突然能力に目覚めた男の730日

こうめい

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3章 最強主人公

476日目~お汁粉とお汁粉の間で~

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今日は休養日、明日からお汁粉も2回戦以降が開始される。

水元は元気で、休養日でも練習をしていた。励まそうと思っていたが、めげている訳でもなかった。次は初勝利を!と息巻いていた。
俺に負けた垂水も回復したようで、朝から俺を訪ねてきた。

垂水「火火野さん、色々ありがとうございました。アイツ、幹人もお礼を言っていました。」
火火野「あぁ。まぁ、土田の件は何とかしとかないとダメだと思ったからな。それより、体調は大丈夫なのか?」
垂水「えぇ。ご経験ないですか?力の使い過ぎでぶっ倒れた事。」

確かに意識を失う程に能力を使っても、次の日にはなんとか動けるようにはなっていた。
もう、はるか昔のような気がする。

火火野「あー確かに。動けるようにはなってたな。」
垂水「それより、何であんなに強いんですか!?蛇は結構、自信あったんですけど。」

まぁ、年季が違うという話をしようと思った時。
もう一名、招かれざるお客様が突撃してくる。

夢野「グッモーニン!!昨日のお礼持ってきたよー。」

えーと、今午前8時。
持ってきてくれたお礼は、ケーキ、18cmのホールケーキ。生クリームとイチゴがたっぷり。

夢野「ケーキ屋さんに昨日の内に、無理言って作ってもらってたのー。あれー垂水君も居るじゃん。ちょうどいいわ!一緒に食べましょう!」

垂水の顔が引きつる。
流石に朝から1ホール食えない。それどころか、朝ごはん食べたばっかりだよ。

勝手に部屋に上がり、テキパキとケーキをカッティング。
勝手に出したお皿に盛り付け、フォークを添えてテーブルに並べる。

夢野「コーヒーはないの?」
火火野「少し待ってください。」

IHのコンロはあるが、自分の能力でお湯を沸かした方が早い。
インスタントコーヒーを作り、テーブルに並べる。

火火野「砂糖、ミルクはご自分でどうぞ。」
夢野「さすが1人暮らしに慣れてるわねー。ちゃっちゃと作れるもんね。」
火火野「褒めてるのか、けなしてるのか…」

垂水は置いてけぼりな感じだ。

夢野「じゃ、食べながら聞かせて。さっきの続き。」
火火野「?」
夢野「ほらー垂水君が聞いたじゃない。何でそんなに強いのか。どうやって強くなったの?」
火火野「あーそれね。垂水には全く参考にならないと思いますけど。」
垂水「いや、是非聞きたいですね。」

キラキラした目でこっちを見てくる。
おいおい、お前はぶっ潰してやる!!って言ってただろうが。

火火野「そもそも、自分は長い時間をかけて、一つづつ出来ることを増やしていっただけです。」
夢野「そういえば、能力に目覚めたのいつなの?」
火火野「もう1年以上前になりますね。」
夢野「えっ…」

夢野の顔が変わる。

夢野「父と同じくらいの時期…始まりの能力者…」

始まりの能力者?

夢野「いや、忘れて。特に意味はないから。で?」

いや、めっちゃ気になるけど。

火火野「いや、射程を伸ばしたり、火を精密に操る練習をしたり。」
垂水「どこで、どうやってたんですか?」
火火野「家と通勤途中。」
垂水「通勤途中!すげぇ!!風嵐さんに気づかれないで練習するなんて!詠唱はどれくらいで閃いたんですか?」
火火野「…は…半年…」
垂水「え…」
夢野「おっそw」
垂水「他の1位の人たちに比べてですよね!?」

少し引きつりながら、垂水がフォローしてくれている。

火火野「あー、1か月とかって言ってたな。」
垂水「でも、1人で良くモチベーション持ちましたね。」
火火野「あーキツかった時もあったけど、日進月歩、レベルアップも感じてたからな。」
垂水「努力は必ず報われるって奴ですか。」

夢野もウンウンしている。

火火野「…なぁ、垂水。お前の努力は知っている。それで里水に近づけたか?」
垂水「えっ?いきなり何です??」
火火野「努力すれば必ず報われるなんてのは、嘘っぱちだってことだよ。」

垂水は目をパチクリしている。

火火野「甲子園で優勝している球児より、負けている球児の方がはるかに多い。それどころか、どんなに努力してもレギュラーにすらなれない球児がどんだけいる。」

俺は、置いてきぼり感のある2人を置いてけぼりにして続ける。

火火野「”それ”が本当なら、この世はオリンピックの金メダリストだらけだろ?…どんだけ努力しても芽が出ない人なんて山ほどいるし、本当の意味で死ぬほど努力しても死んでしまう病気の人もたくさんいる。」
垂水「それは…でも…」

垂水を遮り、俺は続ける。

火火野「でもな、努力している奴だけが報われるかもしれないんだ。それだけは間違いない。無意味な努力なんて無いと俺は思いたいよ。だから頑張れたんだ。」
夢野「素晴らしい気概ね。」
火火野「そんなもんでもないですよ。ただ、俺も”男の子”だっただけです。」
垂水「あー分かります!ワクワクしますよね。無駄にw」

俺は頷いた。

火火野「さっき言ったように、この世は無情で非情だ。どうやっても覆せないものもある。でも、お前が努力して強くなれば、必ずこの組織の助けになるだろ。」
垂水「まぁ、いつかはあなたも超えて見せますがね。」
火火野「やってみろよw」
夢野「ウンウン。そういえば、昨日の首尾はどうだったの?」
火火野「あー報告忘れてましたね。駆に任せましたよ。後は青天か嵐か…どちらにせよ、抜ければ晴れ晴れするでしょう。」

垂水「…なんの話ですか…」
夢野「うん?まぁ、明日になれば分かるわよ。」
火火野「果報は寝て待て。」
垂水「気になって寝れねー。」

のような、やり取りで一日が始まり、朝のケーキが胃の中でずっと存在感を発揮し続け、のんびりした一日が終わっていく。

でも、次の日に全てを変える決意を固めていたのは、駆だけではなかった。
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