傷物英雄、義手義足となり真の勇者を目指す

渡琉兎

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第7話:旅立ち

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 それからキリカとハヅキは、バジリオの隣に建てられた小屋へ向かい、休むことになった。
 険しい山々を制してここまでやってきて、そのままバジリオに機構装具の取り付けを行ったのだから、疲労が限界を超えたのだろう。
 バジリオも快く送り出し、彼はというと明日のために旅支度を整えていた。

「久しぶりに山を下りるわけだからな。旅支度も、改めて確認する必要があるか」

 忘れていることがあるだろうと、英雄として旅をしていた頃のことを思い出す。
 当時はお互いに背中を任せ合った英雄たちは、今どこで何をしているのか。
 それが分かれば、また協力し合うこともできるのではないかと、頭の片隅で考えてしまう。

「……は。無駄なことを考えちまうな。準備に集中しないと」

 英雄だった頃のことを思い出すと、どうしても他の英雄たちのことまで思い出してしまう。
 左手と右足を失った直後から態度をガラリと変え、傷物英雄だと言って邪魔者扱いしてきた英雄たち。
 中には気を遣ってくれた英雄もいたが、それでも結局はお払い箱にされてしまった。
 過去は過去と切り捨て、明日のための準備を始めようと頬を叩く。

「いでっ! ……はは、金属の手で頬を叩くのは、慣れるまで止めといた方がいいな」

 今となっては、この痛みすらも愛おしくなってしまう。
 そう思うと、視線は自然と機構義足の右足に向けられた。

「……って、だから! 準備を進めるぞ、俺!」

 感慨深いからか、すぐに感傷的になってしまう。
 頬を叩くのではなく、首を左右に強く振りながら、バジリオはようやく旅支度を開始していった。

 ◆◇◆◇

 翌早朝。
 バジリオはその身を昔の装備で包んでいた。
 至る所に傷はあれど、バジリオを長年の間守り抜いてきた、デュランダルと並ぶ彼の相棒たちだ。
 装備の中で光沢を放っているのは、機構装具だけだろう。

「……勇者か」

 改めて考えると、自分が本当に英雄になれるのかと、自問自答してしまう。
 それは英雄としての自分が、死四天将の一角に致命傷を与えるだけしかできなかったことが理由の一つだ。

(死四天将を倒すことすらできなかった俺が、本当に勇者になることができるのか?)

 そう思うたびに、彼の視線は機構装具へ向けられる。

(……そうだ。過去のことは忘れるんだろ。俺はもう英雄じゃない。ただのバジリオじゃないか)

 過去の栄光のしがみつく必要はない。むしろ、これからの自分に目を向けなければならない。
 そして、その未来に必要なものが、機構装具なのだ。

「……行こう」

 そうして小屋を出ると、そこには既にキリカとハヅキが待っていた。

「お待ちしておりました、バジリオ様」
「よろしくお願いいたします、バジリオ殿」
「……こっちこそ、こんなおっさんを掴まえてくれて、ありがとよ」

 冗談交じりにそう口にしたバジリオは、キリカとハヅキと共に、小屋を一度も振り返ることなく旅立つのだった。
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