天上のラストルーム ~最弱固有能力でのんびりと無双します~

渡琉兎

文字の大きさ
39 / 62
第一章:天上のラストルーム

第39話:三回目のレアボスモンスター

しおりを挟む
 天上のラストルームを始めて二日目のアルストなのだが、この時点で三回目のレアボスモンスター討伐になってしまった。
 いくら特殊能力があるとはいえ、二日で三回の遭遇は度を超えている気がする。
 アルストが初心者ではなく攻略組であれば問題はなかっただろう。強力な装備を身につけていても怪しまれることがないからだ。
 だが、今のアルストでは装備してしまうと目立ってしまいPKプレイヤーキルの標的にされる恐れがあるため装備できず、宝の持ち腐れになってしまう。
 それはアルストだけではなくアレッサやエレナにも当てはまるのだ。

「やっぱり、レアボスモンスターだったか」
「アルストの言った通りだったな。二階層のクエストとしては確かに異常な強さだったからな」
「サンダーボルトが役に立ってよかったです」

 アレッサの発言にアルストは思い出したかのように口を開いた。

「そうですよ! サンダーボルトって、すごい魔法でしたね! どうして今まで使わなかったんですか?」

 麻痺効果を持つサンダーボルトがなければ救済処置を使用しなければ倒すことはできなかっただろう。もしかしたら時間制限に引っかかってしまい救済処置を使用しても倒せなかったか、倒せてもクエストクリアはできなかったかもしれない。
 アレッサの魔法がパーティを救ったのだ。

「連続して使える魔法ではないみたいなんです。それで、フレイムしか使えませんでした」
「そうなんですね。でも本当に助かりました。貴重な救済処置も使わずに済みましたし」
「そうだ! おいアルスト、あの行動はなんだったのだ。あんな危険な真似は止めてもらいたいぞ」

 エレナの発言を聞いて、二人が説明書を読んでいないことを今さらながら思い出した。
 アルストが初心者救済処置について説明すると、二人はぽかんとしたまま固まってしまった。

「……そ、そんなものがあるんですね」
「……三回もあるのか。だが72時間いないだと? 使わなければ勿体ないが……痛いのは嫌だなぁ」
「使わないに越してことはないですよ。俺の場合は今回みたいなイレギュラーがありましたからすでに二回も使っちゃいましたけど」
「イレギュラー……あぁ、確かにこんな奴と一人で戦うとなれば使ってしまうだろうな」
「私では一瞬で三回とも使ってしまいそうです」

 そもそもの耐久力が低いアレッサであれば地割れの一撃を受けただけで全損してしまうだろう。
 無敵時間を利用して逃げ切ることができなければ、本当に三回とも使ってしまうかもしれない。

「それよりも、せっかくですからドロップアイテムを見てみませんか?」
「おぉ! それもそうだな!」
「どんなアイテムが出るのか楽しみです!」

 アルストが手に入れてきたアイテムはレア度7やレア度8の高レアリティのアイテムばかりだった。
 それを知っている二人からすると楽しみで仕方ないのだろう。
 ただ、アイテムボックスを確認した二人の表情はあまり芳しくないように見えた。

「ど、どうしたんですか?」
「いや、高レアリティのアイテムではあるんだが……」
「アルストさんみたいに7とか8ではありませんね……」
「えっ? そうなんですか?」

 驚いたアルストは二人に許可をもらってアイテムを確認する。すると、アレッサはレア度4の装備アイテム、エレナはレア度5の素材アイテムだった。
 一方のアルストはというと――

「……レア度6と7と8ですね」

 剣術士ソードメイト専用装備の腕当【剛力の腕輪】がレア度6、素材アイテム【キングベアーの剛毛】がレア度7、そして【折れた魔杖(ディルッペン)】がレア度8。
 折れた系は今すぐにどうこうできる物ではなく、素材アイテムもアルストではどうしようもない。となると注目すべきは剛力の腕輪だろう。
 エレナがレア度5のアイテムを手に入れているので大きくレア度が高いわけではないが、それでもレア度6は破格と言えるだろう。

「やはりここでも特殊能力が関係しているんでしょうか」
「その可能性もありますが、もう一つ可能性があります」
「何かあるのか?」

 アルストしか手に入れていないものがあるのだ。

「MVP賞とラストアタック賞です」
「そういえば、今回はアルストが二つとも手に入れていたな」
「はい。討伐報酬はパーティ全員が手に入れられるので、もしかしたらMVP賞やラストアタック賞は高レアリティのアイテムが出やすいんじゃないかって思ったんです」
「うーん、だが私が一階層のボスを倒した時はそこまで高くなかったぞ?」
「それではやはり特殊能力ですか?」

 答えの見つからない迷路に入り込んでしまった三人だったが、ひとまずはアーカイブに戻ってクエスト完了を報告しようと話し合い二階層を後にした。
 下層に他のプレイヤーがいる可能性は低いもののゼロではない。
 道中ではレアボスモンスターや高レアリティドロップについての話題には触れずに進んでいく。
 ただ、三人の頭の中ではそれぞれである一定の答えは導き出していた。
 それは、アルストの特殊能力に起因するものだということ。
 そして、考えるならアリーナがいた方がいいだろう。というあまりにも身勝手な答えだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。

branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位> <カクヨム週間総合ランキング最高3位> <小説家になろうVRゲーム日間・週間1位> 現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。 目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。 モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。 ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。 テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。 そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が―― 「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!? 癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中! 本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ! ▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。 ▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕! カクヨムで先行配信してます!

俺の職業は【トラップ・マスター】。ダンジョンを経験値工場に作り変えたら、俺一人のせいでサーバー全体のレベルがインフレした件

夏見ナイ
SF
現実世界でシステムエンジニアとして働く神代蓮。彼が効率を求めVRMMORPG「エリュシオン・オンライン」で選んだのは、誰にも見向きもされない不遇職【トラップ・マスター】だった。 周囲の冷笑をよそに、蓮はプログラミング知識を応用してトラップを自動連携させる画期的な戦術を開発。さらに誰も見向きもしないダンジョンを丸ごと買い取り、24時間稼働の「全自動経験値工場」へと作り変えてしまう。 結果、彼のレベルと資産は異常な速度で膨れ上がり、サーバーの経済とランキングをたった一人で崩壊させた。この事態を危険視した最強ギルドは、彼のダンジョンに狙いを定める。これは、知恵と工夫で世界の常識を覆す、一人の男の伝説の始まり。

ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。 理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。 今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。 ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』 計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る! この物語はフィクションです。 ※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜

きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。 遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。 作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓―― 今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!? ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。 癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

処理中です...