天上のラストルーム ~最弱固有能力でのんびりと無双します~

渡琉兎

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第一章:天上のラストルーム

第7話:一階層

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 アリーナからは様々な情報を得ることができた。
 最初はバベルについてだ。
 天上が何階層なのかはいまだ判明していないのだが、現在解放されている階層は三〇階層までで、そのうち二七階層までは攻略が進んでいること。
 そして、アルストの装備であれば一階層のボスならばソロで攻略もできるだろうと言われたのだ。

 ただ、気を付けるべきは他のプレイヤーとかち合った時だという。
 ボスモンスターは決まったフロアから移動することはないものの、一度倒されてしまうと次に出現するまでインターバルが設けられる。
 この時間もランダムで、最短が五分、最長で一時間ポップしなかったと確認されているようだ。
 そして、ボスモンスターは取り合いになってしまうことが多い。
 通常のモンスターに比べてドロップアイテムが上位品であることが多いのが一番の理由である。
 現時点で一階層でそのようなことは起きないだろうが、今後上層へ向かうならば注意するようにと言われていた。

「まあ、俺が上層に行くのなんてまだまだ先だろうな」

 始めたばかりの初心者であるアルストだ。まだ一階層すら攻略していないのだから、忠告は頭の片隅に置いておくことにした。

 ログアウトするにはまだ時間がある。
 特にやることもなく、アーカイブで暇をもて余すのも勿体ないと考えたのたアルストは再び一階層へ向かうことにした。
 初心者の剣でも一撃で倒すことができたのだから、アルスター3ならばオーバーキルも甚だしいのではないか。
 そう思いながら、到着早々に現れたベビーパンサー目掛けてアルスター3を振り下ろす。

『ギニャ!』

 当然ながら一撃で光の粒子に変わってしまう。
 オーバーキルしたからといって何かが変わるということもなく、少し拍子抜けである。
 それでも、手に馴染むような感覚がアルスター3から感じることができたので、これが初期装備とプレイヤーが打った武器の違いなのだろう。
 よくよく考えてみると、ブリスター3に関してもそうだ。
 初心者の軽鎧と比べてみても重さが全く違っている。
 言い過ぎかもしれないが、全く重さを感じることなく動けているのだから驚きだ。

「もしかして、アリーナさんってものすごく腕の良い鍛冶師なんじゃないのか?」

 そんなことを考えながら一階層を奥へと進んでいく。
 攻略サイトを見ればマップも公開されているのだろうが、アルストはあえて自身の足でマッピングすることにした。
 その方が楽しめると判断したのもそうだが、ソロなのだから他のプレイヤーに気を使う心配もないので自由気ままに行動することにしたのだ。
 何度か行き止まりに突き当たりつつ、ようやくボスモンスターが待つボスフロア前にやってきた。

「さて、どうするべきか」

 このままぶっつけ本番で挑んで良いものか、思案どころである。
 ただマッピングするのとはことなり、ボスモンスターは強敵なのだ。
 DPデスペナルティの件もあるので、ここは慎重にいきたいところなのだが――

「……いや、ゲームを楽しむためには慎重とかいらないかな」

 実際に自分が死ぬわけではない。
 壁を斬ったりモンスターと打ち合った時に感じた痺れは本物だったし、モンスターの骨肉を断つ感覚も本物だった。ならば、痛みもそれ相応のものを感じるかもしれない。
 だけど、その醍醐味を感じずにして天上のラストルームをプレイしたと言えるのだろうか。
 アルストは、そうは思わなかった。やるからには自由気ままにとことんやってやろうと思い立った。
 ならば、行くしかないだろう。

「その前にステイタスを割り振るか」

 ここに到着するまでの間でレベルがそれぞれ6まで上がっている。都合10を割り振ることができるので、一つ試してみることにした。

「運を上げたらどうなるんだ?」

 攻略サイトでも明確な情報は載っていなかった。
 状態異常や状態低下にかかりにくくなるとか、レアモンスターに遭遇しやすくなるとか、ドロップアイテムが出やすくなるとか、そのようなことが書かれているのだがどれも信憑性には欠けるようで否定的な意見も数多くあがっている。
 最弱の固有能力を手にした時点で運がなかったと思っていたアルストは、試しに10全てを運につぎ込むことにした。

 アルスト:レベル6
 腕力:22(+7)
 耐久力:19(+8)
 魔力:15(0)
 俊敏:17(+7)
 器用:15(0)
 魅了:15(0)
 知恵:15(0)
 体力:17(+4)
 運:20(0)
 DP:0

「……まあ、何かが変わったとか分かんないよな」

 運は未確定要素の高いステイタスなので何かを自覚することは難しいだろう。
 ステイタスの割り振りを終えたアルストは、初めてのボス戦に挑むべく大きな扉を押し開けた。
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