乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました

エピローグ

「イーサン…いや…エタンと呼んでよいか？
エタン…君が無事でよかった。
君に何かあったらと思うと、私は…」
俺を覗き込む紫の瞳はアメジストのように輝いていて艶めいており、声は低くとても掠れている。

「ジェイデン様…」
ジェイデンの瞳に魅入られた俺は、目を逸らすことができない。
ちょっと待て、俺…落ち着こう…

「ジェイと呼んでくれないか？」
俺の方はかがみ込んで顔を寄せると、両手で俺の耳にかかる部分に手を添えて優しくメガネを外し、滲んでいた涙を指で優しく拭った。

「ジェイデン様…そのような恐れ多いことは…私はジェイデン様の友人として相応しくありません」
ジェイデンの手を握って首を横に何度も振る。
俺はただのサポートキャラであり、しがない子爵家の次男だ。優れていると言われる魔法も防御のみに特化しており、攻撃などの花形ではない。

「相応しくないなど言わないでくれ。
エタン…他の人に気づかぬように優しく配慮出来る気配りの人だ。クラスメイトが困ったときには目立たぬ様にフォローもしている。
私もメアリー嬢のことがなければ、エタンのさりげない優しさに気づくことはなかったかもしれない。
君の思いやりに気づけなかった私の方こそ相応しくないのかもしれない。
…でも、君に相応しい人間となるよう精進するので、これからも私のことを側で見守ってくれないか？」
それはまるでプロポーズのようで、照れ臭そうに顔を赤く染めるジェイデンから目を離すことが出来ない。

いや…待て…友人だ
そう…友人なんだから

「ジェイ…こちらこそよろしくお願いします」
俯き小さな声で言うと、ジェイデンが俺の頬にキスをしてきた。

「私は友人としてではなく、恋人としてエタンのことが好きだよ。これから積極的に誘いをかけるのでそのつもりで覚悟していてね」
目をきらりと輝かせると、いたずらっ子の様な笑みを浮かべてジェイデンが言った。


メアリーは素行不良から謹慎となったが、男爵により修道院へ送られたらしい。反省がなければ数年間いることになるだろうと聞いた。
王子と婚約者の仲は良好で、卒業後には式を挙げられる予定だ。

卒業後王宮魔術師として内定を貰った俺は、何故か週の大半をジェイデンと一緒に過ごしている。
ジェイデンからは婚約の打診が何度も来ている。
脇役キャラではなく、魔術師として自信を持ち自分が人生の主役として思えるようになったら打診に応じるつもりだ。
そう遠い話ではないと考えている。