箱庭の番人

福の島

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人間の王

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『~♪~…♪』

俺が森の番人になってもう1ヶ月だろうか、限りなく平和だし、順調だ。

…だがそれでも気になる事が起きていた。
ココ、水の森がある水の国と火の森がある火の国で戦争が起きた。
そして森は国の象徴…その為入口にある、だから外が騒がしいのだ。

結界が貼ってあるから中に影響はない。だが人間の祈りが無い分、精霊達は『悲しそう』だ。

『~♪…』

エミが教えてくれた事だが、俺の音は癒しの力があるらしい、だからこうして死にそうな人間を教会に運び、音を届けている。

俺の声で生きる人間が1人でも居るならばこの教会の意味もあるだろう。

俺の姿は見える、だからエミに貰ったマントを付けた。前の精霊が付けてたものらしい、ここにはそういう品も残っていたのか。

『~♪……起きたか…』
「………ぉ…俺…生きて…」
「…お前怪我…俺、治した…気おつけて…帰れ」

人間の言葉には慣れない、声を使うのが難しいのだ。

「……キミ…名前は?」
「…?」
「名前…教えて?」

俺の名前を聞いてどうするのか…

「ルーカス」
「…ルーカス……綺麗…」
「…は?」

未だ俺の膝の上にいる男の頭がグンっと上がり頭がぶつかりそうになる。
金髪に赤い目の男はなぜか分からないが「ごめん!」と言うと足早に去ってしまった。

『なんだったのだろう…』

まぁ良いかと立ち上がり、起き上がっては居ないけどすぅすぅと眠りに落ちている人間を教会の外へ運ぶ。
力は使うが魔法を使えば容易いのだ。

『貴方が新しい水守ですか?』
『…!何故人間が俺らの言葉を使える…??』

振り返って言葉を失った、長い銀の髪に水面のような目の俺より背が高く若い男。
その男の持つ俺と同じ水面のような目が俺のしるたった1人の母にまるでそっくりだったのだ。

『…な…なんで…』
『はじめまして、だね…兄上…』

嘘だ…俺は一人っ子だったはず…弟なんて…いるはずが無い…

『私は、水の国第4王子のルノワール・ベネット、ゆくゆく私はこの国の王になる』

それは分かる…この男程水に愛される人間はこの国に居ないだろう。
人間界は精霊界同様、目の色や髪の色に属性が出る。
俺の場合目に水の色が出てる為水属性。
属性も半分遺伝だから水の国には水属性の者が多い。

そしてそれぞれの国ではその属性が大きく出ている者が王となるのだ。

『何故…俺の所に来た…兄とはどういう意味だ…』
『そんなに警戒しないで欲しい…私はただ貴方に会いに来たんだ。本当は弟などと名乗る資格はない…けれども…貴方はとても父上に似ている…。』

父上に…人間の王に…俺が似ている…?
俺は…王の子供なのか…?…
そんなはず…俺の父となっている人間は母と処刑されたはずだ…。

『それでも…美しさと雰囲気…立ち振る舞いはエリア様に似ている…』
『エリア…?何故母の名前を…母は生きているのか…?』

『…今日はここまでにするよ…麗しき水の番人…またここへ来る。父を連れて…。』

そう言い残し去っていった男の影を見送る。
濃い1日だった。
だけど…俺の止まっていた時間が動き出したような…そんな感覚がする。
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