傷物英雄、義手義足となり真の勇者を目指す

渡琉兎

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第5話:感激の涙

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「すげえな! マジで動くぞ!」

 バジリオは何度も手を閉じたり開いたりしており、その感覚を確かめている。

「やはり、私の目に狂いはなかった!」
「素晴らしいです、キリカ殿! バジリオ殿!」

 キリカとハヅキも歓喜の声を上げた。
 絶対に成功すると信じていたとはいえ、実際にはバジリオの魔力調整の技術が物を言う作業だ。
 バジリオが少しでも調整を誤っていれば、この一帯が吹き飛んでいたことなど、当の本人は知らないだろう。
 キリカとハヅキの歓喜の声には、これらの感情も含まれていた。

「よし! すぐにその機構義足ってやつも付けようぜ!」

 嬉しさのあまりすぐに機構義足も付けたいと声を上げたバジリオだったが、キリカはそれを止める。

「それは危険です、バジリオ様」
「ん? どうしてだ?」
「機構義手を取り付けるのに、膨大な魔力と精神力を使ったはずです。機構義足にも同様の作業が必要になりますので、一度休まれてから――」
「いんや、大丈夫だ」

 休んでからと進言するキリカに対して、バジリオはすぐにやっても大丈夫だとはっきりと答えた。

「どうしてそのように思えるのですか?」
「こういうのは、成功した感覚が残っているうちにやった方がいいんだよ。まあ、俺の場合だけどな」

 バジリオには長年、英雄として行動して成功を収めてきた経験がある。
 その経験則から、自分には成功した感覚が残っているうちにやる、という方法があっていると理解していた。
 経験則からくる選択には、さすがのキリカも強くは言えない。
 それに、実際に機構義足を取り付けるのはバジリオだ。
 彼ができると言えば、キリカはその言葉を信じるのが正解だと考えていた。

「……分かりました。ですが、気をつけてください。何かあればこの一帯が吹き飛んで――」
「だから大丈夫だって! ほれ、貸してみろ」
「あ! あの、ちょっと!」

 既に機構義足は机に置かれていた。
 それをバジリオは手に取り、そのまま右足のすそをまくり上げて、傷口に押し当てる。そして――

「きたきたきたきたああああっ!!」
「バ、バジリオ様ああああっ!?」
「いきなりいいいいっ!?」

 押し当てると同時に魔力を注ぎ込む。
 キリカとハヅキは心の準備ができておらず、思わず声を上げてしまう。
 そんな中でバジリオは唸りを上げる機構義足を見つめながら、その表情は笑みを刻んでいる。
 機構義手と同様に放熱が小屋の中を駆け巡っているのだが、その時間は長くはなかった。

「……そんな、まさか!」
「……もう、制御してしまったというのですか?」

 キリカの驚きと共に、ハヅキは感嘆の声を漏らす。
 事実、機構義手の時と比べると半分の以下の時間で、機構義足を制御してしまった。

「……はは! どうだ! これで右足も俺の思い通りに……動いたぞおおおおっ!!」

 椅子に腰掛けたまま、機構義足の指を動かしてみたバジリオ。
 一本、一本の指が彼の意思に合わせて動いており、その姿を見たバジリオは目に涙を浮かべる。

「……立てるん、だよな?」
「試してみてください」

 独り言のつもりで呟いた言葉に、キリカが答えた。
 その答えに顔を上げたバジリオは、大きく頷き、ゆっくりと両足に力を込めて、腰を浮かせる。
 ズシリと体の重さが両足に伝わると、目に溜まっていた涙がついに零れ落ちた。

「……はは……本当に、両足で、立っているんだな」

 涙を拭うのも忘れて、バジリオは両足で立っている感覚を確かめていく。
 そして、ゆっくりと一歩を踏み出した。

「…………歩ける。両足で、歩けるんだ!」
「おめでとうございます、バジリオ様!」

 感激しているバジリオの姿を見て、キリカはそう声を掛けた。
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