傷物英雄、義手義足となり真の勇者を目指す

渡琉兎

文字の大きさ
21 / 31

第21話:辺境都市ヴァルジーナ

しおりを挟む
 南方に位置する都市の中では大都市にあたる、辺境都市ヴァルジーナ。
 ここにはヴァルヴォーグ辺境伯が屋敷を構えており、英雄として訪れた時には宿や食事を提供してもらっていた。
 もちろん、ただ世話になっていただけではない。
 バジリオも辺境伯領に訪れた魔族を退けるのに一役買っており、それがあるからこその歓待にもなっていた。

「まあ、持ちつ持たれつってやつだな」

 ヴァルジーナに入るため、門の前にできていた検問の列に並びながら、バジリオはそう口にした。

「英雄と言うだけで、様々な特権を無償で与えろと言う者もいる中で、バジリオ様は素晴らしいと思います」
「何も戦果を上げずに歓待されるのが、どうもむず痒かっただけなんだがな」
「それができない英雄が多すぎるのですよ、バジリオ殿」

 昔話をしていただけなのだが、何故か自分が立てられてしまい、歓待される以上にむず痒くなってしまう。
 そんなこと話していると、あっという間にバジリオたちの順番が回ってきた。

「ヴァルヴォーグ辺境伯、俺のことを覚えてくれていたらいいんだがな」

 傷物英雄になってから五年が経過しており、ヴァルヴォーグ辺境伯と最後に顔を合わせたのは、さらに間が空いている。

「久しぶりに子供たちとも会ってみたい――」
「待て!」

 バジリオが最後まで言葉を口にするよりも早く、門番が声を張り上げた。
 それは単に声を掛けられただけではなく、殺気が込められた、怒声にも似た声だった。

「……どういうことだ?」

 門番に睨みを利かせるバジリオ。
 それもそうだろう。何故なら門番たちは、槍の穂先をこちらへ向けていたからだ。

「おとなしく武器を捨てろ!」
「開口一番でそれはないだろう。俺たちは何もしていない――」
「抵抗する気か!」
「……ったく。抵抗も何も、だから俺たちは――ちっ!」

 軽く肩を竦めながらも、話し合いで誤解を解きたかったバジリオだったが、門番たちは聞く耳を持たず、それどころは槍を突き出してきた。
 バジリオは素早く後退したものの、あの場に立ったままならば、間違いなく貫かれていただろう。

「……てめぇら、正気か?」
「黙れ! こいつらはアルヴァ様の敵だ! 捕らえろ! 殺しても構わん!」

 何が起きているのか理解が追いつかず、バジリオたちは後退をせざるを得ない。

「いったんこの場を離れましょう!」
「バジリオ殿!」
「仕方ねぇか!」
「逃がすな! 追え!」

 キリカが叫ぶと同時にハヅキが名前を呼び、バジリオもそれに従う。
 門番たちの何名かが追い掛けてきたものの、そうはさせまいとバジリオはデュランダルを抜いた。

「だらああああああああっ!!」

 機構装具に僅かな魔力を注ぎ、そのまま地面を斬りつける。
 唸りを上げた機構義手の力により街道が抉られ、大量の砂埃が一帯を包み込む。
 門番たちの視界を遮ることに成功したバジリオたちは、そのままヴァルジーナをあとにした。

「……くそっ! いったいなんだってんだ!」

 街道を外れた森の中で、バジリオは声を荒らげた。
 五年ぶりに訪れただけで、話し合いすらもできず、武器を向けられ、さらには攻撃まで仕掛けられた。
 分からないことだらけの状況だが、先ほどのやり取りの中で一つだけはっきりしたことがある。

「……あいつら、アルヴァの敵だって言っていたな」

 そこまでバジリオが考えると、今度は逃げ込んだ森の奥の方から近づいてくる気配を感じ取る。

「ハヅキ。キリカを守れ」
「はい」

 バジリオがデュランダルを構えながらハヅキに声を掛けると、彼女はキリカを自らの背に隠しながら刀を抜く。
 だが、近づいてくる気配からは敵意を感じない。
 次から次へと分からないことが続き、困惑しているバジリオだったが、現れた人物を見てさらなる困惑が彼を襲った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最凶と呼ばれる音声使いに転生したけど、戦いとか面倒だから厨房馬車(キッチンカー)で生計をたてます

わたなべ ゆたか
ファンタジー
高校一年の音無厚使は、夏休みに叔父の手伝いでキッチンカーのバイトをしていた。バイトで隠岐へと渡る途中、同級生の板林精香と出会う。隠岐まで同じ船に乗り合わせた二人だったが、突然に船が沈没し、暗い海の底へと沈んでしまう。 一七年後。異世界への転生を果たした厚使は、クラネス・カーターという名の青年として生きていた。《音声使い》の《力》を得ていたが、危険な仕事から遠ざかるように、ラオンという国で隊商を率いていた。自身も厨房馬車(キッチンカー)で屋台染みた商売をしていたが、とある村でアリオナという少女と出会う。クラネスは家族から蔑まれていたアリオナが、妙に気になってしまい――。異世界転生チート物、ボーイミーツガール風味でお届けします。よろしくお願い致します! 大賞が終わるまでは、後書きなしでアップします。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

処理中です...