傷物英雄、義手義足となり真の勇者を目指す

渡琉兎

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第8話:現在の人族

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「……このような山道が、隠されていたのですね」
「……バジリオ殿のもとに向かう時に、知っておきたかったです」

 久々に山を下りることになったバジリオだが、陸の孤島にやってきた当初はあまりの暇さ加減に嫌気がさし、山の中を探索することが多かった。
 もちろん、片足では限界もあったが、その中で比較的楽に麓へ下りることができる獣道を見つけていたのだ。
 キリカやハヅキが通ってきた道に比べれば何倍も楽な道のりに、二人は愕然としてしまっていた。

「まあ、山の中を歩き回らなきゃ見つけられないような獣道だ。それに、何が出てくるかも分からねえんじゃあ、普通は通らないさ」

 そう笑いながら口にしたバジリオは、楽しそうに先頭を進んで行く。
 片足でも進むことができた道なのだから、両足になった今ならなおのこと、進むペースは速くなる。
 キリカとハヅキは置いて行かれないよう、必死について行く。
 こうして山を下りて行ったバジリオたちは、キリカが想定していた半分以下の日数で麓に辿り着くことができた。

「はは! マジで何年ぶりの地上だよ! いや、山の中も地上なんだけどよ!」

 山の麓で深呼吸を始めたバジリオだったが、その表情はすぐに違和感に包まれる。

「……しかしこれは、どうなってんだ?」

 違和感の正体、それはあまりにも荒廃した風景にあった。
 人族が領土は大陸の南方を残すのみとなっているが、バジリオが暮らしていた場所は、最南端に位置している。
 言わば、戦場からは最も離れた場所なのだが、そこですらあまりに荒廃しており、バジリオは言葉を失ってしまう。

「……人族の多くは、諦めてしまっているのです」
「諦めているって……まさか、魔族に勝つことをか?」
「はい。事実、バジリオ様が前線から退かれてからの人族は連戦連敗。英雄たちも何をしているのか、姿を見せてくれません」
「……なん、だと?」

 バジリオが驚いたのは、連戦連敗を喫している人族にではなく、姿を見せないと言う英雄たちにだ。

「俺がまだ現役だった頃は、他の英雄たちが少なくとも五人はいたはずだろう?」
「私もそのように記憶しております。ですが……」
「当時、私も一兵士として前線に立っておりましたが、バジリオ殿のような活躍を見せる英雄はおらず、むしろ死を恐れているのか、なんとか前線から逃げようとしているように見えました」

 言葉を切ったキリカに変わり、ハヅキが説明を続ける。

「まさか、冗談だろ? あいつらも俺と同じ、英雄に選ばれた奴らだぞ?」
「冗談、であればよかったのですが……」
「……おいおい、マジかよ」

 衝撃の事実に、バジリオは言葉を失ってしまう。
 バジリオは知らなかったが、当時の他の英雄たちは、危険な任務を全てバジリオに押し付けており、自分たちは後方でのうのうと過ごしていた。
 それでも戦果を上げ続けていたバジリオに嫉妬し、彼が左腕と右足を失ったと聞くや否や、すぐに罵声を浴びせてきたのだ。
 英雄たちの中には、バジリオに気安く話し掛けてくれる者もいたが、彼も気づけばいなくなっていた。
 今考えると、自分と仲良くしていたせいで、他の英雄たちから目の敵にされていたのではないかと思えてならない。

「……俺のせいで、人族が窮地に立たされているってのか?」
「それは違います、バジリオ様!」

 自分が前線に立ち続けていればと思ったバジリオだが、彼の言葉をキリカが真っ向から否定した。

「バジリオ様は何も悪くありません! 左腕と右足を失うまで、人族のために戦い続けてくれたのです! そこまでしてくれる人が悪いだなんて、あり得ません!」
「キリカ……そうか。ありがとな」

 なんとか笑みを作ったバジリオは、改めて荒廃した景色をその目に刻む。

(……俺にできることは多くない。まずは、キリカの故郷を救う。次を考えるのはそれからだ)

 心の中でそう決意したバジリオは、キリカとハヅキについて歩き出した。
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