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第一章:天上のラストルーム
第51話:ミニマムキャット討伐②
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モンスターの群れの討伐を終えた三人は、僅かな合間で休憩を取っている。
初見のモンスターが多く、気を使いながらの戦闘は体力よりも精神を削り取っていた。
そして、二人はアルストの武器について説明を求めてきた。
「いつの間に新調したのだ?」
「ログインをした時にアリーナさんが待っていてくれて、今日のイベントに間に合わせて装備を作ってくれていたんです」
「ですが、軽鎧じゃなかったですか?」
「装備を変更する前に合流して、そのままバベルに向かっていたので……このまま変更しますね」
そう言ってすぐにステイタス画面から装備変更を行ったアルスト。
ブリッシュロードはスレイフニルと同様に銀の光沢を放っており、左胸部を覆っているプレートには細やかな塔の意匠が施されている。
バベルをモチーフにしたのかとアルストは意匠を右手で撫でながら考えていた。
「……なんだか格好いいな!」
「本当ですね!」
「あ、ありがとうございます。アルスター3とブルスター3にも愛着はありますけど、背に腹は変えられませんね」
イベントで装備の温存などと言ってはいられない。
さすがにレア度7や8と言った装備は悪目立ちするので身につけられないが、ミスリルを使った装備ならアリーナもイベントに合わせてくれたので問題はないということだろう。
アルストはアリーナへの感謝を心の中で唱えて、これからの方針について相談することにした。
「おそらく、ミニマムキャットは多くのプレイヤーが移動したあちらにいると思います」
「確かマップが見れましたよね……ありました。北の方向です」
「そして、私達がいるのが真逆の南側ってことか」
アルストが装備を変更したとはいえ、熟練プレイヤーに勝てるわけではない。
南側で地道に探していき、コツコツと討伐するのが一番だろう。
「――そういえば」
「どうしたんですか?」
アルストは装備とは別にアリーナから手渡されたアイテムについて思い出した。
「アリーナさんから今回のイベントで役立つだろうって貰ったんですけど……」
「なんだこれは?」
「【ねこじゃらし】って書いてますね」
「「「……?」」」
誰もその使い方を知らないまま、ねこじゃらしが風に吹かれてゆらゆら揺れている。
しばらく何も起こらなかったのでアルストがアイテムボックスに片付けようとした時だった。
――ガサガサッ!
五メートルほど先にある草むらが揺れたのでアルストはすぐにスレイフニルを構える。
そこで見たものは――大きな瞳が愛らしい三〇センチほどの体長しかない一匹のモンスターだった。
「……か、可愛い!」
エレナが身悶えている。
「……あっ、でもこのモンスター」
アレッサが冷静に頭上の表示を指摘する。
「こいつが、ミニマムキャット?」
アルストが疑問口調で問い掛ける。
『ギャギャッ!』
そして可愛らしくない鳴き声を聞いたエレナが顔をしかめた。
「さっさと倒してくれ!」
可愛い物好きなのかな、と場違いなことを考えながら駆け出したアルストはスレイフニルを一閃、一撃でミニマムキャットを仕留めた。
すると視界の右上に【イベント討伐数(パーティ):1/-】と【イベント討伐数(個人):1/-】という二つの表示が追加されたのを確認する。
ランキングに関しては六時間ごとに更新されるので今の表示は【-】になっていた。
「い、いきなりだったなぁ」
「あれがミニマムキャットか」
「可愛かったけど、声がひどかったですね」
それぞれが感想を口にしていると、また遠くの草むらからミニマムキャットが顔を出す――その数三匹。
「いたぞ! あそこだ!」
「アルストさん! エレナちゃん!」
「アレッサさんも魔法で攻撃してくださいね!」
真っ先に駆け出したのはエレナである。
遅れてアルスト、アレッサは指示にしたがってフレイムを放つ。
アレッサの魔法は外れてしまったが、回避した先でエレナのスピルニアが扱かれて一撃で仕留める。
「こいつ、耐久力は低いぞ!」
「そうみたいですね!」
アルストもスレイフニルを横薙いでまず一匹、そのまま袈裟斬りを放ち二匹目を光の粒子に変える。
難なく仕留めたものの、いきなり現れた三匹のミニマムキャットに三人は驚いていた。
「こ、ここにも群れがいるのか?」
「ですが北の方からも討伐したー! って声が聞こえてきますよ?」
アレッサの言う通り、多くのプレイヤーから討伐報告と言わんばかりの大声が聞こえていた。
仮に南にも群れがあるとすれば、アルスト達の独壇場と言うことになる。
「だが……もういないぞ?」
エレナがスピルニアを構えながら周囲を見渡しているが、ミニマムキャットはおろか他のモンスターの影も形もない。
何が原因なのかと考えて、三人は同時に気がついた。
「「「ねこじゃらし!」」」
今はアイテムボックスに片付けたねこじゃらし。
アルストが再び手にしてしばらく風にそよがせていると――
『ギャギャ?』
「「「出たー!」」」
そこからしばらくはミニマムキャット祭りとなった。
初見のモンスターが多く、気を使いながらの戦闘は体力よりも精神を削り取っていた。
そして、二人はアルストの武器について説明を求めてきた。
「いつの間に新調したのだ?」
「ログインをした時にアリーナさんが待っていてくれて、今日のイベントに間に合わせて装備を作ってくれていたんです」
「ですが、軽鎧じゃなかったですか?」
「装備を変更する前に合流して、そのままバベルに向かっていたので……このまま変更しますね」
そう言ってすぐにステイタス画面から装備変更を行ったアルスト。
ブリッシュロードはスレイフニルと同様に銀の光沢を放っており、左胸部を覆っているプレートには細やかな塔の意匠が施されている。
バベルをモチーフにしたのかとアルストは意匠を右手で撫でながら考えていた。
「……なんだか格好いいな!」
「本当ですね!」
「あ、ありがとうございます。アルスター3とブルスター3にも愛着はありますけど、背に腹は変えられませんね」
イベントで装備の温存などと言ってはいられない。
さすがにレア度7や8と言った装備は悪目立ちするので身につけられないが、ミスリルを使った装備ならアリーナもイベントに合わせてくれたので問題はないということだろう。
アルストはアリーナへの感謝を心の中で唱えて、これからの方針について相談することにした。
「おそらく、ミニマムキャットは多くのプレイヤーが移動したあちらにいると思います」
「確かマップが見れましたよね……ありました。北の方向です」
「そして、私達がいるのが真逆の南側ってことか」
アルストが装備を変更したとはいえ、熟練プレイヤーに勝てるわけではない。
南側で地道に探していき、コツコツと討伐するのが一番だろう。
「――そういえば」
「どうしたんですか?」
アルストは装備とは別にアリーナから手渡されたアイテムについて思い出した。
「アリーナさんから今回のイベントで役立つだろうって貰ったんですけど……」
「なんだこれは?」
「【ねこじゃらし】って書いてますね」
「「「……?」」」
誰もその使い方を知らないまま、ねこじゃらしが風に吹かれてゆらゆら揺れている。
しばらく何も起こらなかったのでアルストがアイテムボックスに片付けようとした時だった。
――ガサガサッ!
五メートルほど先にある草むらが揺れたのでアルストはすぐにスレイフニルを構える。
そこで見たものは――大きな瞳が愛らしい三〇センチほどの体長しかない一匹のモンスターだった。
「……か、可愛い!」
エレナが身悶えている。
「……あっ、でもこのモンスター」
アレッサが冷静に頭上の表示を指摘する。
「こいつが、ミニマムキャット?」
アルストが疑問口調で問い掛ける。
『ギャギャッ!』
そして可愛らしくない鳴き声を聞いたエレナが顔をしかめた。
「さっさと倒してくれ!」
可愛い物好きなのかな、と場違いなことを考えながら駆け出したアルストはスレイフニルを一閃、一撃でミニマムキャットを仕留めた。
すると視界の右上に【イベント討伐数(パーティ):1/-】と【イベント討伐数(個人):1/-】という二つの表示が追加されたのを確認する。
ランキングに関しては六時間ごとに更新されるので今の表示は【-】になっていた。
「い、いきなりだったなぁ」
「あれがミニマムキャットか」
「可愛かったけど、声がひどかったですね」
それぞれが感想を口にしていると、また遠くの草むらからミニマムキャットが顔を出す――その数三匹。
「いたぞ! あそこだ!」
「アルストさん! エレナちゃん!」
「アレッサさんも魔法で攻撃してくださいね!」
真っ先に駆け出したのはエレナである。
遅れてアルスト、アレッサは指示にしたがってフレイムを放つ。
アレッサの魔法は外れてしまったが、回避した先でエレナのスピルニアが扱かれて一撃で仕留める。
「こいつ、耐久力は低いぞ!」
「そうみたいですね!」
アルストもスレイフニルを横薙いでまず一匹、そのまま袈裟斬りを放ち二匹目を光の粒子に変える。
難なく仕留めたものの、いきなり現れた三匹のミニマムキャットに三人は驚いていた。
「こ、ここにも群れがいるのか?」
「ですが北の方からも討伐したー! って声が聞こえてきますよ?」
アレッサの言う通り、多くのプレイヤーから討伐報告と言わんばかりの大声が聞こえていた。
仮に南にも群れがあるとすれば、アルスト達の独壇場と言うことになる。
「だが……もういないぞ?」
エレナがスピルニアを構えながら周囲を見渡しているが、ミニマムキャットはおろか他のモンスターの影も形もない。
何が原因なのかと考えて、三人は同時に気がついた。
「「「ねこじゃらし!」」」
今はアイテムボックスに片付けたねこじゃらし。
アルストが再び手にしてしばらく風にそよがせていると――
『ギャギャ?』
「「「出たー!」」」
そこからしばらくはミニマムキャット祭りとなった。
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