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第一章:天上のラストルーム
第22話:見守る一階層
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一階層のボスフロアまでの道順をマッピングしているアルストの案内の下、三人はモンスターを苦にすることなく突き進み数分で大きな扉の前にやってきた。
その間でアレッサのレベルが6に上がりステイタスを割り振ってからボスフロアへと足を踏み入れる。
ボスフロアなのだが、一度ボスモンスターを倒したプレイヤーならば侵入する際に選択肢が現れる。ボスモンスターと戦うか、そのまま通過するか。
だがパーティを組みその中に階層のボスモンスターを倒していないプレイヤーがいた場合は問答無用で戦いが始まってしまう。
アリーナの武具店で宣言した通り、アルストは手を出すつもりはない。MVP賞やラストアタック賞を二人に譲るのもそうだが、経験値やGに関しての振り分けも戦いの活躍によって分けられてしまうからだ。
今回はエレナがGを貯めることが一番の目的なので、アレッサにも援護程度で攻撃を止めるよう言っている。
そして現れたボスモンスターは――武器商アスラだった。
「やっぱり、あいつは出てこないか」
ぼそりと呟いたアルスト。
最初のボスモンスターがまさかのレアボスモンスターだったので頻繁に出てくるのかと若干の期待をしていたのだが、やはりそれほど甘くはないようだ。
エレナはアリーナから購入した新装備――スピルニアを握りしめてアスラへと突っ込んで行く。
アレッサは一定の距離を取りながら回り込むようにして移動を開始。
アルストはというと入ってきた大きな扉にもたれ掛かり戦いの行方を見守っていた。
「はあっ!」
戦い方指南の中では見せていなかった近距離攻撃のスキルを発動する。
「ブレイクスピア!」
左脚を大きく踏み込みながらスピルニアの柄を肩に担ぎ溜めを作ると柄から穂先に掛けて黄色の光が浮かび上がる。
一気に振り抜かれた渾身の一撃がアスラを斬り裂くと、その体からバチバチと音が弾けて動きを鈍らせた。
「黄色ってことは、雷系のスキルかな?」
アルストの予想は正しく、ブレイクスピアには攻撃対象を麻痺させる効果が備わっている。連続してスキルを当てると麻痺効果が効きにくくなるのだが、初手であれば耐性を持たない相手をほぼ確実に麻痺させることができるので初期職が持つ近距離攻撃のスキルでは価値の高いスキルと言われていた。
麻痺になったアスラめがけてエレナはそのまま連撃を繰り出していく。
鈍くなった体で何とか反撃を繰り出そうとしたアスラが両手を上に振り上げる――そこに飛来したのはアレッサのフレイムだった。
無抵抗にフレイムが直撃したアスラの両腕からは炎が上がり苦悶の声を漏らす。
HPが半分を切ったところでアスラの両腕には大剣と大槍が顕現した。
「あの剣と槍って、半分を切ったら現れる仕様だったのか」
アルストの時にはパワーボムを発動して一気に四分の一まで減らしてしまったので基準を把握することができなかった。
そんなことを考えている間にも戦闘は推移していく。
麻痺効果が解除されたアスラが大剣と大槍を振り回してエレナを引きはがそうと試みる。
エレナも両腕から繰り出される攻撃全てを受け切ることができないと判断して一度後退、その際に間合いを見誤り大槍の一撃が左肩を斬り裂いた。
「ぐうっ!」
「エレナちゃん!」
アルストにも経験があった。
武神ゴルイドとの戦闘で受けた左腕への一撃は、本当に腕を斬られたのではないかと錯覚するほどの痛みを脳が感じていた。
エレナにもアルストが感じた傷口が焼けるような痛みが脳を刺激しているはずだ。
「こ、こいつ!」
アレッサがフレイムを三連射。そのうち二つが大剣と大槍によって防がれると一撃だけが着弾する。
先ほどまで目の前にいたエレナをターゲットにしていたアスラだったが、フレイムの一撃を受けてターゲットをアレッサへと変更、体ごとアレッサへ向き直ると一気に駆け出した。
「ひいっ!」
「アレッサ!」
痛みを堪えて駆け出したエレナだったがアスラとアレッサの間に回り込むのは間に合わない。敏捷の低いアレッサが回避するのも不可能。
このままアスラの一撃を受けてDPになる――そこへ割って入ったのはアルストだった。
振り下ろされた大剣を弾き返すと、次いで大槍による横薙ぎを受け止めて回し蹴りを腹部に埋めてアスラを後退させる。
「あとは任せましたよ!」
「すまん、助かった!」
エレナはホッとした表情をすぐに引き締め直すと、再びブレイクスピアをアスラの背中にぶつけた。
正面からの攻撃よりも背後からの攻撃の方がダメージは大きくなる。さらに麻痺などの効果も効きやすくなり、結果として二度目の麻痺が付与された。
「これで、終わりだああああああぁぁっ!」
再びのラッシュ、ラッシュ、ラッシュラッシュラッシュラッシュ!
痛みが残っている左肩を気にすることなくエレナはスピルニアを振るっていく。
距離を取ったアレッサもフレイルで攻撃をぶつけていくと、数秒後にはアスラのHPは全損して光の粒子へと変わった。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……か、勝った、のか?」
「はい。エレナさんとアレッサさんの勝ちですよ」
誰かに対しての言葉ではなかったエレナの呟きにアルストが答えを返す。
顔を上げたエレナはアルストを見た後に視線を別のところへと向ける。そこには心配そうな顔でこちらを見つめているアレッサの姿があった。
「エレナちゃん! ありがとう!」
駆け出したアレッサがエレナを抱きしめる。
エレナもやや困惑顔ではあったが、左手をアレッサの背中に回した。
「まあ、よかったのかな」
手を出してしまったものの、アレッサをDPにする理由もなかったのでよかったとアルストは思っている。
そこに響いてきたのは何度も聞いているファンファーレと電子音。
エレナがレベル8、アレッサがレベル7へと上がり、MVP賞とラストアタック賞をエレナが獲得した。
その間でアレッサのレベルが6に上がりステイタスを割り振ってからボスフロアへと足を踏み入れる。
ボスフロアなのだが、一度ボスモンスターを倒したプレイヤーならば侵入する際に選択肢が現れる。ボスモンスターと戦うか、そのまま通過するか。
だがパーティを組みその中に階層のボスモンスターを倒していないプレイヤーがいた場合は問答無用で戦いが始まってしまう。
アリーナの武具店で宣言した通り、アルストは手を出すつもりはない。MVP賞やラストアタック賞を二人に譲るのもそうだが、経験値やGに関しての振り分けも戦いの活躍によって分けられてしまうからだ。
今回はエレナがGを貯めることが一番の目的なので、アレッサにも援護程度で攻撃を止めるよう言っている。
そして現れたボスモンスターは――武器商アスラだった。
「やっぱり、あいつは出てこないか」
ぼそりと呟いたアルスト。
最初のボスモンスターがまさかのレアボスモンスターだったので頻繁に出てくるのかと若干の期待をしていたのだが、やはりそれほど甘くはないようだ。
エレナはアリーナから購入した新装備――スピルニアを握りしめてアスラへと突っ込んで行く。
アレッサは一定の距離を取りながら回り込むようにして移動を開始。
アルストはというと入ってきた大きな扉にもたれ掛かり戦いの行方を見守っていた。
「はあっ!」
戦い方指南の中では見せていなかった近距離攻撃のスキルを発動する。
「ブレイクスピア!」
左脚を大きく踏み込みながらスピルニアの柄を肩に担ぎ溜めを作ると柄から穂先に掛けて黄色の光が浮かび上がる。
一気に振り抜かれた渾身の一撃がアスラを斬り裂くと、その体からバチバチと音が弾けて動きを鈍らせた。
「黄色ってことは、雷系のスキルかな?」
アルストの予想は正しく、ブレイクスピアには攻撃対象を麻痺させる効果が備わっている。連続してスキルを当てると麻痺効果が効きにくくなるのだが、初手であれば耐性を持たない相手をほぼ確実に麻痺させることができるので初期職が持つ近距離攻撃のスキルでは価値の高いスキルと言われていた。
麻痺になったアスラめがけてエレナはそのまま連撃を繰り出していく。
鈍くなった体で何とか反撃を繰り出そうとしたアスラが両手を上に振り上げる――そこに飛来したのはアレッサのフレイムだった。
無抵抗にフレイムが直撃したアスラの両腕からは炎が上がり苦悶の声を漏らす。
HPが半分を切ったところでアスラの両腕には大剣と大槍が顕現した。
「あの剣と槍って、半分を切ったら現れる仕様だったのか」
アルストの時にはパワーボムを発動して一気に四分の一まで減らしてしまったので基準を把握することができなかった。
そんなことを考えている間にも戦闘は推移していく。
麻痺効果が解除されたアスラが大剣と大槍を振り回してエレナを引きはがそうと試みる。
エレナも両腕から繰り出される攻撃全てを受け切ることができないと判断して一度後退、その際に間合いを見誤り大槍の一撃が左肩を斬り裂いた。
「ぐうっ!」
「エレナちゃん!」
アルストにも経験があった。
武神ゴルイドとの戦闘で受けた左腕への一撃は、本当に腕を斬られたのではないかと錯覚するほどの痛みを脳が感じていた。
エレナにもアルストが感じた傷口が焼けるような痛みが脳を刺激しているはずだ。
「こ、こいつ!」
アレッサがフレイムを三連射。そのうち二つが大剣と大槍によって防がれると一撃だけが着弾する。
先ほどまで目の前にいたエレナをターゲットにしていたアスラだったが、フレイムの一撃を受けてターゲットをアレッサへと変更、体ごとアレッサへ向き直ると一気に駆け出した。
「ひいっ!」
「アレッサ!」
痛みを堪えて駆け出したエレナだったがアスラとアレッサの間に回り込むのは間に合わない。敏捷の低いアレッサが回避するのも不可能。
このままアスラの一撃を受けてDPになる――そこへ割って入ったのはアルストだった。
振り下ろされた大剣を弾き返すと、次いで大槍による横薙ぎを受け止めて回し蹴りを腹部に埋めてアスラを後退させる。
「あとは任せましたよ!」
「すまん、助かった!」
エレナはホッとした表情をすぐに引き締め直すと、再びブレイクスピアをアスラの背中にぶつけた。
正面からの攻撃よりも背後からの攻撃の方がダメージは大きくなる。さらに麻痺などの効果も効きやすくなり、結果として二度目の麻痺が付与された。
「これで、終わりだああああああぁぁっ!」
再びのラッシュ、ラッシュ、ラッシュラッシュラッシュラッシュ!
痛みが残っている左肩を気にすることなくエレナはスピルニアを振るっていく。
距離を取ったアレッサもフレイルで攻撃をぶつけていくと、数秒後にはアスラのHPは全損して光の粒子へと変わった。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……か、勝った、のか?」
「はい。エレナさんとアレッサさんの勝ちですよ」
誰かに対しての言葉ではなかったエレナの呟きにアルストが答えを返す。
顔を上げたエレナはアルストを見た後に視線を別のところへと向ける。そこには心配そうな顔でこちらを見つめているアレッサの姿があった。
「エレナちゃん! ありがとう!」
駆け出したアレッサがエレナを抱きしめる。
エレナもやや困惑顔ではあったが、左手をアレッサの背中に回した。
「まあ、よかったのかな」
手を出してしまったものの、アレッサをDPにする理由もなかったのでよかったとアルストは思っている。
そこに響いてきたのは何度も聞いているファンファーレと電子音。
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