傷物英雄、義手義足となり真の勇者を目指す

渡琉兎

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第27話:八魔将

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 ハヅキと別れたバジリオとハヴィは、誰にも邪魔をされることなく、辺境伯の屋敷に到着した。
 しかし、屋敷の前に立つ男性を見て、バジリオは右腕を上げてハヴィを背に隠す。

「おや? どうやら、招かれざる客人がお越しのようだ」

 男性は張り付けたような笑みを浮かべながら、バジリオとハヴィにそう告げた。

「な、何者でしょうか、バジリオ様?」
「十中八九、魔人だな」
「ふふ。どうやら私たちの気配に敏感な者のようですね」

 ハヴィの問い掛けにバジリオが答えると、男性は驚きもせずに答えた。

「ですが、一点だけ間違いがございます」
「魔人は魔人だろう?」
「どうやらあなたの知識は過去で止まっているようですね」

 そう口にした男性から、突如として強烈な殺気が放たれる。
 バジリオの背に隠れていなければ、一般人のハヴィでは卒倒していたことだろう。

「私は魔族の中で新たに作られた階級、八魔将が一人。魔毒のポイゼルと申します」
「八魔将? ……はっ。魔人よりちょっと強い奴らって感じか?」
「……なんですって?」

 自身に満ち溢れていた魔毒のポイゼルだったが、バジリオの言葉には苛立ちを隠せなかった。

「お前の実力は、死四天将には全く及ばない。なら、死四天将と強個体の魔人どもの間くらいなんだろう? その中でも強個体に近い実力ってんなら……なあ?」

 軽く肩を竦めながらバジリオが軽い挑発を行うと、張り付けた笑みを浮かべていたポイゼルの表情が激変する。

「……どうやら、苦しみながら死にたいようですねえ!」
「死ぬのはお前だ。屋敷の人間を、ヴァルジーナの民を、好きにはさせねえよ!」

 左手でデュランダルを握り、いつでも振り抜ける態勢を取るバジリオ。

「ハヴィは下がれ。どっかに身を潜めておくんだ」
「わ、分かりました。お気をつけて、バジリオ様」

 ハヴィの返事を聞いたバジリオは、一気に前に出る。
 それに合わせてハヴィも駆け出すと、街路樹の影に身を隠す。

「どらああああっ!」

 先手必勝。機構義手に魔力を込めた強烈な一撃をポイゼルへ放つバジリオ。

「ん?」

 しかし、バジリオは手応えを感じていないことに違和感を覚え、即座に飛び退く。

「……くくくく。どうやら、勘だけは鋭いようですね」
(へぇ。あの一撃を回避したのか。なかなかやるじゃないか)

 ポイゼルの実力を僅かに上方修正しながら、バジリオは何が起きたのかを考える。

(間違いなく決まるタイミングだったはずだが、掠りもしなかった。何か特殊な能力を持っていると考えるべきだが……魔毒のポイゼル。単なる毒の能力じゃないのか?)
「何が起きたのか理解できていないようですね。ですが、考えている暇があるとお思いですか?」
「ごほっ! ごほっ!」

 バジリオに対してポイゼルが含みのある言葉を投げ掛けると、直後には咳き込む声が聞こえてきた。
 これはバジリオではなく、彼の背後から聞こえてきた。

「ハヴィ!」
「ふふふふ、あはははははははは! さあ、どうしますか? 彼、死んでしまいますよ?」

 街路樹の裏で咳き込むハヴィの声を聞き、バジリオは歯噛みする。
 周囲を見やると、先ほどまではなかったはずの霧が発生していた。

「てめぇの能力だな、ポイゼル!」
「当然です。魔毒のポイゼル、その二つ名は伊達ではないのですよ?」

 不気味な笑みを浮かべながら、ポイゼルが両手を広げると、霧がさらに広範囲へと広がっていく。
 すると屋敷の中からも咳き込む声が聞こえてきたため、バジリオは憤怒の表情を浮かべた。

「ポイゼル! 貴様ああああっ!!」
「あはははは! 私を舐めてかかったこと、後悔させて差し上げましょう!」

 ポイゼルが呵々大笑しながらそう口にすると、霧がさらに濃くなっていった。
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