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2章 邂逅
450日目その1~ついに事件発生~
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能力が発現し、1年以上が経過した。
相変わらずテレビのニュースでは能力者関連の事件は報道されない。
でも、色の付いた景色は相も変わらず見ることがある。
能力者は存在している。ハズ…。
あと、色の範囲が広がっているみたいだから、ソイツもちゃんと成長しているんだろう。
でもその色に触れる勇気がないまま、避け続けて約3か月が経過している。
やはり、能力者を探しているのだとして、1つの”疑問”が生まれる。
今は、その疑問に対する答えは推測の域を出ない、他の能力者に合えば自ずと答えは分かるだろう。
今日は、平日でいつも通りに出社する。
色の付いた風は、駅の周りに良く配置されているが、結構隙間があるし、能力者の身体能力であれば問題なく避けることができると思う。
まぁ、色の付いた風が最寄り駅に配置されたことは、3か月で1度しかないし、かなり前だったので、隙間も広かった。
今は、電車からみても密度が高まっているし、確実に避けれるかと言うと、難しいかもしれない。
が、俺の”疑問”に対する推測は、多分的を得ている。
と、考えている内に会社に着いた。
もう考え事をしようがしていまいが、練習に支障はないレベルに至っている。
この時はまだ、”今日”あんな事が起こるなんて思ってもみなかった。
青天の霹靂って、こういうことなんだな。
着いてからはいつものルーティン。
休憩所でコーヒーを買い、水元が声をかけてくる。
・・・
声をかけてこない?
振り向いても水元が居ない。
おかしいと思い、水元の席に行ってみる。
そこにはパソコンに向かって仕事を始めている水元の姿があった。
火火野「おはよう。一体、何時からいるんだよ?」
水元「…おはようっす。いや、昨日ちょっと寝れなくて、いつも通りの”押し付け”もあったんで早く出社したんです。」
火火野「…そうか。なんか手伝おうか?」
水元「いや、もう目途ついてるんで、大丈夫っすよ。」
分かったと頷いて、自席に向かう。
9時に始業し、1時間がたった頃。
ある女性の声が聞こえてくる。
??「あなたが作った資料、誤字があったじゃない!提出する私が恥を掻くんだから、本当にやめて!」
まぁ、これも予定調和。いつもの光景だ。
この女性は、『春日 御局(カスガ ミキ)』。びっくりする名前だが、名は体を表すとはこのことだ。
水元は入社してから、ずっと、ずーっと仕事を押し付けられていて、春日は定時退社、水元はご存知の通り深夜残業。仕事自体は、無難にこなしてしまうから、それが常態化してしまっている。
俺たちは、上司の『上司 担(カミツカサ ユタカ)』に何度か相談はしたものの、動いてくれているのかどうなのか、春日の勤務態度は変わることはなかった。
春日が質が悪いのは、必ず”いちゃもん”を付けてくる。
今回の誤字はまだ良い方で、難しい漢字(鑑みて、齟齬など)を使われたから読めなかった。資料が簡単じゃないから説明が伝わらなかった(自分が作った資料じゃないから説明できないだけ)。など、目を覆いたくなるひどさだ。
水元はよく耐えている。
その時だ。
バッシャーン!
??「ぎゃぁ!!」
ドサッ
という水が弾ける音と何かうめき声と倒れる音がした。
水元「てめぇ!毎度毎度、調子に乗ってんじゃねーぞ!この無能が!!」
ハッキリ見えている。
水元から倒れている春日の上に伸びている色が。
水元が能力者!?いつから!?など様々な疑問が頭によぎったが、先にやるべきことがあった。
ジリリリリ!!!
けたたましい非常ベルの音が、騒乱を掻き消す。
「10階フロアで、非常ベルが押されました。慌てることなく訓練通りに避難してください。これは訓練ではありません。繰り返します。避難してください。これは訓練ではありません。」
すぐに避難を告げる音声。
水元と春日のやり取りで騒然としていたフロアが、ザワザワしながら各々に避難を始めようとする。
ブシャー!
と、スプリンクラーも作動し、色々なところから悲鳴や指示を出していたりする声が聞こえる。
水元は突然のことにきょろきょろしている。
色は、一旦見えなくなった。
フロアの100台以上あるパソコン達も水浸し。全部廃棄だろう。
まぁ、シンクライアントだからデータは大丈夫か。
春日の元に行き、あたふたしている上司に背負わせる。
普通の女性より大柄な春日も、今の俺にかかれば軽いものだ。
火火野「春日さんをお願いします。」
上司「あぁ・・・分かった・・・お、おも・・・ぃ。」
そのくらい我慢しろ。今回の件の責任はお前の怠慢にもある。
という内の声が外に出そうだった。
ゆっくり水元を見据える。
水元「火火野さん。あんたの仕業ですか?」
火火野「あぁ。」
水元の顔が見たことない形をしている。
怒り、哀しみ。びしょびしょに濡れたその顔に、今まで溜めていた負の感情があふれ出ている。
水元の周りに色も付き始めている。
水元「あ、あんたは知っているだろう!…あんたは俺の味方だろう!!」
火火野「あぁ…俺はお前の味方だ。だから、止めてやるよ。」
この件の責任は俺にもある。根本的な対処を他人に押し付けて、水元の我慢をずっと見ないふりして先送りしていた。
限界が近い、いや、とっくに過ぎているのはもう分かってたのに。
まだ、大丈夫、今日もいつもと一緒だ。
俺はくそ野郎だ。そう見たかっただけなんだ。
また、過ちを犯すところだった。
水元「なんで止めたんだ。あんな奴、居なくなってもいいだろうが!!」
火火野「まぁな。少なくともこの職場には良いことしかない。」
水元「だろうが!!」
火火野「だが、お前が居なくなるのは良くない。」
ハッとした表情をする。
が、また、混沌とした表情に戻る。
色は相変わらず水元から繋がって空間に浮かんでいる。
火火野「もう、自分じゃ止まれないんだろ。だから、止めてやる。」
水元「…うぉおぉおおお!!」
…
何も起こらない。
水元の顔が驚きに変わっている。
水元「なん、なんで水がでない?…火火野さん、あんた何をした?」
火火野「言っただろう、止めてやると。さぁ、どんどん来いよ。」
水元は訳が分からない。という感じだが、自分では水を出そうと必死になっているのが”見える”。
やっぱり、推測は合っているな。と思いながら、色の付いている部分に見えない火を置いていく。
そう、水が発生する前に、蒸発させているのだ。
水元「…なんだ…なんか…」
火火野「疲れるだろ。お前、能力が使えるようになってどのくらいだ?」
水元「え…ぁ」
ドサッ
水元が倒れた。能力の使い過ぎ…だけじゃない。過労やストレスもあっただろう。
何とか、無傷で制することができた。
が、、、どうしよう。この状況…やりすぎたな。
1フロア水浸し、水元は水を使って春日をKO。俺は春日を片手で持ち上げて上司に押し付けた。
火火野「マジ、どうしよう。」
途方に暮れかけた時。
ガッシャーン!
窓ガラスが砕け散る。外から内に、だ。
ここは10階だぞ。
??「ハッハッハー!本当にいたぜぇぇ!!しかも”アイツ等”まだ来てねーやぁ。」
??「そうですね。これは僥倖。さっさと連れていきましょう。」
窓ガラスから入ってきたのは2人組の男。
スカジャンを着たヤンキー風と白いYシャツを着ている真面目系。
火火野「お前ら、”良いもん”ではなさそうだな。目的は?」
スカジャン「ハッ!お前ができるのは答えることだけだぁ!俺らに着いてくるか、死ぬかぁ。」
Yシャツ「やめなさい。とは言え時間がない。貴方は、能力者”だけ”の世界に興味がありますか?即答えなさい。」
あーそういう思想の奴等が集まっているのか。
火火野「無いね。能力があるだけで、俺は人だ。それ以上でも以下でもないと思ってる。」
Yシャツがふぅ。とため息をつき、スカジャンがニヤッとする。
二人が同時に喋りだす。
スカジャン「じゃぁ、し…
Yシャツ「強制的に…
ドンッドンッ
と爆発音が耳に届く前に、二人は入ってきた窓から吹っ飛ばされて外に出た。
二人は一瞬何が起こったか理解できなかった。
スカジャン「アイツ、速すぎるぅ!!」
Yシャツ「一瞬で距離を詰めて俺達を蹴りだしたのかッ!?」
窓際に火火野が立っている。
火火野「多分だが、殺しそうとしたんだ。殺されても文句ねーだろ。」
Yシャツ「私は浮遊できる。そもそもこの程度の高さでは…」
二人の顔がギョッとする。
巨大な火球が浮かんでいる。
火火野「じゃぁな。」
徐に挙げた手を、下に降ろす。
同時に火球が落ちてくる。
ゾォワッ
その刹那、背中に悪寒?冷たい何かが走った。
誰かいる!?いや、気配も感じないし、色も見えない。
スカジャン「くそぉが!」
Yシャツ「全力で防ぎなさい!!消し炭になりますよ!!」
二人はもう地上に着地していた。
スカジャンが火、Yシャツが風の能力者か。
火と風で必死で防ごうとしている。
ジュゥゥ
スカジャン「くそあっちぃ!!」
Yシャツ「我慢と集中をしなさい!火使いだろうが!!」
もうちょい押し込んだら消してやろうか。
殺人犯になるのは、こちらも御免だ。と思った矢先、手ごたえが無くなった。
火火野「あれ?」
火球を消す。が人影は無くなっていた。
火球で色が見えなかったが、さっきの悪寒。もう一人いたんだ。
これは確信に近い推測。そのもう一人は多分、俺より強い。
…ふぅ。
さぁ、どうしよう。また、この現状の解決方法の模索が始まる。
水元はまだ起きそうにないし。
スプリンクラーは止まったが、びっしょびしょだし。
窓ガラスはド派手に割ってくれて、風がびゅーびゅー入ってくるし。
??「あ、良かった。ヤられてないですね^^」
突然、後ろから少し間の抜けた声。
ゆったりした服装の可愛らしい若い女性が立っていた。
年齢は20代前半くらい、身長は150~155ってところ。
何よりゆったりした服でも分かる…いや、これはセクハラだな。
??「あー申し遅れました。私、風嵐 雷華(カザラシ ライカ)と申します。」
本当に、何とも言えない雰囲気をまとっている。
この惨状の中で、普通に自己紹介をしている。
火火野「俺は火火野。倒れているのは水元だ。あんたらは、”アイツ等”とは違う集団か?」
風嵐「えぇ。まだ直接的に何も起こってはないですが、対立している。が正しい表現になります。」
まぁ、いきなり襲ってこない所を見ると嘘はないか。色も見えないし。
火火野「この状況をどうにかできるのか?」
風嵐「私がどうにかするというより、私の所属している機関の偉い方が何とかしてくれます。なんたって政府直轄ですから^^」
時折出るニッコリが、この惨状にいることを忘れさせそうだ。
火火野「…なんにせよ、あんた”ら”に着いていくしかなさそうだな。」
風嵐「へぇ、火使いなのに、鋭いですね。私たちは基本、2人1組で行動します。敵対された時のためにね。…おーい。」
そう言うと、フロアの空きっぱなしの扉から一人の男が入ってきた。
気づくのは当たり前だ、ずっとフロアの外から続く色が見えていたから。
風嵐から色は出ていない。ということは、もう一人は居るということ。
有事の際にはすぐ行動に移せるようにしているということだ。
少し強面の男。身長は俺より少し低いくらい。年齢は30には届いていないか。
強面「とりあえず、本部へ行こう。ここもすぐにバタバタする。詳しくは道中話す。」
イケボじゃないか。軽い声の俺には非常にうらやましい低音ボイス。
風嵐「では、急ぎましょう。」
火火野「分かった。」
俺は水元を担ごうとした。が、
風嵐「大丈夫ですよ。」
と、言った瞬間。風嵐から出た色が水元を包み、風が発生し水元の体が浮いた。
風嵐は風の能力者か。
火火野「助かる。」
風嵐がニッコリする。
強面イケボ「じゃ、行くぞ。」
こうして、会社のビルから地下駐車場に降り、黒塗りのバンに乗り込んだ。
非常階段を降りながら、腕時計を見る。さすが、防水機能付き。びしょ濡れでも動いている。
まだ、10時。
嵐のような1時間だったが、今日はまだまだ終わらない。
相変わらずテレビのニュースでは能力者関連の事件は報道されない。
でも、色の付いた景色は相も変わらず見ることがある。
能力者は存在している。ハズ…。
あと、色の範囲が広がっているみたいだから、ソイツもちゃんと成長しているんだろう。
でもその色に触れる勇気がないまま、避け続けて約3か月が経過している。
やはり、能力者を探しているのだとして、1つの”疑問”が生まれる。
今は、その疑問に対する答えは推測の域を出ない、他の能力者に合えば自ずと答えは分かるだろう。
今日は、平日でいつも通りに出社する。
色の付いた風は、駅の周りに良く配置されているが、結構隙間があるし、能力者の身体能力であれば問題なく避けることができると思う。
まぁ、色の付いた風が最寄り駅に配置されたことは、3か月で1度しかないし、かなり前だったので、隙間も広かった。
今は、電車からみても密度が高まっているし、確実に避けれるかと言うと、難しいかもしれない。
が、俺の”疑問”に対する推測は、多分的を得ている。
と、考えている内に会社に着いた。
もう考え事をしようがしていまいが、練習に支障はないレベルに至っている。
この時はまだ、”今日”あんな事が起こるなんて思ってもみなかった。
青天の霹靂って、こういうことなんだな。
着いてからはいつものルーティン。
休憩所でコーヒーを買い、水元が声をかけてくる。
・・・
声をかけてこない?
振り向いても水元が居ない。
おかしいと思い、水元の席に行ってみる。
そこにはパソコンに向かって仕事を始めている水元の姿があった。
火火野「おはよう。一体、何時からいるんだよ?」
水元「…おはようっす。いや、昨日ちょっと寝れなくて、いつも通りの”押し付け”もあったんで早く出社したんです。」
火火野「…そうか。なんか手伝おうか?」
水元「いや、もう目途ついてるんで、大丈夫っすよ。」
分かったと頷いて、自席に向かう。
9時に始業し、1時間がたった頃。
ある女性の声が聞こえてくる。
??「あなたが作った資料、誤字があったじゃない!提出する私が恥を掻くんだから、本当にやめて!」
まぁ、これも予定調和。いつもの光景だ。
この女性は、『春日 御局(カスガ ミキ)』。びっくりする名前だが、名は体を表すとはこのことだ。
水元は入社してから、ずっと、ずーっと仕事を押し付けられていて、春日は定時退社、水元はご存知の通り深夜残業。仕事自体は、無難にこなしてしまうから、それが常態化してしまっている。
俺たちは、上司の『上司 担(カミツカサ ユタカ)』に何度か相談はしたものの、動いてくれているのかどうなのか、春日の勤務態度は変わることはなかった。
春日が質が悪いのは、必ず”いちゃもん”を付けてくる。
今回の誤字はまだ良い方で、難しい漢字(鑑みて、齟齬など)を使われたから読めなかった。資料が簡単じゃないから説明が伝わらなかった(自分が作った資料じゃないから説明できないだけ)。など、目を覆いたくなるひどさだ。
水元はよく耐えている。
その時だ。
バッシャーン!
??「ぎゃぁ!!」
ドサッ
という水が弾ける音と何かうめき声と倒れる音がした。
水元「てめぇ!毎度毎度、調子に乗ってんじゃねーぞ!この無能が!!」
ハッキリ見えている。
水元から倒れている春日の上に伸びている色が。
水元が能力者!?いつから!?など様々な疑問が頭によぎったが、先にやるべきことがあった。
ジリリリリ!!!
けたたましい非常ベルの音が、騒乱を掻き消す。
「10階フロアで、非常ベルが押されました。慌てることなく訓練通りに避難してください。これは訓練ではありません。繰り返します。避難してください。これは訓練ではありません。」
すぐに避難を告げる音声。
水元と春日のやり取りで騒然としていたフロアが、ザワザワしながら各々に避難を始めようとする。
ブシャー!
と、スプリンクラーも作動し、色々なところから悲鳴や指示を出していたりする声が聞こえる。
水元は突然のことにきょろきょろしている。
色は、一旦見えなくなった。
フロアの100台以上あるパソコン達も水浸し。全部廃棄だろう。
まぁ、シンクライアントだからデータは大丈夫か。
春日の元に行き、あたふたしている上司に背負わせる。
普通の女性より大柄な春日も、今の俺にかかれば軽いものだ。
火火野「春日さんをお願いします。」
上司「あぁ・・・分かった・・・お、おも・・・ぃ。」
そのくらい我慢しろ。今回の件の責任はお前の怠慢にもある。
という内の声が外に出そうだった。
ゆっくり水元を見据える。
水元「火火野さん。あんたの仕業ですか?」
火火野「あぁ。」
水元の顔が見たことない形をしている。
怒り、哀しみ。びしょびしょに濡れたその顔に、今まで溜めていた負の感情があふれ出ている。
水元の周りに色も付き始めている。
水元「あ、あんたは知っているだろう!…あんたは俺の味方だろう!!」
火火野「あぁ…俺はお前の味方だ。だから、止めてやるよ。」
この件の責任は俺にもある。根本的な対処を他人に押し付けて、水元の我慢をずっと見ないふりして先送りしていた。
限界が近い、いや、とっくに過ぎているのはもう分かってたのに。
まだ、大丈夫、今日もいつもと一緒だ。
俺はくそ野郎だ。そう見たかっただけなんだ。
また、過ちを犯すところだった。
水元「なんで止めたんだ。あんな奴、居なくなってもいいだろうが!!」
火火野「まぁな。少なくともこの職場には良いことしかない。」
水元「だろうが!!」
火火野「だが、お前が居なくなるのは良くない。」
ハッとした表情をする。
が、また、混沌とした表情に戻る。
色は相変わらず水元から繋がって空間に浮かんでいる。
火火野「もう、自分じゃ止まれないんだろ。だから、止めてやる。」
水元「…うぉおぉおおお!!」
…
何も起こらない。
水元の顔が驚きに変わっている。
水元「なん、なんで水がでない?…火火野さん、あんた何をした?」
火火野「言っただろう、止めてやると。さぁ、どんどん来いよ。」
水元は訳が分からない。という感じだが、自分では水を出そうと必死になっているのが”見える”。
やっぱり、推測は合っているな。と思いながら、色の付いている部分に見えない火を置いていく。
そう、水が発生する前に、蒸発させているのだ。
水元「…なんだ…なんか…」
火火野「疲れるだろ。お前、能力が使えるようになってどのくらいだ?」
水元「え…ぁ」
ドサッ
水元が倒れた。能力の使い過ぎ…だけじゃない。過労やストレスもあっただろう。
何とか、無傷で制することができた。
が、、、どうしよう。この状況…やりすぎたな。
1フロア水浸し、水元は水を使って春日をKO。俺は春日を片手で持ち上げて上司に押し付けた。
火火野「マジ、どうしよう。」
途方に暮れかけた時。
ガッシャーン!
窓ガラスが砕け散る。外から内に、だ。
ここは10階だぞ。
??「ハッハッハー!本当にいたぜぇぇ!!しかも”アイツ等”まだ来てねーやぁ。」
??「そうですね。これは僥倖。さっさと連れていきましょう。」
窓ガラスから入ってきたのは2人組の男。
スカジャンを着たヤンキー風と白いYシャツを着ている真面目系。
火火野「お前ら、”良いもん”ではなさそうだな。目的は?」
スカジャン「ハッ!お前ができるのは答えることだけだぁ!俺らに着いてくるか、死ぬかぁ。」
Yシャツ「やめなさい。とは言え時間がない。貴方は、能力者”だけ”の世界に興味がありますか?即答えなさい。」
あーそういう思想の奴等が集まっているのか。
火火野「無いね。能力があるだけで、俺は人だ。それ以上でも以下でもないと思ってる。」
Yシャツがふぅ。とため息をつき、スカジャンがニヤッとする。
二人が同時に喋りだす。
スカジャン「じゃぁ、し…
Yシャツ「強制的に…
ドンッドンッ
と爆発音が耳に届く前に、二人は入ってきた窓から吹っ飛ばされて外に出た。
二人は一瞬何が起こったか理解できなかった。
スカジャン「アイツ、速すぎるぅ!!」
Yシャツ「一瞬で距離を詰めて俺達を蹴りだしたのかッ!?」
窓際に火火野が立っている。
火火野「多分だが、殺しそうとしたんだ。殺されても文句ねーだろ。」
Yシャツ「私は浮遊できる。そもそもこの程度の高さでは…」
二人の顔がギョッとする。
巨大な火球が浮かんでいる。
火火野「じゃぁな。」
徐に挙げた手を、下に降ろす。
同時に火球が落ちてくる。
ゾォワッ
その刹那、背中に悪寒?冷たい何かが走った。
誰かいる!?いや、気配も感じないし、色も見えない。
スカジャン「くそぉが!」
Yシャツ「全力で防ぎなさい!!消し炭になりますよ!!」
二人はもう地上に着地していた。
スカジャンが火、Yシャツが風の能力者か。
火と風で必死で防ごうとしている。
ジュゥゥ
スカジャン「くそあっちぃ!!」
Yシャツ「我慢と集中をしなさい!火使いだろうが!!」
もうちょい押し込んだら消してやろうか。
殺人犯になるのは、こちらも御免だ。と思った矢先、手ごたえが無くなった。
火火野「あれ?」
火球を消す。が人影は無くなっていた。
火球で色が見えなかったが、さっきの悪寒。もう一人いたんだ。
これは確信に近い推測。そのもう一人は多分、俺より強い。
…ふぅ。
さぁ、どうしよう。また、この現状の解決方法の模索が始まる。
水元はまだ起きそうにないし。
スプリンクラーは止まったが、びっしょびしょだし。
窓ガラスはド派手に割ってくれて、風がびゅーびゅー入ってくるし。
??「あ、良かった。ヤられてないですね^^」
突然、後ろから少し間の抜けた声。
ゆったりした服装の可愛らしい若い女性が立っていた。
年齢は20代前半くらい、身長は150~155ってところ。
何よりゆったりした服でも分かる…いや、これはセクハラだな。
??「あー申し遅れました。私、風嵐 雷華(カザラシ ライカ)と申します。」
本当に、何とも言えない雰囲気をまとっている。
この惨状の中で、普通に自己紹介をしている。
火火野「俺は火火野。倒れているのは水元だ。あんたらは、”アイツ等”とは違う集団か?」
風嵐「えぇ。まだ直接的に何も起こってはないですが、対立している。が正しい表現になります。」
まぁ、いきなり襲ってこない所を見ると嘘はないか。色も見えないし。
火火野「この状況をどうにかできるのか?」
風嵐「私がどうにかするというより、私の所属している機関の偉い方が何とかしてくれます。なんたって政府直轄ですから^^」
時折出るニッコリが、この惨状にいることを忘れさせそうだ。
火火野「…なんにせよ、あんた”ら”に着いていくしかなさそうだな。」
風嵐「へぇ、火使いなのに、鋭いですね。私たちは基本、2人1組で行動します。敵対された時のためにね。…おーい。」
そう言うと、フロアの空きっぱなしの扉から一人の男が入ってきた。
気づくのは当たり前だ、ずっとフロアの外から続く色が見えていたから。
風嵐から色は出ていない。ということは、もう一人は居るということ。
有事の際にはすぐ行動に移せるようにしているということだ。
少し強面の男。身長は俺より少し低いくらい。年齢は30には届いていないか。
強面「とりあえず、本部へ行こう。ここもすぐにバタバタする。詳しくは道中話す。」
イケボじゃないか。軽い声の俺には非常にうらやましい低音ボイス。
風嵐「では、急ぎましょう。」
火火野「分かった。」
俺は水元を担ごうとした。が、
風嵐「大丈夫ですよ。」
と、言った瞬間。風嵐から出た色が水元を包み、風が発生し水元の体が浮いた。
風嵐は風の能力者か。
火火野「助かる。」
風嵐がニッコリする。
強面イケボ「じゃ、行くぞ。」
こうして、会社のビルから地下駐車場に降り、黒塗りのバンに乗り込んだ。
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まだ、10時。
嵐のような1時間だったが、今日はまだまだ終わらない。
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※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。
※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載)
※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
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