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第二章「そら豆」
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小次郎が店を出ると、貞吉がそら豆を見ながらぼーっと立っていた。
傍らには、岡っ引きの栄助がいた。
「おい、何してやがる?」
「えっ? あっ、こりゃ旦那、中の方は?」
「終わったよ」
「どうでしたか?」
「ああ、思いっきり泣かれたが……、おめえのほうはどうなんでぃ?」
「あっしのほうも店の者に訊きましたが、お七を悪く言うようなやつは、ひとりもいませんでしたぜ」
「そうか……、町の連中はどうだ?」
栄助に訊いた。
栄助は首を傾げながら言った。
「へえ、手下に探らせてみたんですが……」
確かに火付けは許せない。
だが、お七を悪くいうやつはいない。
むしろ、誰かに唆されたのだろうとか、狐につかれてるんだろうとか、お七を庇うようなことを言う連中が多かった。
「そうか……」
小次郎がお決まりの盆の窪に手をやると、辻の角に見覚えのある犬顔が目に飛び込んできた。
火付改同心榊吉十郎の小者辰三である。
「なんでぃ、あいつは?」
「へえ、火付改さんも、色々と探りを入れているみていですぜ」
小次郎は辰三の顔を睨みつけながら、ちっと舌打ちをする。
「全く暇な野郎だ。娘っ子ひとり捕まえたところで、手柄もねえだろが」
「全くですぜ。ところで旦那、これからどうしやすか?」
「兎も角、お七が火付けを働いた訳を探ることだ。栄助、手下を使って近所の連中から、さらに話を集めてくれ。それからおめえは、これがどこの店の物で、誰に売ったか、探ってくれ」
栄助は火打袋を受け取ると、「へい」とすばやく駆けて行った。
貞吉は、「あっしらは?」と小次郎を見た。
「取り敢えずは奉行所に戻るぞ。と、その前に飯でも食おうか」
「へえ」
貞吉は、待ってましたとばかりに駆け出しそうになった。
「おい、ちょっと待て」
「へい?」
小次郎は、再び店の中に入って行った。
次に出て来たときには、片手に紙袋を抱えていた。
傍らには、岡っ引きの栄助がいた。
「おい、何してやがる?」
「えっ? あっ、こりゃ旦那、中の方は?」
「終わったよ」
「どうでしたか?」
「ああ、思いっきり泣かれたが……、おめえのほうはどうなんでぃ?」
「あっしのほうも店の者に訊きましたが、お七を悪く言うようなやつは、ひとりもいませんでしたぜ」
「そうか……、町の連中はどうだ?」
栄助に訊いた。
栄助は首を傾げながら言った。
「へえ、手下に探らせてみたんですが……」
確かに火付けは許せない。
だが、お七を悪くいうやつはいない。
むしろ、誰かに唆されたのだろうとか、狐につかれてるんだろうとか、お七を庇うようなことを言う連中が多かった。
「そうか……」
小次郎がお決まりの盆の窪に手をやると、辻の角に見覚えのある犬顔が目に飛び込んできた。
火付改同心榊吉十郎の小者辰三である。
「なんでぃ、あいつは?」
「へえ、火付改さんも、色々と探りを入れているみていですぜ」
小次郎は辰三の顔を睨みつけながら、ちっと舌打ちをする。
「全く暇な野郎だ。娘っ子ひとり捕まえたところで、手柄もねえだろが」
「全くですぜ。ところで旦那、これからどうしやすか?」
「兎も角、お七が火付けを働いた訳を探ることだ。栄助、手下を使って近所の連中から、さらに話を集めてくれ。それからおめえは、これがどこの店の物で、誰に売ったか、探ってくれ」
栄助は火打袋を受け取ると、「へい」とすばやく駆けて行った。
貞吉は、「あっしらは?」と小次郎を見た。
「取り敢えずは奉行所に戻るぞ。と、その前に飯でも食おうか」
「へえ」
貞吉は、待ってましたとばかりに駆け出しそうになった。
「おい、ちょっと待て」
「へい?」
小次郎は、再び店の中に入って行った。
次に出て来たときには、片手に紙袋を抱えていた。
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