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第一章:天上のラストルーム
第28話:二階層攻略④
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アルストは一つの覚悟を決めていた。
雷の鎧を纏うダーランダーに近接攻撃を当てるのは自爆行為である。
ならば遠距離攻撃が妥当なのだろう。逃げながらスマッシュバードを放ち続けるのが、時間は掛かったとしても正攻法なのかもしれないしれない。
だが、アルストは別の覚悟を決めていた。
「耐久力上昇1を発動。次で、決める!」
効果時間を過ぎていた耐久力上昇1を再発動したアルスト。
着目したのはダーランダーのHPだった。
六割を残していたHPが今では二割まで減っている。ということは、パワーボムとそのあとの連撃で四割を削ることができたということ。
単純計算、もう一度パワーボムを当てることができれば残りのHPを全損させることも可能なのだ。
失敗すれば麻痺状態になりDPに追い込まれることは確実だろう。
ならば、救済処置が残っている今だからこそやるべきなのだ。
成功すれば予定通り、失敗しても無敵時間で仕留めることが可能。
これほどの安全策はないだろう。
「来いよ、子犬やろう! 大爆発させてやるからよ!」
無駄な挑発だということはアルストも分かっている。今の言葉は自分を奮い立たせるための言葉なのだ。
だが、ダーランダーはその挑発の後に動き出した。
何の変哲もない突進。それでも雷の鎧を纏った今の状態では必殺につながる驚異へと変わってしまう。
そんなダーランダーを目の前にしてアルストが取った行動は――前進。
アルストとダーランダー。お互いが前進することで肉薄する速度は二倍になる。
最初に攻撃体制に入ったのはダーランダーだった。
巨大な体躯による広い間合いを活かして左前脚を振り抜く。
急停止からのバックステップで回避するが、バチバチと弾ける発光が肌を掠めて冷や汗が流れ落ちる。
ダーランダーの攻撃は単なる左前脚による一撃だ。特別な攻撃ではない。故に硬直時間など存在しない。
そのままさらに前進を開始したダーランダーは、目の前で後退を続けるアルストに苛立ちを見せていた。
四肢に力を込めてさらに加速、間合いが徐々に縮まっていく。
アルストも全力で後退するのだが限界が訪れた。
――ドンッ!
背中にぶつかった壁が無慈悲にもアルストを押し返す。
牙を煌めかせたダーランダーが笑ったように見えた。
開かれた口内から放たれるのは今まで見せてきた雷撃よりも膨大な発光を見せる雷撃。
至近距離から放たれた雷撃を交わす術はなく、麻痺とは関係なくアルストのHPを全損させるに値する一撃だっただろう。
だが、ダーランダーの誤算はアスリーライドだった。
特殊効果のストックは残り一回。攻撃のために使用するべきスプリンターをアルストはあえて回避のために使用した。
さらにもう一つの誤算。それは威力が上がった雷撃がダーランダーの視界を遮る結果になってしまった。
確実に当たったと思っただろう。仕留めたと思っただろう。その気持ちの緩みをアルストは突いたのだ。
ゲームの中のモンスターに気持ちの緩みがあるのかとアルスト自身も疑問に思っていたが、不思議とそのようなものがあると確信を持っていた。
それは天上のラストルームがあまりにもリアルを追求しているから。
事実、雷撃がアルストがいなくなった後の壁にぶつかり爆発した時のダーランダーは硬直時間とは別に動く気配を見せていない。
その様子をアルストはダーランダーの後方斜め上から見下ろしていた。
掲げられるは赤い光を纏ったアルスター3。
気配を感じ取ったのだろう、ダーランダーは慌てて動き出そうとしたのだが硬直時間が続いているので動けない。
後方からの大ダメージが確定したパワーボムが、渾身の一振りでダーランダーを斬り裂き大爆発を巻き起こした。
『グルアアアアアアアアアアァァ……ァァ……』
絶叫を上げたダーランダーの四肢から力が抜け落ち、巨体が地面に横たわる。
減少していくHPはついに無くなり、ダーランダーを光の粒子へと変えていった。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……あ、危なかった」
最終的にはダーランダーの攻撃が直撃することなく倒しきることができたので、何も知らないプレイヤーが目撃していれば簡単に倒したように見えただろう。
だが、今のアルストは麻痺状態に陥っている。さらにHPがいつの間にか減少しており、今では三割になっていた。
ダーランダーが纏っていた雷の鎧。その効果が今になってアルストを蝕んでいたのだ。
「耐久力上昇が役に立ったな。それに、あれで倒せなかったら、今は生きてるけど結局はDPだったかも」
荒れる呼吸を整えながら、アルストはダーランダーとの一戦を振り返っていた。
近距離も遠距離も攻撃手段を持っていることで一階層のアスラとは明らかに難易度は高くなっている。特に麻痺効果を持った雷撃や雷の鎧は驚異以外の何物でもなかった。
これで本当に二階層なのか。そんな疑問を抱いているとファンファーレとともに電子音が流れてきた。
『おめでとうございます。アルスト様のレベルが15に上がりました。新しいスキルを習得しました。ステイタスをご確認ください』
『おめでとうございます。剣術士のレベルが15に上がりました』
電子音を聞いて一番に感じた疑問。
「んっ? 15?」
ボスフロアに入る前のレベルは13。それがダーランダーを倒したことで2もアップしていることへの疑問だった。
そして、その疑問は次の瞬間に解消された。
『レアボスモンスター:雷獣ダーランダー討伐により、ドロップアイテムを獲得しました。MVP賞を獲得しました。ラストアタック賞を獲得しました。アイテムボックスをご確認下さい』
流れてくる電子音を耳にして、アルストは絶句していた。
雷の鎧を纏うダーランダーに近接攻撃を当てるのは自爆行為である。
ならば遠距離攻撃が妥当なのだろう。逃げながらスマッシュバードを放ち続けるのが、時間は掛かったとしても正攻法なのかもしれないしれない。
だが、アルストは別の覚悟を決めていた。
「耐久力上昇1を発動。次で、決める!」
効果時間を過ぎていた耐久力上昇1を再発動したアルスト。
着目したのはダーランダーのHPだった。
六割を残していたHPが今では二割まで減っている。ということは、パワーボムとそのあとの連撃で四割を削ることができたということ。
単純計算、もう一度パワーボムを当てることができれば残りのHPを全損させることも可能なのだ。
失敗すれば麻痺状態になりDPに追い込まれることは確実だろう。
ならば、救済処置が残っている今だからこそやるべきなのだ。
成功すれば予定通り、失敗しても無敵時間で仕留めることが可能。
これほどの安全策はないだろう。
「来いよ、子犬やろう! 大爆発させてやるからよ!」
無駄な挑発だということはアルストも分かっている。今の言葉は自分を奮い立たせるための言葉なのだ。
だが、ダーランダーはその挑発の後に動き出した。
何の変哲もない突進。それでも雷の鎧を纏った今の状態では必殺につながる驚異へと変わってしまう。
そんなダーランダーを目の前にしてアルストが取った行動は――前進。
アルストとダーランダー。お互いが前進することで肉薄する速度は二倍になる。
最初に攻撃体制に入ったのはダーランダーだった。
巨大な体躯による広い間合いを活かして左前脚を振り抜く。
急停止からのバックステップで回避するが、バチバチと弾ける発光が肌を掠めて冷や汗が流れ落ちる。
ダーランダーの攻撃は単なる左前脚による一撃だ。特別な攻撃ではない。故に硬直時間など存在しない。
そのままさらに前進を開始したダーランダーは、目の前で後退を続けるアルストに苛立ちを見せていた。
四肢に力を込めてさらに加速、間合いが徐々に縮まっていく。
アルストも全力で後退するのだが限界が訪れた。
――ドンッ!
背中にぶつかった壁が無慈悲にもアルストを押し返す。
牙を煌めかせたダーランダーが笑ったように見えた。
開かれた口内から放たれるのは今まで見せてきた雷撃よりも膨大な発光を見せる雷撃。
至近距離から放たれた雷撃を交わす術はなく、麻痺とは関係なくアルストのHPを全損させるに値する一撃だっただろう。
だが、ダーランダーの誤算はアスリーライドだった。
特殊効果のストックは残り一回。攻撃のために使用するべきスプリンターをアルストはあえて回避のために使用した。
さらにもう一つの誤算。それは威力が上がった雷撃がダーランダーの視界を遮る結果になってしまった。
確実に当たったと思っただろう。仕留めたと思っただろう。その気持ちの緩みをアルストは突いたのだ。
ゲームの中のモンスターに気持ちの緩みがあるのかとアルスト自身も疑問に思っていたが、不思議とそのようなものがあると確信を持っていた。
それは天上のラストルームがあまりにもリアルを追求しているから。
事実、雷撃がアルストがいなくなった後の壁にぶつかり爆発した時のダーランダーは硬直時間とは別に動く気配を見せていない。
その様子をアルストはダーランダーの後方斜め上から見下ろしていた。
掲げられるは赤い光を纏ったアルスター3。
気配を感じ取ったのだろう、ダーランダーは慌てて動き出そうとしたのだが硬直時間が続いているので動けない。
後方からの大ダメージが確定したパワーボムが、渾身の一振りでダーランダーを斬り裂き大爆発を巻き起こした。
『グルアアアアアアアアアアァァ……ァァ……』
絶叫を上げたダーランダーの四肢から力が抜け落ち、巨体が地面に横たわる。
減少していくHPはついに無くなり、ダーランダーを光の粒子へと変えていった。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……あ、危なかった」
最終的にはダーランダーの攻撃が直撃することなく倒しきることができたので、何も知らないプレイヤーが目撃していれば簡単に倒したように見えただろう。
だが、今のアルストは麻痺状態に陥っている。さらにHPがいつの間にか減少しており、今では三割になっていた。
ダーランダーが纏っていた雷の鎧。その効果が今になってアルストを蝕んでいたのだ。
「耐久力上昇が役に立ったな。それに、あれで倒せなかったら、今は生きてるけど結局はDPだったかも」
荒れる呼吸を整えながら、アルストはダーランダーとの一戦を振り返っていた。
近距離も遠距離も攻撃手段を持っていることで一階層のアスラとは明らかに難易度は高くなっている。特に麻痺効果を持った雷撃や雷の鎧は驚異以外の何物でもなかった。
これで本当に二階層なのか。そんな疑問を抱いているとファンファーレとともに電子音が流れてきた。
『おめでとうございます。アルスト様のレベルが15に上がりました。新しいスキルを習得しました。ステイタスをご確認ください』
『おめでとうございます。剣術士のレベルが15に上がりました』
電子音を聞いて一番に感じた疑問。
「んっ? 15?」
ボスフロアに入る前のレベルは13。それがダーランダーを倒したことで2もアップしていることへの疑問だった。
そして、その疑問は次の瞬間に解消された。
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