法隆寺燃ゆ

hiro75

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第五章「生命燃えて」 後編

第22話

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 寺主である入師から急な呼び出しを受けた聞師は、写経の筆をおいて、彼の部屋に急いだ。

 急な話とはなんであろうか?

 まあ大抵は、寺法頭である下氷雑物が、また何かしでかしたので調整しろ、というような話だろうが。

 家人や奴婢への扱いが酷いとか………………

 朝廷から人を出せと言われて、また奴婢を徴収するとか………………

 倉庫の稲を拠出しろと言われて、来年の種もみ分まで拠出しようとしているとか………………

 というか、いい加減そっちで処理してほしい、そのたびに呼び出しをくらうこっちの身になって欲しい。

 修行ができない。

 大体寺の一番の目的は僧侶の修行で、衆生の理から逃れて、ただ仏の道にまい進することが本来の役割だ。

 確かに、大きな寺となると、ただ修行をしているだけでは済まない。

 現との調整もあるだろう。

 だが、この寺はそれが多すぎる。

 僧侶が現のことに関わらなくていいように、また僧侶を監督する立場として寺法頭がいるのに、この寺ではその寺法頭が問題を良く起こす。

 まったくもって、役目を果たしていない。

「全く、下氷のやつ……」

 と、ぶつぶつ文句を言いながら入師の部屋へと入った。

「入師様、お呼びに従い、参りました」

「うむ、こちらに」

 入ると、入師と同じぐらい年老いた僧侶とその後ろに顔は見えないが、若い僧侶が座っていた。

 旧百済領の寺から来た僧侶で、この九月に新羅船に乗ってやってきたらしい。

「それはまた、遠路遥々ようこそ」

 と、聞師は型通りの言葉で旅路を労った。

「それで入師様、お話というのは?」

「うむ、この覚居かくきょ殿が数日この寺にお泊りになるので、その世話をと思ってね」

「左様で、畏まりました」

 では準備させましょうと立ち上がろうとすると、

「あっ、いや、話はまだ……」

 と、そこに座れと促された。

「実は、この度覚居殿がわざわざ海を渡ってまでして、本朝に来られたのにはわけがあってな」

「はあ……」

「そなたに会わせたいものがおるそうな」

「私にですか?」

 入師も、聞師も、百済からの帰化僧だ。

 旧百済には多くの知り合いがいるが、誰であろうか?

「聞師殿と申されたかな? 貴殿は、この男をご存知かな?」

 覚居と名乗る老僧が、彼の後ろに控える男をさし示した。

「この男?」

 聞師は、わずかに体を傾け、覚居の後ろに隠れる男を見る。

 男は俯いていて、見るともなしに床を見ている。

 しばらく見て………………「あっ!」と声を上げた。

「弟成!」

 聞師の声が部屋中に響き渡る。

 あまりの声に、覚居がびくりとなったほどだ。
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