夢で会ったインキュバスが忘れられないんだが

Sui

文字の大きさ
8 / 26
夢の中で

08

しおりを挟む



「…………ちっ」

 ルイスのやつめ、もう少しで触れそうな時に醒めるようにしやがって。
 ルイス。うん覚えてるな。名前はルイス。あのインキュバスはルイス。

 夢の中ではギルドに出向いた時の続きのようだったが、実際はきちんと宿に泊まっておりベッドの中でひとり寝ていた。
 今は夢なのか現実なのか時々分からなくなるが、夢精で下半身の不快さに現実であることを教えてくれる。
 ……夢精せずに醒めるすべはないものかな。

 ため息つきながら下半身をスッキリすべく、シャワーしに向かった。





 結局毎日来て欲しいという希望は叶わず、夢で会えない日々が続いたが、ふとルイスの名前を心の中で思い浮かべることがありがたかった。
 名前を呼ぶことで、あの時の夢を鮮明に思い出すことができる。

 本日も依頼を受け、着々とレベルが上がりつつあった。もう少しでSランクに届きそうだ。そろそろ今後のことを考えなきゃいけないな。
 地元のギルドで報酬を受けたあと、常連である酒場に寄ってみると先客であろう数十人の団体が盛り上がっていた。空いてる席はないかと探してみるとオーナーと目が合った。

「おぉ、リトか。そこちょっとうるさいけど暴れはしない人達だから安心しな。何がほしい?」
「とりあえずビールで。……あとはビールに合ったツマミもいくつか頼むよ」
「了解。空いてる机の席に座りな」

 空いていた机見つけ、席に座ると早速ビールを持ってきてくれ、一口飲んだ。やっぱり一仕事終わったあとのビールは最高だな。
 ツマミが来るまで、何度か飲んでるとすぐ無くなってしまい、おかわりを頼んだ。その様子を見ていたであろう団体の中の一人から「良い飲みっぷりだねぇ!」と声かけられ、何がそうさせたの? って訊かれてしまった。

「……今回の依頼がなかなか難儀だったもんでね」

 とりあえず相手してやると、俺が冒険者だと気付いたのか、どんな依頼内容なんだ? って興味を持たれてしまい、気づいたら青年らしき人が3人ほど同席されていた。
 仕方なしにどれだけ難儀だったか説明してやると、相手のほうはすでにデキ上がっているのかいちいち大げさに反応してくる。だがこういうのもたまには悪くはないな。

「いいよなぁ。冒険者はロマンがあって。俺なんか家庭があるから無理だよ」
「いいじゃないすかー。帰宅すると大切な人がいるって幸せなことっすよー」
「まぁな。でも時々どうしたらいいのか分からない仕事も入ってくるんだよなー」
「確かにー。どう守ればいいんだっていう内容もありますもんねー」

 ビールのおかわりとともにツマミも持ってきてくれたオーナーが大丈夫か?と目配せをしてきた。大丈夫だとアイコンタクトで返し、みんなの会話を傾聴する。

「そうそう。配偶者がインキュバスに狙われているみたいだから守ってくれっていう依頼もあったしー」
「本人の夢の中に出てくる魔物をどう守れってハナシですよねー」

 インキュバスという単語に引っかかり、思わず盛り上がっていた会話を止めさせた。

「インキュバスだって?」
「そう! 夢に出てくる魔物のインキュバス! サキュバスの依頼が来ないのはオトコだからですかねぇ。依頼があれば俺が守るついでに相手にしてやるのになぁ。ま、その前にどうやって夢に入るのかってハナシですけどね」
「すまないが、君たちはどんな職業をしてるんだ?冒険者にはそんな依頼はないしギルドにもなかった」
「あぁ、そっか。俺たち護衛してるんす。魔物を撲滅するだけでなく、人民を守る仕事でもあって、人民優先なんすよ。なので冒険者ギルドよりも結構依頼がたくさん来るんですよ~。大変たいへん」

 ため息ついてビールを流し込む青年。
 護衛か。冒険者ギルドよりも依頼が多いということは、もしかしたら情報も豊富なのではないだろうか?

「……インキュバスの詳細は分かるのか?」
「さぁ? 俺は依頼を受けたことはないんですが、件数は案外あるってハナシは聞いたことありますねぇ」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

処理中です...