11 / 62
第一章:天上のラストルーム
第11話:レアアイテムとは
しおりを挟む
アリーナは口を開いたまま固まってしまった。
どうやら、これも人前に出すのは控えた方がいい一品なのかもしれないと思い、アルストはどうしたものかと考え始めた。
「俺、将来的に魔導剣術士を目指してるんです。剣術士のレベル上げが終わったら魔術師になってこれを装備しようと思ってたんですけど……止めた方がいいですよね?」
アルストの質問にしばらく固まったままのアリーナだったが、思考がようやく現実に追いついたのか慌てて表情を繕っていた。
「……あ、あぁ、えっと、そうだね。これは魔術師レベル1が装備していていい物じゃない。下手をしたら、奪おうとする輩にPKされるかもしれない」
「あー、それは嫌ですね」
PKはMMORPGでもあまりよく思われていないのだが、楽しみ方は人それぞれであり、PKを楽しみにMMORPGをプレイしている人もいる。
そういったプレイヤーに狙われてしまえば、ログインした直後から狙われ続けてDPに追い込まれてしまい、結果ゲームを辞めてしまうプレイヤーも少なくない。
「PKを止めてほしかったらその杖を寄こせ、って言われるのよ」
「絶対に嫌です!」
「だったらしばらくはアイテムボックスの肥やしにしておくことをオススメするわ。本当にもったいないことだけどね」
「魔術師のレベルが上がってからってことですか?」
「初期職じゃダメね。最低でも発展職のカンストか、複合職じゃないと見合わないわ」
先の長い話にアルストからは自然と溜息が漏れていた。
「……ん? 待ってくださいアリーナさん。それって、アリーナさんに【ゴルイドの剛骨】を使って剣を作ってもらっても、俺は装備できないんじゃないですか?」
【ゴルイドの剛骨】もレアアイテムである。それを使った剣であれば、やはりレア武器であり一角獣の銀角と同様に狙われてしまうのではないか。
「……あー、そう言われればそうね」
「アリーナさん!」
「あはは、ごめんごめん。だけど、これはそのままじゃ使えないし、どちらにしても何かに作り替えなきゃ意味がないからさ。大丈夫、ちゃんと考えとくから」
「……そこはお願いしますけど」
他に頼れる人がいないアルストは、【ゴルイドの剛骨】をアリーナに預けることにした。
「【折れた魔剣(ディアブル)】も預けますか?」
「いえ、そっちは私とは分野が違うわ……悔しいけどね」
鍛冶師のアリーナと分野が違うと言われ、アルストは首を傾げてしまう。
「折れた系や砕けた系の素材は再生屋にいくつかの素材を持ち込んで、名前の通り武器を再生させるのよ。アイテムの詳細を見てごらん」
「詳細ですか? あぁ、これか……って、あれ? 必要素材のところが全部?になってるんですけど」
詳細画面にはアイテムの簡単な説明と、再生に必要な素材一覧が書かれているのだが、その素材が全て?になっていた。
「でしょうね。これは所有者が獲得したことのあるアイテムだった場合に表示されるんだけど、まだ獲得したことのないアイテムだった場合は今みたいに?で表示されちゃうのよ」
「……これもだいぶ先が長いってことですか」
「最悪、見つけられないかもしれないわね」
「そ、そんなにレアな素材が必要なんですか?」
見つけられなければゲーム内に存在している意味がないと思う。単純に初心者のアルストに対しての言葉だったのか気になり問い掛けてみた。
「そういうこと。私が知る限りでは、再生屋で再生された武器は二桁いってないはずだよ」
「それって、攻略組でもってことですか?」
「仰る通り。だから言ったじゃない、最悪見つけられないかもってね」
一角獣の銀角よりも、【折れた魔剣(ディアブル)】の方がアイテムボックスの肥やしになりそうだとアルストは思ってしまった。
「まあ、折れた系は気長に素材が集まるのを待つのが常識よ」
「どの素材かも分かりませんけどね」
「確かにそうだ」
笑いながらアリーナは【ゴルイドの剛骨】を撫でている。
「……アリーナさんはレアボスモンスターとの出現条件って分かりますか?」
ふと、アルストはそんなことを聞いてみた。
「知らないわね。知っていたら私だって狙って動くし、攻略組だって……って、まさかアルスト君、出現条件を――」
「違いますよ! 聞いてみただけです! ……ただ、俺がボスフロアに入る前にステイタスを振り分けたんです」
「まあ、レベルアップしてたら当然よね」
「その時に、運を上げてみたんですよ」
「…………はあ? なんで運なんか上げたのよ?」
アリーナの反応は当然だろう。アルストですら何故上げたのかと聞かれると答えに困ってしまうのだから。
「攻略サイトでは信憑性のあるないは別にして、運が絡んだ色んな事が書かれていたのでせっかくだからと上げてみたんですよ」
「いくつ使ったのよ」
「10です」
「10! それってだいぶもったいないことしてるわよ?」
「でも、そのおかげでレアボスモンスターに出会えた可能性ってないですかね?」
「ないわね」
まさかの即答にアルストは何も言い返せなかった。
「運を上げてレアボスモンスターに出会えるなら簡単すぎるもの。それって絶対に攻略組の誰かが試してるわよ。本体とソフトさえあれば一人で複数のキャラを作ることもできるんだから」
言われてみればそうだと思いアルストはがっかりしてしまった。
それと同時に、ホッともしていた。
「……15のステイタス、割り振らなくてよかった」
そんな呟きが聞こえたのか、アリーナは右手で顔を覆っていた。
どうやら、これも人前に出すのは控えた方がいい一品なのかもしれないと思い、アルストはどうしたものかと考え始めた。
「俺、将来的に魔導剣術士を目指してるんです。剣術士のレベル上げが終わったら魔術師になってこれを装備しようと思ってたんですけど……止めた方がいいですよね?」
アルストの質問にしばらく固まったままのアリーナだったが、思考がようやく現実に追いついたのか慌てて表情を繕っていた。
「……あ、あぁ、えっと、そうだね。これは魔術師レベル1が装備していていい物じゃない。下手をしたら、奪おうとする輩にPKされるかもしれない」
「あー、それは嫌ですね」
PKはMMORPGでもあまりよく思われていないのだが、楽しみ方は人それぞれであり、PKを楽しみにMMORPGをプレイしている人もいる。
そういったプレイヤーに狙われてしまえば、ログインした直後から狙われ続けてDPに追い込まれてしまい、結果ゲームを辞めてしまうプレイヤーも少なくない。
「PKを止めてほしかったらその杖を寄こせ、って言われるのよ」
「絶対に嫌です!」
「だったらしばらくはアイテムボックスの肥やしにしておくことをオススメするわ。本当にもったいないことだけどね」
「魔術師のレベルが上がってからってことですか?」
「初期職じゃダメね。最低でも発展職のカンストか、複合職じゃないと見合わないわ」
先の長い話にアルストからは自然と溜息が漏れていた。
「……ん? 待ってくださいアリーナさん。それって、アリーナさんに【ゴルイドの剛骨】を使って剣を作ってもらっても、俺は装備できないんじゃないですか?」
【ゴルイドの剛骨】もレアアイテムである。それを使った剣であれば、やはりレア武器であり一角獣の銀角と同様に狙われてしまうのではないか。
「……あー、そう言われればそうね」
「アリーナさん!」
「あはは、ごめんごめん。だけど、これはそのままじゃ使えないし、どちらにしても何かに作り替えなきゃ意味がないからさ。大丈夫、ちゃんと考えとくから」
「……そこはお願いしますけど」
他に頼れる人がいないアルストは、【ゴルイドの剛骨】をアリーナに預けることにした。
「【折れた魔剣(ディアブル)】も預けますか?」
「いえ、そっちは私とは分野が違うわ……悔しいけどね」
鍛冶師のアリーナと分野が違うと言われ、アルストは首を傾げてしまう。
「折れた系や砕けた系の素材は再生屋にいくつかの素材を持ち込んで、名前の通り武器を再生させるのよ。アイテムの詳細を見てごらん」
「詳細ですか? あぁ、これか……って、あれ? 必要素材のところが全部?になってるんですけど」
詳細画面にはアイテムの簡単な説明と、再生に必要な素材一覧が書かれているのだが、その素材が全て?になっていた。
「でしょうね。これは所有者が獲得したことのあるアイテムだった場合に表示されるんだけど、まだ獲得したことのないアイテムだった場合は今みたいに?で表示されちゃうのよ」
「……これもだいぶ先が長いってことですか」
「最悪、見つけられないかもしれないわね」
「そ、そんなにレアな素材が必要なんですか?」
見つけられなければゲーム内に存在している意味がないと思う。単純に初心者のアルストに対しての言葉だったのか気になり問い掛けてみた。
「そういうこと。私が知る限りでは、再生屋で再生された武器は二桁いってないはずだよ」
「それって、攻略組でもってことですか?」
「仰る通り。だから言ったじゃない、最悪見つけられないかもってね」
一角獣の銀角よりも、【折れた魔剣(ディアブル)】の方がアイテムボックスの肥やしになりそうだとアルストは思ってしまった。
「まあ、折れた系は気長に素材が集まるのを待つのが常識よ」
「どの素材かも分かりませんけどね」
「確かにそうだ」
笑いながらアリーナは【ゴルイドの剛骨】を撫でている。
「……アリーナさんはレアボスモンスターとの出現条件って分かりますか?」
ふと、アルストはそんなことを聞いてみた。
「知らないわね。知っていたら私だって狙って動くし、攻略組だって……って、まさかアルスト君、出現条件を――」
「違いますよ! 聞いてみただけです! ……ただ、俺がボスフロアに入る前にステイタスを振り分けたんです」
「まあ、レベルアップしてたら当然よね」
「その時に、運を上げてみたんですよ」
「…………はあ? なんで運なんか上げたのよ?」
アリーナの反応は当然だろう。アルストですら何故上げたのかと聞かれると答えに困ってしまうのだから。
「攻略サイトでは信憑性のあるないは別にして、運が絡んだ色んな事が書かれていたのでせっかくだからと上げてみたんですよ」
「いくつ使ったのよ」
「10です」
「10! それってだいぶもったいないことしてるわよ?」
「でも、そのおかげでレアボスモンスターに出会えた可能性ってないですかね?」
「ないわね」
まさかの即答にアルストは何も言い返せなかった。
「運を上げてレアボスモンスターに出会えるなら簡単すぎるもの。それって絶対に攻略組の誰かが試してるわよ。本体とソフトさえあれば一人で複数のキャラを作ることもできるんだから」
言われてみればそうだと思いアルストはがっかりしてしまった。
それと同時に、ホッともしていた。
「……15のステイタス、割り振らなくてよかった」
そんな呟きが聞こえたのか、アリーナは右手で顔を覆っていた。
10
あなたにおすすめの小説
癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。
branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位>
<カクヨム週間総合ランキング最高3位>
<小説家になろうVRゲーム日間・週間1位>
現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。
目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。
モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。
ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。
テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。
そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が――
「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!?
癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中!
本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ!
▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。
▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕!
カクヨムで先行配信してます!
俺の職業は【トラップ・マスター】。ダンジョンを経験値工場に作り変えたら、俺一人のせいでサーバー全体のレベルがインフレした件
夏見ナイ
SF
現実世界でシステムエンジニアとして働く神代蓮。彼が効率を求めVRMMORPG「エリュシオン・オンライン」で選んだのは、誰にも見向きもされない不遇職【トラップ・マスター】だった。
周囲の冷笑をよそに、蓮はプログラミング知識を応用してトラップを自動連携させる画期的な戦術を開発。さらに誰も見向きもしないダンジョンを丸ごと買い取り、24時間稼働の「全自動経験値工場」へと作り変えてしまう。
結果、彼のレベルと資産は異常な速度で膨れ上がり、サーバーの経済とランキングをたった一人で崩壊させた。この事態を危険視した最強ギルドは、彼のダンジョンに狙いを定める。これは、知恵と工夫で世界の常識を覆す、一人の男の伝説の始まり。
ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー
びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。
理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。
今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。
ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』
計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る!
この物語はフィクションです。
※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。
【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。
───────
自筆です。
アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞
勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~
名無し
ファンタジー
突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。
自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。
もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。
だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。
グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。
人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜
きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。
遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。
作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓――
今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!?
ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。
癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!
【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
────────
自筆です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる