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第4話:バジリオの決断
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だが、すぐに装着して使いこなせるとは思っていないバジリオは、一つの条件を口にする。
「とりあえず一週間、機構装具を使わせてくれ」
「それでは!」
「その使い心地を確認してから決めさせてくれ」
「……それは、ダメな場合もあるということですか?」
「そっちが提案してきたことだ、俺が条件をつけるのは当然だろう」
そうでなければ依頼を受けないと、その目がキリカへ訴え掛ける。
「……分かりました」
「よし、それならどうやって──」
「でしたら、その間は私もここで暮らします!」
「キリカ殿! それはいけません!」
「何故ですかハヅキ! 私がいなければ機構装具を装着することも、メンテナンスもできないのですよ!」
「そ、それはそうですが、殿方と二人で、一つ屋根の下というのは……」
ハヅキの言葉を受けて、キリカは自分の発言の重大性に気づき顔を真っ赤にしてしまう。
「あわわ! い、今の話にしてください、バジリオ様!」
「そ、その通りです! でなければ、私もここに泊まります! 絶対に守り抜いてみせます!」
「……お前らなあ、俺が変な悪漢だと思ってるのか?」
勝手に話を大げさにしていく二人に呆れ顔のバジリオは、松葉杖をついて立ち上がると、再び外に出て魔法を発動する。
すると、面白いことに奥の森からきれいに伐採された木材が飛んでくると、バジリオの小屋の隣で自然と組上がっていき、あっという間にもう一つの小屋が完成してしまった。
「二人はここで寝泊まりしたらいい。これなら問題ないだろう?」
「「……」」
「なんだ、どうしたんだ?」
「……バジリオ様は、戦士だったのですよね?」
「そうだが?」
「……普通、戦士はこれほど繊細な魔法を使えませんよ?」
「これが繊細? まさか、結構雑に扱ってるぞ?」
キリカがなんとか絞り出した質問に、バジリオはさも当然といった感じで答えていく。
ハヅキは何も言えずに、組上がった家をただ眺めることしかできないでいる。
「……私の常識が崩れていきそうです」
「英雄とその他を常識で計れるわけがないだろう。とりあえず、まずは機構装具をつけてくれ」
「はい……うん、もうどうにでもなれですね!」
最後には吹っ切れたように言葉を発して、キリカは最初に機構義手を手にすると、バジリオの左側に移動する。
意図を察したバジリオは、風に揺れる袖を右手でまくり上げた。
失われた左腕を間近で見て、キリカはゴクリと息を飲む。後ろから見ていたハヅキも同様だ。
「……そんなところをまじまじと見るなよ」
「はっ! その、すみません! ……そ、それでは、説明します」
一度深呼吸をしたキリカが、機構義手をギュッと抱き締めてから口を開いた。
「私が左腕に機構義手を押し当てるので、その時にバジリオ様の魔力を機構義手に注いでください」
「それだけか?」
「魔力を注ぐと機構義手が稼働するんですが、魔力の量が多過ぎると莫大な力が発揮されてしまいます。ですので、バジリオ様は魔力量を抑えながら注いでください」
「……分かった」
莫大な力、という部分が気になったのだが、まずは使ってみなければ分からないと判断したバジリオは了承の意だけを伝える。
「魔力が通うと、その後はバジリオ様の意思で、本当の腕のように動かせるようになります」
「ずいぶんはっきりと言うんだな」
「絶対に大丈夫だと、自信がありますから」
キリカの表情を見たバジリオはニヤリと笑い、親指を立てて始めろと合図を送る。
その意を汲んだキリカは、機構義手を左腕に押し当てた。
「いくぞ──うおっ!」
──ギュイイイイィィ!
「バ、バジリオ様、魔力量の調整を!」
機構義手はバジリオの魔力が注がれる分だけ吸収しようと、唸りを上げる。
熱い空気が放出され、小屋の温度が一気に上昇。バジリオだけでなく、キリカとハヅキからも大量の汗が流れ始めた。
「くっ! おおおおおおぉぉっ!」
「バジリオ様!」
「こんの、じゃじゃ馬がああああああぁぁっ!」
魔力を抑え込み、機構義手に流れ込む魔力を調整するバジリオ。
それでも吸収しようとしてくる機構義手の言いなりにならないよう、頭の中で魔力量を計算し始めた。
(このままだと持ってあと数分! とんでもないものを持って来やがったな!)
機構義手からの放熱は突風となり、室内を駆け巡っては小物類を吹き飛ばしてしまう。
バジリオは苦手とする魔力調整を必死に行い、徐々にではあるが魔力の放出が少なくなってきたのを感じ取った。
唸りを上げていた機構義手もその音を小さくしていき、最終的には駆動音すら聞こえなくなっていた。
「……はぁ……はぁ……はぁ…………上手く、いったのか?」
「……バジリオ様、左手を動かしてみてもらっていいですか?」
「左手だと? ……おぉ……おおっ! マジかよ!」
驚きの声を上げたバジリオの左手――機構義手は間違いなく、バジリオの意思に合わせて動いていた。
「とりあえず一週間、機構装具を使わせてくれ」
「それでは!」
「その使い心地を確認してから決めさせてくれ」
「……それは、ダメな場合もあるということですか?」
「そっちが提案してきたことだ、俺が条件をつけるのは当然だろう」
そうでなければ依頼を受けないと、その目がキリカへ訴え掛ける。
「……分かりました」
「よし、それならどうやって──」
「でしたら、その間は私もここで暮らします!」
「キリカ殿! それはいけません!」
「何故ですかハヅキ! 私がいなければ機構装具を装着することも、メンテナンスもできないのですよ!」
「そ、それはそうですが、殿方と二人で、一つ屋根の下というのは……」
ハヅキの言葉を受けて、キリカは自分の発言の重大性に気づき顔を真っ赤にしてしまう。
「あわわ! い、今の話にしてください、バジリオ様!」
「そ、その通りです! でなければ、私もここに泊まります! 絶対に守り抜いてみせます!」
「……お前らなあ、俺が変な悪漢だと思ってるのか?」
勝手に話を大げさにしていく二人に呆れ顔のバジリオは、松葉杖をついて立ち上がると、再び外に出て魔法を発動する。
すると、面白いことに奥の森からきれいに伐採された木材が飛んでくると、バジリオの小屋の隣で自然と組上がっていき、あっという間にもう一つの小屋が完成してしまった。
「二人はここで寝泊まりしたらいい。これなら問題ないだろう?」
「「……」」
「なんだ、どうしたんだ?」
「……バジリオ様は、戦士だったのですよね?」
「そうだが?」
「……普通、戦士はこれほど繊細な魔法を使えませんよ?」
「これが繊細? まさか、結構雑に扱ってるぞ?」
キリカがなんとか絞り出した質問に、バジリオはさも当然といった感じで答えていく。
ハヅキは何も言えずに、組上がった家をただ眺めることしかできないでいる。
「……私の常識が崩れていきそうです」
「英雄とその他を常識で計れるわけがないだろう。とりあえず、まずは機構装具をつけてくれ」
「はい……うん、もうどうにでもなれですね!」
最後には吹っ切れたように言葉を発して、キリカは最初に機構義手を手にすると、バジリオの左側に移動する。
意図を察したバジリオは、風に揺れる袖を右手でまくり上げた。
失われた左腕を間近で見て、キリカはゴクリと息を飲む。後ろから見ていたハヅキも同様だ。
「……そんなところをまじまじと見るなよ」
「はっ! その、すみません! ……そ、それでは、説明します」
一度深呼吸をしたキリカが、機構義手をギュッと抱き締めてから口を開いた。
「私が左腕に機構義手を押し当てるので、その時にバジリオ様の魔力を機構義手に注いでください」
「それだけか?」
「魔力を注ぐと機構義手が稼働するんですが、魔力の量が多過ぎると莫大な力が発揮されてしまいます。ですので、バジリオ様は魔力量を抑えながら注いでください」
「……分かった」
莫大な力、という部分が気になったのだが、まずは使ってみなければ分からないと判断したバジリオは了承の意だけを伝える。
「魔力が通うと、その後はバジリオ様の意思で、本当の腕のように動かせるようになります」
「ずいぶんはっきりと言うんだな」
「絶対に大丈夫だと、自信がありますから」
キリカの表情を見たバジリオはニヤリと笑い、親指を立てて始めろと合図を送る。
その意を汲んだキリカは、機構義手を左腕に押し当てた。
「いくぞ──うおっ!」
──ギュイイイイィィ!
「バ、バジリオ様、魔力量の調整を!」
機構義手はバジリオの魔力が注がれる分だけ吸収しようと、唸りを上げる。
熱い空気が放出され、小屋の温度が一気に上昇。バジリオだけでなく、キリカとハヅキからも大量の汗が流れ始めた。
「くっ! おおおおおおぉぉっ!」
「バジリオ様!」
「こんの、じゃじゃ馬がああああああぁぁっ!」
魔力を抑え込み、機構義手に流れ込む魔力を調整するバジリオ。
それでも吸収しようとしてくる機構義手の言いなりにならないよう、頭の中で魔力量を計算し始めた。
(このままだと持ってあと数分! とんでもないものを持って来やがったな!)
機構義手からの放熱は突風となり、室内を駆け巡っては小物類を吹き飛ばしてしまう。
バジリオは苦手とする魔力調整を必死に行い、徐々にではあるが魔力の放出が少なくなってきたのを感じ取った。
唸りを上げていた機構義手もその音を小さくしていき、最終的には駆動音すら聞こえなくなっていた。
「……はぁ……はぁ……はぁ…………上手く、いったのか?」
「……バジリオ様、左手を動かしてみてもらっていいですか?」
「左手だと? ……おぉ……おおっ! マジかよ!」
驚きの声を上げたバジリオの左手――機構義手は間違いなく、バジリオの意思に合わせて動いていた。
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