傷物英雄、義手義足となり真の勇者を目指す

渡琉兎

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第3話:キリカの願い

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 いつも通りのバジリオ。
 期待の眼差しを向けるキリカ。
 困惑顔のハヅキ。
 三者三様のリアクションを見せているが、皆が椅子に腰掛けて、バジリオが魔法で出した最高品質の水を飲んでいる。
 あまりの美味しさに、ハヅキは口をつけてから水を二度見するほどだ。

「……それで、何用なんですかね?」

 最初に口を開いたのはバジリオだった。
 何も言わずとも話し出すだろうと思ってはいたが、無駄に時間を労するのも勿体ないと思い、水を向けたのだ。
 そして、キリカがその誘いに乗って話し始める。

「私は、あなたに故郷を救って欲しいと思いここまで来ました」
「俺に? 助けて欲しいだと?」
「はい」

 どちらかといえば強面に入るだろうバジリオの目を、まっすぐに見つめるキリカ。
 その様子をハヅキが緊張した面持ちで見つめている。

「……俺は見ての通りの傷物だ。人族から見捨てられた、傷物英雄。今はこんな辺鄙なところで独り暮らし、移動だってままならん。俺みたいなのを訪ねるよりも、こいつみたいな実力者を集めた方がいいんじゃないのか?」

 バジリオはハヅキを指してそう口にする。
 初対面であるにも関わらず断言したのには訳がある。
 刀を主武装とする南の小大陸、名前をジバーグと呼ぶのだが、その地に暮らす戦闘民族は大陸の一騎当千に値すると言われている。
 ハヅキが戦闘民族であるならば、今のバジリオを雇うよりも同郷の人族を探す方が効率がよいと考えた。

「あいにく、私は一人でこの地に来ている。同郷の知り合いはおらず、それに私は雑種だ」
「雑種?」
「純粋な戦闘民族ではない。故に、あなたが思うような実力を有していない」
「……そうは思わんがな」

 気配を感じることで、バジリオは相手の実力を自分と比較することができる。
 ハヅキの実力は、英雄の一歩手前、といったくらいだろうと推測していた。

「……まあいいさ。それに話が逸れてしまったな。俺ではあんたらの助けになることはできない」
「できます」

 バジリオが断ろうと口にした言葉を、キリカは真っ向から否定する。

「……それを決めるのはあんたじゃない、俺だ」
「いえ、バジリオ様なら助けられる」
「何を根拠にそんなことを──」
「私の機構義手ハーツアーム機構義足ハーツレッグがあれば、バジリオ様は英雄になれます」

 バジリオが言い終わる前に、キリカが言葉を被せてくる。
 聞き覚えのない言葉にバジリオは首を傾げてしまう。

「機構義手に、機構義足? なんだそりゃ?」
「バジリオ様のご意見はごもっとも。ですので、見ていただいた方が早いでしょう」

 そう言って腰に下げていた鞄に手を入れると、その大きさからは想像できないサイズの道具が出てきた。

「なるほど、魔法鞄か」

 異空間にものを収納して持ち運ぶことができる魔道具の一つ、魔法鞄。
 見た目の大きさ以上の容量が入るだけではなく、ものによっては時間経過すらも止められるものがあり、長旅はもちろん、バジリオは戦争でもよく見かけていた。
 個人的に欲しいと思ったこともあったが、常に前線に立つバジリオには武器だけを持たせろと他の英雄に言われてからは、欲すること自体を止めていた代物だ。

「これは、私が作り出した機構義手も機構義足です。これをバジリオ様の新たな左腕と右足にしていただきたいのです」
「……何を言っているんだ? 俺の新しい左腕と、右足だと?」
「はい」

 ここに至り、バジリオは初めて困惑を顔に刻んだ。
 バジリオが生きてきた年月はそう長くない。それでも英雄としてもてはやされていた頃は最新技術に触れる機会も多くあった。
 だが、そんなバジリオでも機構義士ハーツドクターという言葉に聞き覚えはなく、機構義手や機構義足も当然聞いたことはない。
 ましてや、失われた腕や足の代わりになる道具があるなどとは想像もしていなかった。

「これは、私が開発した機構装具ハーツバレットと言います。本来の腕や足の機能以上に、使用者に合わせた調整が可能な道具なのです」
「……あんたは、俺にそんな得たいの知れないものを使わせて、自分の村を救って欲しいと、そう言っているのか?」
「はい」
「……俺に実験台になれってのか?」
「違います。これは、絶対に成功すると確信を持っていますから」

 いきなり現れて勝手を言い続けるキリカに呆れながらも、バジリオは少なからず機構装具に興味を抱いていた。
 キリカが言う通り、本当に腕や足の代わりとして機能するならば、バジリオの生活は一変するだろう。
 もしかすると、徐々に薄れていた魔族への憎しみが再び湧き出すかもしれない。

「……だが、それを俺が使えるという保証はないぞ?」
「使えます。機構装具は、使用者の魔力を使用して動く道具ですから」
「俺は元戦士だぞ?」
「先ほどの魔法を見させていただきました。あれだけのことができるのであれば、機構装具を使いこなすことも可能でしょう!」
「……あれくらい、誰でもできるだろうに」

 ぶつぶつと呟いているバジリオだが、その気持ちは機構装具を使う方向に傾いていた。
 そして、キリカの最後の一言がバジリオに決断させる。

「この機構装具があれば──バジリオ様は勇者になれるでしょう!」
「……勇者か」

 英雄を越えた存在、勇者になれるかもしれない。
 それは英雄と呼ばれていた頃に切望し、どれだけ望んでも手が届かなかった頂でもある。
 本当になれるのかどうかは分からない。
 ただ、キリカの提案に乗ってみてもいいかと思えるようにはなっていた。
 結局、「勇者になれる」というその一言が、バジリオに機構装具を使用する決断を下させた。
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