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第一章:天上のラストルーム
第38話:討伐クエスト②
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縦に射程が長い地割れだが、横への射程はとても短い。
その欠点を見抜いていたアルストは一撃を加えた直後にサイドステップで振り下ろしを回避するのと同時に地割れの射程外へ移動する。
そのままがら空きになった脇腹めがけて三連撃を浴びせると、今度は大きく後方へ飛び退き距離を取る。
直後にはキングベアーの剛腕による横薙ぎが先ほど立っていた場所を通り抜けて暴風かと見間違う程の風が頬を掠めていく。
冷や汗を流しながらもその場でスマッシュバードを放ち僅かではあるがHPを削りさらに前進、アスリーライドのおかげで大きく向上した俊敏を利用して一気に懐へ潜り込むと渾身の刺突で胸を貫く。
『ブフオオオオォォッ!』
「こいつ、胸部が弱点か!」
モンスターには背中からの攻撃以外にも特別な弱点を持つものもいる。
キングベアーの反応を見てHPを確認すると、スキルでもない単なる刺突で大きく削り取ることに成功していた。
「これなら――うわっ!」
両手を広げたキングベアーは抱き着くようにして腕を包み込む。
捕まればひとたまりもないと慌てて後退して回避したのだが、直後には巨体を丸めて弾丸の如く突っ込んできた。
強靭な脚力から一瞬で最高速度まで加速したキングベアーのショルダータックルがアルストに直撃した。
「がああああああっ!」
「アルストさん!」
「アルスト!」
響く二人の呼びかけを遠くに聞きながら、アルストは一度も地面に触れることなく壁に激突すると大きく陥没する。
アルストのHPは三割を切り、さらに崩れ落ちるようにして地面に横たわるとピクリとも動かない。
ログイン状態で気絶するということはあり得ない。それはHSが装着者の脳波を計測して健康状態を確認しているからだ。
だが、天上のラストルームでは痛覚もリアルに再現されている。人によっては激痛に耐えることができずに強制ログアウトになることも過去にはあった。
アルストが強制ログアウトに追い込まれたなら、二人はそのままキングベアーに成す術なく倒されてしまうだろう。
残り時間は四分。
現状を見てしまえば、今回のクエストは失敗でもいいのではないかと考えていた――一人を除いては。
「…………あー、いってぇ、マジで吐きそう」
アルスター3を杖代わりにして立ち上がったアルストは頭に手を置いて何度か左右に振り意識の覚醒を促す。
狙いを二人にしようとしていたキングベアーは、まさか立ち上がるとは思わなかったアルストに驚きを見せるとともに、脅威と感じたのか身体の向きを再びアルストへと向ける。
アルストもキングベアーを睨みつけるように見据えると左手を前に出して指をくいっと曲げて挑発。
『ブルアアアアアアアアァァッ!』
戦闘が始まってから一番の咆哮をキングベアーが吐き出すと、再び弾丸と化して突っ込んできた。
「逃げろアルスト!」
エレナがスピルニアを構えて駆け出したが間に合わない。
「アルストさん!」
アレッサのフレイムがキングベアーに着弾するものの止めることはできない。
「……なめるなよ、熊さん!」
アルスター3を肩に担いでパワーボムの予備動作に入る。
視線の先ではキングベアーの巨体が近づいてきており、視界を徐々に埋めていく。
大きく深呼吸を行い、キングベアーと壁に挟まれるだろう直前にアスリートを発動して紙一重で回避する。
壁に激突したキングベアーは一瞬だが動きを止めた。
その隙に飛び上がったアルストは背後からパワーボムを炸裂させる。
さらに駆け出していたエレナが追いつくとそのままの勢いでブレイクスピアを叩き込んだ。
『ブルオオオオォォッ!』
背後からの連撃を受けたキングベアーのHPは四割まで減少――ここで攻撃方法が変わることを予測していたアルストは賭けにでた。
「エレナさん! これから俺のHPが全損しても気にしないでください!」
「はあ! 何を言っているんだお前は!」
「残り一回の救済処置を利用して倒します!」
動きを再開させたキングベアーを見て麻痺にはなっていないことを把握したアルストは、あえて懐に潜り込み弱点である胸部めがけて連撃を叩き込む――反撃されることを覚悟して。
当然ながらキングベアーは両腕を振り上げてアルストを叩き潰そうとした。
「――サンダーボルト!」
そこに響いてきたのはアレッサの声だった。
ログインをしてからここまで、アレッサはフレイムしか魔法を使っていなかったが、実のところスキルはもう一つ所持していた。
アルストやエレナが二つのスキルを有していたように、アレッサはここで初めて二つ目のスキルであるサンダーボルトを解き放った。
振り上げた腕めがけて落雷が降り注ぐと、キングベアーのHPは三割に減少。
さらにエレナが背後から三度《みたび》ブレイクスピアを叩き込むと、サンダーボルトと相まってようやく二度目の麻痺へ追い込むことに成功する。
この機会を逃すわけにはいかないと、アルストは密着した状態からパワーボムを胸部へと炸裂させた。
『ブルオオオオォォ……ォォ……』
一気に一割まで減少したHPを見て、弱点である胸部と背後へ攻撃を集中させる。さらには魔法による遠距離攻撃を受けたキングベアーはその動きを徐々に落としていき、ついに光の粒子となって霧散していった。
キングベアーが霧散したことによりアルストとエレナは互いを見つめ合いながら、やや時間を置いて大きく息を吐き出した。
「はああああぁぁ。つ、疲れたぞ」
「本当ですね。二階層のクエストにしては、異常な強さでしたよ」
「二人とも、大丈夫?」
アレッサも合流した後に時間を確認すると、残り三秒で止まっていた。
「……これは、クエストクリアでいいんだよな?」
「そうでなければ納得できんぞ」
「ねえ、でもこれってもしかして――」
アレッサが疑問を口にしようとしたところでファンファーレが聞こえてきた。
『おめでとうございます。アルスト様のレベルが17に上がりました。新しいスキルを習得しました。ステイタスをご確認ください』
『おめでとうございます。剣術士《ソードメイト》のレベルが17に上がりました』
『クエストレアボスモンスター:剛力王キングベアー討伐により、ドロップアイテムを獲得しました。MVP賞を獲得しました。ラストアタック賞を獲得しました。アイテムボックスをご確認下さい』
最後に流れた電子音によって、アレッサが口にしようとした疑問は解決された。
その欠点を見抜いていたアルストは一撃を加えた直後にサイドステップで振り下ろしを回避するのと同時に地割れの射程外へ移動する。
そのままがら空きになった脇腹めがけて三連撃を浴びせると、今度は大きく後方へ飛び退き距離を取る。
直後にはキングベアーの剛腕による横薙ぎが先ほど立っていた場所を通り抜けて暴風かと見間違う程の風が頬を掠めていく。
冷や汗を流しながらもその場でスマッシュバードを放ち僅かではあるがHPを削りさらに前進、アスリーライドのおかげで大きく向上した俊敏を利用して一気に懐へ潜り込むと渾身の刺突で胸を貫く。
『ブフオオオオォォッ!』
「こいつ、胸部が弱点か!」
モンスターには背中からの攻撃以外にも特別な弱点を持つものもいる。
キングベアーの反応を見てHPを確認すると、スキルでもない単なる刺突で大きく削り取ることに成功していた。
「これなら――うわっ!」
両手を広げたキングベアーは抱き着くようにして腕を包み込む。
捕まればひとたまりもないと慌てて後退して回避したのだが、直後には巨体を丸めて弾丸の如く突っ込んできた。
強靭な脚力から一瞬で最高速度まで加速したキングベアーのショルダータックルがアルストに直撃した。
「がああああああっ!」
「アルストさん!」
「アルスト!」
響く二人の呼びかけを遠くに聞きながら、アルストは一度も地面に触れることなく壁に激突すると大きく陥没する。
アルストのHPは三割を切り、さらに崩れ落ちるようにして地面に横たわるとピクリとも動かない。
ログイン状態で気絶するということはあり得ない。それはHSが装着者の脳波を計測して健康状態を確認しているからだ。
だが、天上のラストルームでは痛覚もリアルに再現されている。人によっては激痛に耐えることができずに強制ログアウトになることも過去にはあった。
アルストが強制ログアウトに追い込まれたなら、二人はそのままキングベアーに成す術なく倒されてしまうだろう。
残り時間は四分。
現状を見てしまえば、今回のクエストは失敗でもいいのではないかと考えていた――一人を除いては。
「…………あー、いってぇ、マジで吐きそう」
アルスター3を杖代わりにして立ち上がったアルストは頭に手を置いて何度か左右に振り意識の覚醒を促す。
狙いを二人にしようとしていたキングベアーは、まさか立ち上がるとは思わなかったアルストに驚きを見せるとともに、脅威と感じたのか身体の向きを再びアルストへと向ける。
アルストもキングベアーを睨みつけるように見据えると左手を前に出して指をくいっと曲げて挑発。
『ブルアアアアアアアアァァッ!』
戦闘が始まってから一番の咆哮をキングベアーが吐き出すと、再び弾丸と化して突っ込んできた。
「逃げろアルスト!」
エレナがスピルニアを構えて駆け出したが間に合わない。
「アルストさん!」
アレッサのフレイムがキングベアーに着弾するものの止めることはできない。
「……なめるなよ、熊さん!」
アルスター3を肩に担いでパワーボムの予備動作に入る。
視線の先ではキングベアーの巨体が近づいてきており、視界を徐々に埋めていく。
大きく深呼吸を行い、キングベアーと壁に挟まれるだろう直前にアスリートを発動して紙一重で回避する。
壁に激突したキングベアーは一瞬だが動きを止めた。
その隙に飛び上がったアルストは背後からパワーボムを炸裂させる。
さらに駆け出していたエレナが追いつくとそのままの勢いでブレイクスピアを叩き込んだ。
『ブルオオオオォォッ!』
背後からの連撃を受けたキングベアーのHPは四割まで減少――ここで攻撃方法が変わることを予測していたアルストは賭けにでた。
「エレナさん! これから俺のHPが全損しても気にしないでください!」
「はあ! 何を言っているんだお前は!」
「残り一回の救済処置を利用して倒します!」
動きを再開させたキングベアーを見て麻痺にはなっていないことを把握したアルストは、あえて懐に潜り込み弱点である胸部めがけて連撃を叩き込む――反撃されることを覚悟して。
当然ながらキングベアーは両腕を振り上げてアルストを叩き潰そうとした。
「――サンダーボルト!」
そこに響いてきたのはアレッサの声だった。
ログインをしてからここまで、アレッサはフレイムしか魔法を使っていなかったが、実のところスキルはもう一つ所持していた。
アルストやエレナが二つのスキルを有していたように、アレッサはここで初めて二つ目のスキルであるサンダーボルトを解き放った。
振り上げた腕めがけて落雷が降り注ぐと、キングベアーのHPは三割に減少。
さらにエレナが背後から三度《みたび》ブレイクスピアを叩き込むと、サンダーボルトと相まってようやく二度目の麻痺へ追い込むことに成功する。
この機会を逃すわけにはいかないと、アルストは密着した状態からパワーボムを胸部へと炸裂させた。
『ブルオオオオォォ……ォォ……』
一気に一割まで減少したHPを見て、弱点である胸部と背後へ攻撃を集中させる。さらには魔法による遠距離攻撃を受けたキングベアーはその動きを徐々に落としていき、ついに光の粒子となって霧散していった。
キングベアーが霧散したことによりアルストとエレナは互いを見つめ合いながら、やや時間を置いて大きく息を吐き出した。
「はああああぁぁ。つ、疲れたぞ」
「本当ですね。二階層のクエストにしては、異常な強さでしたよ」
「二人とも、大丈夫?」
アレッサも合流した後に時間を確認すると、残り三秒で止まっていた。
「……これは、クエストクリアでいいんだよな?」
「そうでなければ納得できんぞ」
「ねえ、でもこれってもしかして――」
アレッサが疑問を口にしようとしたところでファンファーレが聞こえてきた。
『おめでとうございます。アルスト様のレベルが17に上がりました。新しいスキルを習得しました。ステイタスをご確認ください』
『おめでとうございます。剣術士《ソードメイト》のレベルが17に上がりました』
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