【転生したら…イヌなんかいっ!?】 ~あぁ、犬の生にも山谷あり~

べんがら

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序章

第一話:いきなり転生すんのかいっ!?

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「握り飯が食いてぇなぁ…」

「オレ、コンビニで買ってくる!」
「急いでねッ」
「おじいちゃん!しっかりしてッ!!」
 俺の呟きに周りのみんなが反応する。

 ここはどうやら病院の一室らしい。
 というか、自分のことなのに何処か他人事のように感じている。
 死ぬということは、こういうことなのだろうか?

「じいちゃん、買ってきたよッ!」
 孫の一人が扉を蹴破る勢いで駆け込んできた。
 …病院では静かにしなさい。

「さぁ、おじいちゃん…」
 口元に何かが触れる感触があった。
 病気と鼻につけた呼吸器のせいで、匂いはほとんどわからなくなっていたが、それでもかすかに磯の香りがする。
 口を開けると、遠慮がちに差し出されたソレをゆっくりと噛みしめた。
「あぁ…やっぱり、うめぇなぁ…」
 パリッとした海苔の触感と、塩味の効いた米の旨味…何年も口にできなかった、握り飯であった。
 たとえコンビニのおにぎりであっても、何度も夢見た懐かしい味わいだ。
 じっくりと咀嚼して、その味を堪能し飲み込んだ。

「願わくば…来世でも人間として生まれてきたい…なぁ…」
「おじいちゃん…おじいちゃんッ!?」
 周りで家族がザワつく中、俺の意識は暗闇に沈んでいった…。

 ………
 ……
 …

 真っ白な空間…。
 なぁ~んにもない、ひたすらだだっ広~い場所。
 研究室や病室のような無機質な感じではなく、どちらかといえば雲の上みたいな…。
「そう、例えるなら、天竺!!」
 《違いますー!!》
 盛大にずっこける気配と、若干のタイムラグののちにツッコミの声が頭の中で響いた。
「…天国?」
 《ピンポンピンポンピンポーン!大正~解ッ!!》
 《モォーなんで三蔵法師になるんですかぁ!生憎とここには、サルもカッパもブタもいませんよぉ。どうせなら、イヌのいる桃太郎にでもしてくださいよ…》
「じゃあ、ここは鬼ヶ島?」
 《ブッブー!違いますぅ、ぜんっぜん違いますー!!》
「んじゃあ、ここは何処なんだよ」
 《むふぅ、知りたいですか?》
 ………
 ……
 …
 ウザいな…。

「チェンジで」
 《ち、ちょっと待ってくださいよぉー!何でなんですかぁ!?》
「うるせぇよ!めんどくせぇな…店員さ~ん、他の娘呼んでぇ~!」
 《ちょ、やめてくださいよー!営業妨害じゃないですかッ!?》
 《だいたい何ですか、チェンジって!?ひとをキャバ嬢みたいに!ここはエッチなお店じゃないんですよ!!》
「その割には、ずいぶん詳しいんだな?しかも、営業妨害って…」
 《いーえ、知りませんッ!興味はあっても、やったことはありませんッ!!》
「興味はあるんかいッ!?」
 《…そりゃあ、年頃なんですから、エッチなことの一つや二つ、ねぇ?》
 俺のツッコミに、モジモジする気配が何処かでする。

「もういいや、それで?ここが天国ってことだとして、あんたは誰なんだ?神様か何かか?」
 《もういいんですか?もう少し弄ってくれてもいいんじゃ…》
「やっぱり、チェンジで…」
 《あぁーウソです、ウソですぅー!?》
 《…ん、うん。ええーと、ここが何処かということですが、正確には天国ではありません》
 ん?天国じゃない?
 《正しくは天界の門。まぁ、ぶっちゃけ受付みたいなものですよ》

 天界の門かぁ…
 …おや?
 ちょっと待て。
 今俺は考えただけで、声に出していないよな?
 なんで会話が成立するんだ?
 《別に、声に出さなくてもいいんですよぉ》
「なッ!?」
 なんだってー!!
 《一つのセリフを、声と思考で前後に使い分けるなんて、とっても器用ですねぇ》
「うるさい!」
 大きなお世話だ。
 《やっぱり、器用ですぅ》
 なんてことだ。
 頭の中で考えたことが全部筒抜けだなんて、それじゃあエッチなことを考えてたのもバレてんのか?
 《そこまでは分からないですよぉ。あくまでも、会話レベルの思考だけですから…》
 《っていうか、エッチなことを考えていたんですかぁ?いや~ん♡###》
 まぁ、冗談だがな。
 《ひどいですぅ》

 それで?
 《それで、とは?》
 いつまで、こんな不毛な会話を続ける気だ?
 《不毛ですか?》
 当たり前だ。
 不毛以外ないだろう。
 天界の門だか何だか知らんが、死んだ人間をわざわざ留めおいて茶飲み話でもあるまい。
「…そろそろ姿くらい見せろよ」
 俺はあえて声のトーンを落として、冗談ではないのだとわかるように、わざと声に出して言った。
 《…》
 ………
「ハァ…わかりましたから、その鬼みたいな怒気を引っ込めてくださいよ」
 頭の中で響く音ではなく、キチンとした声が聞こえ、唐突にそいつは俺の目の前に降り立った。
「いくら女神だって、怖いものは怖いんですからね」
 女神?
「女神っつったか?」
「そうですよ…」
 髪をかき上げるしぐさは、その美しい顔立ちに相まって、まさしく女神を思わせた。
「それにしても…」
 俺は自称女神?のそいつを上から下までじっくりと観察した。
「な、なんですかぁ?」
 俺の無遠慮な視線に気づき、納得のいかないような返事をする女神。
「いや…エッロい身体してんなぁって」
「なぁ!?」
「そういうことは、思ってても言わないもんじゃないんですかッ!?」
 彼女を見て最初に思った感想が、どストレートに出ちまった。
 でも、それは仕方がない。
 本当に、エロい身体をしているのだ。
「いやまぁ、言わなくても解っちまうもんなぁ…」
「表層の会話レベルだって言ったじゃないですかぁ~もぉ…」
 自称女神は、ムッチムチの身体をくねらせて、必死になってあちこちを隠そうとするが、それがまた、たまらなく煽情的だった。
 一般男性諸君がそうであるように、俺もまたスケベ紳士なのだよ。
 好みによるとは思うが、彼女のむっちりと肉の詰まった胸・尻・太ももが、俺の好みに刺さるわけだ。

「うむ。たまらんなぁ」
「あんまり見ちゃ、ダメです…」
 あぁ、極楽浄土とはまさしくこのこと。
 久しく忘れていた男の象徴がたぎってくるのがわかる。
「ハァ、ハァ」
「…えっと、目が怖いです、よ?」
 何というか、抑えられないほどの衝動に、我ながら驚かされる。
 まるで、十代の頃に戻ったかのような、狂おしいまでの性衝動だ。
 俺のいちもつは、今や痛いほどにいきり勃っていた。
 毛深くて長い竿から黒々とした長大な先端が、ぬらぬらと突き出しているのを見て、我がものながら、なんてエグイ代物だと思ってしまう。
 …
 ん?
 ちょっと待て。
 竿が毛深い?玉じゃなくて?
 長大な先端?亀頭は長くないよね?
 …
 ん?
 もう一回、確認してみようか?
 よくよく見ると、竿だけじゃなくて腹も毛で覆われてるぞ?
 というより、全体的に毛むくじゃらな感じ?
 …
 なんだか嫌な予感がするんだが?
 昔、こんな生き物を飼ってた気がする…。
 …
「なぁ、鏡って無いか?」
「ありますよ。出しましょうか?」

 ― ポウン ―

 間の抜けた音と共に煙が立ち上り、縦に長い楕円形の鏡が現れる。
 俺は鏡に近づくと、自分の姿を確認した。
 …
 鼻筋はすっきりとして、涼やかで知性を感じる目。
 ニヒルな口元からのぞく、ワイルドな犬歯と長い舌。
 …長い舌?
 たてがみを彷彿とさせる、首周りから胸元にかけてのフッサフサの毛並み…。
 ………
 ……
 …
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