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夢の中で
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翌日、俺は護衛の事務所の前にいた。
護衛の仕事をしているという青年に、護衛の求人はしているかと訊ねると、常に人手不足なので募集してますよ~冒険者ならすぐ入れるはず~と推奨してくれた以上、忘れないうちに行動を起こしたかった。
事務所から一人誰かが出てきたので呼び止めた。
「呼び止めてすまないが、ここで仕事してみたいんだ。どこへ行けばいいか教えてくれるか」
「あぁ、就職希望者ですか? それならご案内しますよ」
「いいのか? どこかへ行く予定では…?」
「いえいえ。昼食しに行くだけでしたので大丈夫ですよ。あ、良かったらこの後ご一緒にどうですか? 登録の手続きはすぐ済ませられるので」
「そうなのか?」
「そうなんですよ。俺はワタル。これからよろしく」
「リトだ。じゃあ案内お願いしとこう」
本当に登録の手続きはすぐ済ませられた。名前と連絡手段、冒険者のランクも聞かれたがただの確認だけで、あとは出勤日に来てくれるだけで良いらしい。依頼は結構あるようで、空いている人に指令を与えるといったスタイルで功績があれば依頼者からの指名もある……と護衛内容についての詳細は、手続きのあと食堂へも案内してくれたワタルから教えてくれた。ついでにこれから行く食堂は一番美味い店だということも。
「リトさんって冒険者なんですよね? しかもランクAじゃないですか。何故護衛の仕事をしようと……?」
「あぁ、昨日酒場で護衛をしているという青年から、インキュバスの話を聞いてな。その情報を得たかったんだ」
「あぁ、なんか激励会があるとか……他人に依頼内容を漏らすとはちょっといただけないな」
ワタルは難しい顔してブツブツ考えていた。おそらく漏らした当人に心当たりでもあるのだろう。
「まぁまぁ。他人だった俺が護衛の就職してるんだし、許してやってくれないか。君は激励会とやらには参加してなかったのか?」
見た感じ俺よりも年下のようだが、しっかしりているようだ。20代後半にもなってランクを上げることなくフラフラと冒険者していたのが少しだけ恥ずかしくなるほどだ。
「激励会よりも愛しい人から励ましてもらうほうが、俺のためになりますので」
しかも連れ合いがいる。少しばかり嫉妬してしまうが、自分はなんのために護衛に入ったのかと奮いを起こした。
「インキュバスの情報ですか……。確かに護衛にはそういった依頼もあります。呪い関係もインキュバスやサキュバスに関わっているかもしれないというのもありますし。どこか資料とか残っているかもしれませんね」
ワタルからインキュバスの新情報を得られたことで、モチベーションがますます上がってきた。
「ありがとう。まずは護衛の仕事に慣れてから調べることにするよ」
「一応これでも護衛は長いので、遠慮なく何でも聞いてくださいね。リトさんの冒険話も知りたいし、何故インキュバスを調べているのかも是非とも聞かせてくださいね~」
「……そのうちな」
何やら呪い関係でインキュバスのことが気になるらしい。どう関係するのか分からないが、協力者が得られたのは大きい。
まさか俺が人に頼るなんてな。
物心ついたときからみなしごで、友達もおらず連れ合いもいない。そもそも必要性が自分にはなかった。生活のために冒険者になったものの、いつ死んでも問題なかったほど、長いことひとりで生きてきた。きっと死ぬまでこうだろうとも思っていた。
ルイスがうっかり俺の夢に入るまでは、やり甲斐や趣味も興味もなく常につまらない日々だった。
気付いたらこんな歳まで生きていたのかと人生に張り合いが全くなく、ずっとひとりだろうと考えていたのに、ルイスと出会ってからこんなにも必死にお前を探してる。
ルイス、お前のことをもっと知りたい。捕まえたい──。
「ワタル、これからよろしく」
これから世話になるであろう人に硬く握手をした。
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