天上のラストルーム ~最弱固有能力でのんびりと無双します~

渡琉兎

文字の大きさ
12 / 62
第一章:天上のラストルーム

第12話:忠告

しおりを挟む
 アリーナからは今ここでステイタスを割り振れと言われてしまい、アルストは仕方なく割り振ることにした。その結果――

 アルスト:レベル9
 腕力:30(+11)
 耐久力:25(+11)
 魔力:18(0)
 俊敏:24(+9)
 器用:18(0)
 魅了:18(0)
 知恵:18(0)
 体力:23(+6)
 運:20(0)
 DP:0

 本来ならステイタスをパーティ以外に見せることはほとんどないのだが、アリーナとフレンド登録しているアルストは特に気にすることなく振り分けたことを伝えるために開示した。

「ふむふむ、まさに剣術士ソードメイトってステイタスね」
「そうですね」
「ただ、魔導剣術士マジックソードを目指すならある程度は魔力にも割り振っていた方がいいかもしれないわね」
「そうですか?」

 首を傾げるアルストにアリーナが説明を始めた。

「このステイタスはアルスト君の基本ステイタスであり、転職した時も変わりません。多少は職業補正があるとしても、職業レベルは1からだからそれほど期待もできないわ。今の状態で魔導師マジシャンに転職してしまうと、レベル上げに億劫するわね」
「魔導師になってからレベル上げしたらいいんじゃないですか?」
「その頃にはアルスト君のレベルも30になっちゃってるのよ? そこから魔力を上げるとなれば、相当難儀するわよ?」

 そこまで言われてようやく納得した。
 今はまだレベルも低く簡単にレベルが上がるものの、レベルが上がれば次のレベルまでに必要な経験値が増えるのは当然のことだ。
 ソロでプレイする以上、魔導師になった時に弱いままではより難儀することになるだろう。

「……分かりました、気をつけます」
「うむ、素直でよろしい。もしパーティプレイが必要になったら声を掛けてよ。時間があれば付き合うからさ」
「えっ! でも、いいんですか?」
「こんな素晴らしい素材を預けてもらえるんだから当然よ」

 言いながらアリーナは再び【ゴルイドの剛骨】を撫でる。

「確か、アイテムのレア度って1から10までありましたけど、これはどれくらいなんですかね?」
「……それも詳細に書いてあるわよ。まあいいけど、これのレア度は7ね」
「えっ! メチャクチャ高いじゃないですか!」
「だから凄いのよ!」

 レアボスモンスターを倒した恩恵がこれなのかと、アルストは唖然としてしまう。
 ならばと一角獣ユニコーン銀角ぎんかくのレア度を確かめてみると――

「……レア度、8」
「凄いでしょ? だから本当に、ほんとーに、気をつけるのよ?」
「……はい」

 アリーナから様々な忠告を受けた後、アルストは一度ログアウトすると断りを入れて別れた。
 また何かあれば連絡してね、と言われた時は申し訳ないと思いながらも、おそらくまた連絡することになるだろうと考えてありがたくお礼を口にした。
 天上のラストルームでは現実世界の時間と同じようにゲーム内の風景が切り替わっていく。今は太陽が沈み暗くなっているので夜なのだと人目で分かる。
 メニュー画面にもデジタル時計が付いているのだが、そこを見なくても感覚的に時間が分かるのはありがたい。
 そんなことを考えながら、アルストはアリーナの武具店の前でログアウトをして現実世界に戻っていった。

 ※※※※

 HSヘッドセットを外して大きく深呼吸をする。
 矢吹《やぶき》は天上のラストルームの素晴らしさに数秒だけ呆然とし、そして余韻に浸っていた。
 ベッドから立ち上がると台所へと向かい冷えた水を一気に喉へと流し込む。
 頭の興奮に体も水分を欲していたのか、冷えた水が喉を通る感覚に驚いてしまった。

「……楽しかったな」

 そう呟くのがやっとだった。
 再び水を飲みコップを流しに置いたその手に視線を向ける。
 ゴブリンを斬ったその感触はゲーム内での感触である。脳が本当に肉と骨を斬り裂いたと錯覚させているだけなのだが――

「……でも、リアル過ぎるだろ」

 料理に使う肉を切ったことはある。
 だが、それは抵抗することのない捌かれた後の肉であり、当然ながら特に嫌悪感を覚えたこともない。
 ただ、矢吹は確実に現実世界で肉を切るよりも、ゲーム内でゴブリンを斬る方が嫌だと感じてしまったのだ。
 それほどリアルであり、多くのプレイヤーがのめり込む要素の一つなのだと実感してしまった。

「少し休んだら、またやろうかな」

 そう呟いた矢吹はお湯を沸かしながら戸棚の中からお気に入りのカップ麺を取り出す。
 しばらくしてお湯が沸くと、カップ麺に注いで暫し待つ。
 この待っている時間ももったいないと思ってしまう自分に再び驚きを感じながら、普段よりも早く晩ご飯を終わらせるとベッドへと戻りHSを装着。

「……俺も、ヤバいかも」

 矢吹は知らず知らずのうちに天上のラストルームにどっぷりとハマっていた。
 そう感じながらも、手に入れた固有能力を思い出して苦笑する。

「強くは、なれないかもな」

 ランキングとかを気にしなくても十分に楽しめる。そう自分に言い聞かせながら、矢吹は再び天上のラストルームにログインした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。

branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位> <カクヨム週間総合ランキング最高3位> <小説家になろうVRゲーム日間・週間1位> 現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。 目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。 モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。 ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。 テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。 そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が―― 「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!? 癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中! 本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ! ▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。 ▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕! カクヨムで先行配信してます!

俺の職業は【トラップ・マスター】。ダンジョンを経験値工場に作り変えたら、俺一人のせいでサーバー全体のレベルがインフレした件

夏見ナイ
SF
現実世界でシステムエンジニアとして働く神代蓮。彼が効率を求めVRMMORPG「エリュシオン・オンライン」で選んだのは、誰にも見向きもされない不遇職【トラップ・マスター】だった。 周囲の冷笑をよそに、蓮はプログラミング知識を応用してトラップを自動連携させる画期的な戦術を開発。さらに誰も見向きもしないダンジョンを丸ごと買い取り、24時間稼働の「全自動経験値工場」へと作り変えてしまう。 結果、彼のレベルと資産は異常な速度で膨れ上がり、サーバーの経済とランキングをたった一人で崩壊させた。この事態を危険視した最強ギルドは、彼のダンジョンに狙いを定める。これは、知恵と工夫で世界の常識を覆す、一人の男の伝説の始まり。

ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。 理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。 今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。 ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』 計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る! この物語はフィクションです。 ※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜

きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。 遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。 作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓―― 今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!? ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。 癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

処理中です...