好みを掌握して変身したはずなのに、もしかして上手くいかなかったんだろうかと少しだけ凹みはしたものの、セックスしてみたらそんなことスッカリ忘れてしまうほど、精気が極上だったのはラッキーだった。

 ……そうなんだよなぁ。リトのやつ極上な精気なんだよなぁ。今までの精気なんて比にならないぐらい、とてつもなく美味しくて、腹持ちがいい。いつも精気不足で毎日様々な人の情欲を見つけては得ていたのが、リトのを得てから数日間何もしなかった。
 しかも人間の情欲をなかなか捕らえられないはずの俺が、リトの情欲だけはすぐ分かるし捕らえやすいのだ。
 あんなに極上な精気なのに他のインキュバス・サキュバスが気付かないのが不思議なくらい。たまたま埋もれているだけなのだろうか。

 胸に散らばっている鬱血や歯形をそっとなぞる。最初も2回目もやられて、肌の再生が遅いためなかなか消えてくれない。こんなありさまでは人の夢に入るなんてとても出来ない。
 ほんとに不完全ってのはこういうとき不便だ。
 幸い腹持ちが良い精気のおかげで、しばらく人の情欲を捕らえなくても良かったが、その分リトとの情事を思い出すのがいただけない。
 
 2回目の時の情事を思い出してしまい、下半身が疼きだす。

 リトの夢に再び入るつもりは本当になかった。そもそも同じ人の夢に再び入るのは、契約していない限りありえない。それがインキュバス世界のルールなのである。しかも下級で不完全なインキュバスの俺には人間と契約するなんてリスクがとても高すぎて出来ない。

 だがリトの極上な精気を味わってしまった身体はまた味わいたいと求めていて、ついつい自慰したことは何度もあった。再びリトの夢に入る前も、実は魔力でリトの性器の張り型を形成し、それを使って自慰していたのだ。
 精液は出ないものの、堅さや皮膚の弾力さは変わりなく、充分濡らした張り型を後孔に当て、あの時どんな風に挿れたのを思い出しながら同じように抜き差しし、もう少しでイキそうだ──と夢中になっていたらいつのまにかリトの夢の中にいたのだ。

 ……無意識にリトの情欲を捕らえて、入っちゃったのだ。
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