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非日常はすぐそこまで
1-5☆
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「――二人とも、飲み物持ってきたよ」
「わぁ! 麦茶ありがとっ!」
「おかしはないのか?」
「もう駿英、厚かましいわよ」
二人はローテーブルに問題集を広げ勉強をしていた。ぼくはその横で例の紙を取り出した。
何度目かのにらめっこ。だけど、手がかり一つ見つけられない。
「つばき君、なにかわかった?」
「さっぱりわからないよ。この文章……空に波が届く、ってどういう意味なんだろう」
「最初見たとき、水平線のことかなって思ったの」
「え?」
花梨が身を乗り出す。息が首筋をかすめた。心臓が変な音を立てる。
「海がどこまでも続いてるってすてきじゃない?」
「そうだね」
そう感じられる花梨も素敵だけど。
「そうだ! そのあとの"黄昏"は、夕方の砂浜を表しているのかも」
「なるほど……」
花梨の考えを聞いた後にもう一度文章を読み返す。
「……ぼくもこの文章を読んで気付いたことがある」
「えっ?! ほんとに?」
「うん、この文章はあいまいな表現しかない。きっと意味はシンプルなものだと思う」
「たしかに、伝えたいことを無理やり隠しているみたいだね」
「今わかった。この文章は、謎を解かれるために意図的に作られたものだってことにね」
ふたりで盛り上がってすっかり駿英のことを忘れていた。
彼の方を見ると……寝てた。
勉強してると少しでも思ってたぼくが、ばかだった。
あぁ、よだれも垂らして気持ちよさそうだな!
「砂浜がありそうな場所……この辺にあるかな?」
ここから海まで電車でも1時間はかかる。海の近くを指しているとは考えにくい。
「ないと思うな。この文章でも"黄昏の山"って言ってるし、行くなら山かもね」
「どこか有名な場所かな?」
「校内の掲示板に貼られてた紙。だから、そんなに遠くじゃないはず」
ぼくらみたいな子どもが行ける場所……、そう考えるのがベストだ。
「父さんの書斎を調べない?」
「え、つばき君のお父さん……」
「そう。ぼくも昔はよく借りに行ってたんだ」
「つばき君、本好きだもんね」
「まあね。委員会の新田さんに本を借りてる」
「真弓ちゃんが? 仲良かったっけ?」
「委員会が同じで、たまに貸してくれるんだ」
花梨が少し黙った。小声で何かつぶやく。
(……聞こえないけど、たぶん不満っぽい?)
やがて、ふと顔を上げて言った。
「じゃあさ、つばき君。わたしに、本を選んでよ」
「え、ぼくが?」
「うん。ジャンルとか分かんないし。だから選んでほしいの」
真正面からの視線。
断れる男子、たぶんこの世にいない。
「……わかった。でもそのポーズはやめて。寿命縮むから」
「ふふっ。漫画でもいい?」
「もちろん。入口としては最高だよ」
「漫画読むんだ。意外」
「だって面白いもん。じゃあ行こっか」
「うん!」
寝ている駿英をそっと避けて、階段を降りる。
……いや、勉強しに来ているんだから起こせばよかったな。
父の書斎は玄関に近い。階段を降り、部屋の前に立つ。
ドアノブを回すけど、内側開きの扉はわずかにしか開かなかった。
出来た隙間から、部屋の中を覗く。
どうやら、扉の前に積まれている本の山が邪魔をしているようだ。
無理に力を入れたら本を傷つけてしまう。
「どうしようかな……」
書斎は掃除もされず本だけが増えていく。このままだといつか崩れるだろうな。
「じゃあさ、わたし、この部屋の片づけを手伝うよ。つばき君は本を見つけやすくなるし、わたしも本を選んでもらえるし、つばき君のお父さんは部屋が綺麗になっているしwin-win-winだね!」
「ほんとに!?」
「任せてよ!」
それは願ってもいない言葉だった。
「ありがとう。足の踏み場がないからゆっくり本を探せないんだよね」
「はーい」
花梨がわずかに膨らんだ胸をポンと叩き笑顔を返してくれた。
扉の隙間に体をねじ込み、なんとか書斎へと入る。
それから、扉の周りの本を移動させて内側から扉を開く。
初めて書斎に入った花梨は、本の多さに圧倒されキョロキョロと部屋を見回していた。
部屋には、本がぎっちりつまった棚が何台もあり、そこに収まりきらない大量の書籍は床に積み上げられていた。
棚の仕切り板は悲鳴を上げている。
スペースがあるのは、窓の近くに置かれている机の一部分とわずかに見える床のみ。
ジャンルごとに分類するのもかなり時間がかかりそうだ。ぼくたちはそれぞれ本とにらめっこを始めた。
「わぁ! 麦茶ありがとっ!」
「おかしはないのか?」
「もう駿英、厚かましいわよ」
二人はローテーブルに問題集を広げ勉強をしていた。ぼくはその横で例の紙を取り出した。
何度目かのにらめっこ。だけど、手がかり一つ見つけられない。
「つばき君、なにかわかった?」
「さっぱりわからないよ。この文章……空に波が届く、ってどういう意味なんだろう」
「最初見たとき、水平線のことかなって思ったの」
「え?」
花梨が身を乗り出す。息が首筋をかすめた。心臓が変な音を立てる。
「海がどこまでも続いてるってすてきじゃない?」
「そうだね」
そう感じられる花梨も素敵だけど。
「そうだ! そのあとの"黄昏"は、夕方の砂浜を表しているのかも」
「なるほど……」
花梨の考えを聞いた後にもう一度文章を読み返す。
「……ぼくもこの文章を読んで気付いたことがある」
「えっ?! ほんとに?」
「うん、この文章はあいまいな表現しかない。きっと意味はシンプルなものだと思う」
「たしかに、伝えたいことを無理やり隠しているみたいだね」
「今わかった。この文章は、謎を解かれるために意図的に作られたものだってことにね」
ふたりで盛り上がってすっかり駿英のことを忘れていた。
彼の方を見ると……寝てた。
勉強してると少しでも思ってたぼくが、ばかだった。
あぁ、よだれも垂らして気持ちよさそうだな!
「砂浜がありそうな場所……この辺にあるかな?」
ここから海まで電車でも1時間はかかる。海の近くを指しているとは考えにくい。
「ないと思うな。この文章でも"黄昏の山"って言ってるし、行くなら山かもね」
「どこか有名な場所かな?」
「校内の掲示板に貼られてた紙。だから、そんなに遠くじゃないはず」
ぼくらみたいな子どもが行ける場所……、そう考えるのがベストだ。
「父さんの書斎を調べない?」
「え、つばき君のお父さん……」
「そう。ぼくも昔はよく借りに行ってたんだ」
「つばき君、本好きだもんね」
「まあね。委員会の新田さんに本を借りてる」
「真弓ちゃんが? 仲良かったっけ?」
「委員会が同じで、たまに貸してくれるんだ」
花梨が少し黙った。小声で何かつぶやく。
(……聞こえないけど、たぶん不満っぽい?)
やがて、ふと顔を上げて言った。
「じゃあさ、つばき君。わたしに、本を選んでよ」
「え、ぼくが?」
「うん。ジャンルとか分かんないし。だから選んでほしいの」
真正面からの視線。
断れる男子、たぶんこの世にいない。
「……わかった。でもそのポーズはやめて。寿命縮むから」
「ふふっ。漫画でもいい?」
「もちろん。入口としては最高だよ」
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「うん!」
寝ている駿英をそっと避けて、階段を降りる。
……いや、勉強しに来ているんだから起こせばよかったな。
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ドアノブを回すけど、内側開きの扉はわずかにしか開かなかった。
出来た隙間から、部屋の中を覗く。
どうやら、扉の前に積まれている本の山が邪魔をしているようだ。
無理に力を入れたら本を傷つけてしまう。
「どうしようかな……」
書斎は掃除もされず本だけが増えていく。このままだといつか崩れるだろうな。
「じゃあさ、わたし、この部屋の片づけを手伝うよ。つばき君は本を見つけやすくなるし、わたしも本を選んでもらえるし、つばき君のお父さんは部屋が綺麗になっているしwin-win-winだね!」
「ほんとに!?」
「任せてよ!」
それは願ってもいない言葉だった。
「ありがとう。足の踏み場がないからゆっくり本を探せないんだよね」
「はーい」
花梨がわずかに膨らんだ胸をポンと叩き笑顔を返してくれた。
扉の隙間に体をねじ込み、なんとか書斎へと入る。
それから、扉の周りの本を移動させて内側から扉を開く。
初めて書斎に入った花梨は、本の多さに圧倒されキョロキョロと部屋を見回していた。
部屋には、本がぎっちりつまった棚が何台もあり、そこに収まりきらない大量の書籍は床に積み上げられていた。
棚の仕切り板は悲鳴を上げている。
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