3 / 56
第1章:異世界転生
使えない魔法
しおりを挟む
あ、あの駄女神、マジで駄目じゃねえかよ!
こんな使えない魔法ばかり与えられてもどうしようもないじゃないか!
こんなんで世界を救えとかマジで無理だから! 何もできずにゲームオーバーだから!
「……これ、レベル上げから必要なのかよ」
しかし、レベル上げをするにも問題が一つある。
「ど、どうやってレベル上げるんだよ」
とりあえず、俺の敵は魔族なんだろう。そんなことを駄女神が言っていたからな。
ただ、レベルを上げるには魔族を倒す必要があるだろう。おそらくそういうもののはずだ。
だが、今の俺には何一つとして武器がない。
「何か弱い魔法でもあれば話は変わってくるんだろうけど、魔力5で使える魔法がないんだよなぁ」
だったら賢者という職業に縛られることなく剣を持って戦えばいいのかもしれないが、それも森の中ではできるはずもない。
いや、それ以前の問題かもしれないんだ。
「力2って、絶対に低いよな?」
もしかしたら、剣を持つための力すらないかもしれないのだ。
「……何か、武器になりそうなものはないかなぁ」
俺は周囲に目をやる。
森の中なのだから、ちょっと太めの木の枝とかでもあれば弱い魔族くらいは倒せるのではないか。
……まあ、俺が持てればの話だけど。
「おっ! これは……錆びたナイフか?」
木の棒を探していたのだが、まさか錆びているとはいえナイフが落ちているとは好都合だ。
手にしてみると……ちょっと重いが、振れないわけじゃない。
何度か素振りをしてイメトレを繰り返す。
「……よし、ちょっと森の中を散策してみるか」
ここに留まり続けても意味はないからな。
じっとしてるだけでレベルが上がるならそうするけど、そんなことはないだろうし。
それに、湖の側に転生させてくれたくらいだし、出てくる魔族もそこまで強くはないだろう。……そう信じたい。
湖を拠点にするとして、俺は目印になりそうな大木を目刺しながら傷をつけ、再び奥へと歩き出し、それを繰り返して進んでいく。
すると、奥の茂みからガサガサと自然のものとは異なる音が聞こえてきた。
「つ、ついに魔族か?」
俺はゴクリと唾を飲み込み、錆びたナイフを慣れない手つきで構える。
そして、茂みから姿を現したのは──
「……な、なんだ、こいつ?」
『……ピキャ?』
長い耳に赤いクリクリの瞳。後ろ足で器用に立ち、前足をちょこんと垂らしている。
普通の兎が一回り大きくなったような奴なんだけど、見た目は完全に兎なので可愛らしい。
これは動物なのか? 魔族ではないのか──
『ビグルアアアアッ!』
「やっぱり魔族かああああいっ!」
さっきの可愛らしい鳴き声はどこにいったんだよ!
曲げていた後ろ足で地面を蹴りつけ、弾丸のように突っ込んできた。
「うわあっ!」
とにかく避けなきゃ!
俺は横に転がるようにして倒れ込み、なんとか兎の体当たりを避けると、すぐに起き上がって向き直る。
すると、そこにはまさかの状態が出来上がっていた。
──ミシミシ、バキバキ、ドゴオオオオン。
「……う、嘘だろ?」
兎のぶつかった大木が半ばから粉々になってしまい、そのまま轟音と共に倒れてしまったのだ。
『……ビギャギャ!』
「し、死ぬから! マジで死ぬから!?」
こ、こんなの勝てるわけないだろうが!
俺は遮二無二走り出す。兎から遠ざかるために。というか、あれは兎なのか? 絶対に違うだろ!
対抗手段は錆びたナイフのみ、選択肢は……逃げる!
ただ、逃げ切れるかどうかは別問題。
『ビギャ! ビギャギャー!』
「やっぱり、速いよな!」
湖に飛び込もうと考えていたのだが、あっという間に兎に回り込まれてしまう。
……こうなったら、覚悟を決めるしかない。
「こ、来いや、でか兎! お、俺にはこのナイフが! ……ナイフ、が?」
構え直して気づいたんだ。うん、それまでは全く気づかなかったんだ。
「……や、刃が、なくなった?」
錆びてボロボロになっていた刃が根本からポッキリいっていたのだ。
いつ、どのタイミングでそうなった?
そして、一つの可能性に行き着いた俺はでか兎の体を観察する。
「……やっぱり、避けた時にたまたま刺さったのか!」
奇跡的に攻撃が当たっていたようだ。
いや、実際は避けた腕がたまたま残ってて、それがでか兎にたまたま刺さっただけなのだが。
「……いやいや、だからってピンチには変わりないから!」
『ビグルアアアアッ!』
「やっぱり来たー!」
待て待て待て待て、武器すらもなくなった今の俺では対抗手段が皆無なんだが!
『グルアアアアッ!』
「あ、死んだわ」
いやー、転生して一時間も経たずに死ぬことになるとはー、マジで駄女神様々だわー。
今度転生するタイミングで現れたらー、絶対に一発ぶん殴ってやるー。
俺はすぐに訪れるであろう衝撃に備えて目を閉じ、体を強ばらせた。
……あ、あれ? なんで何も起きない? 風の音が耳の横を吹き抜けていくだけなんだが?
恐る恐る目を開けてみると──
「……あれ? なんで、でか兎が倒れてるんだ?」
いったい何が起きたんだ。俺の目の前では、でか兎が勝手に死んでいたのだ。
こんな使えない魔法ばかり与えられてもどうしようもないじゃないか!
こんなんで世界を救えとかマジで無理だから! 何もできずにゲームオーバーだから!
「……これ、レベル上げから必要なのかよ」
しかし、レベル上げをするにも問題が一つある。
「ど、どうやってレベル上げるんだよ」
とりあえず、俺の敵は魔族なんだろう。そんなことを駄女神が言っていたからな。
ただ、レベルを上げるには魔族を倒す必要があるだろう。おそらくそういうもののはずだ。
だが、今の俺には何一つとして武器がない。
「何か弱い魔法でもあれば話は変わってくるんだろうけど、魔力5で使える魔法がないんだよなぁ」
だったら賢者という職業に縛られることなく剣を持って戦えばいいのかもしれないが、それも森の中ではできるはずもない。
いや、それ以前の問題かもしれないんだ。
「力2って、絶対に低いよな?」
もしかしたら、剣を持つための力すらないかもしれないのだ。
「……何か、武器になりそうなものはないかなぁ」
俺は周囲に目をやる。
森の中なのだから、ちょっと太めの木の枝とかでもあれば弱い魔族くらいは倒せるのではないか。
……まあ、俺が持てればの話だけど。
「おっ! これは……錆びたナイフか?」
木の棒を探していたのだが、まさか錆びているとはいえナイフが落ちているとは好都合だ。
手にしてみると……ちょっと重いが、振れないわけじゃない。
何度か素振りをしてイメトレを繰り返す。
「……よし、ちょっと森の中を散策してみるか」
ここに留まり続けても意味はないからな。
じっとしてるだけでレベルが上がるならそうするけど、そんなことはないだろうし。
それに、湖の側に転生させてくれたくらいだし、出てくる魔族もそこまで強くはないだろう。……そう信じたい。
湖を拠点にするとして、俺は目印になりそうな大木を目刺しながら傷をつけ、再び奥へと歩き出し、それを繰り返して進んでいく。
すると、奥の茂みからガサガサと自然のものとは異なる音が聞こえてきた。
「つ、ついに魔族か?」
俺はゴクリと唾を飲み込み、錆びたナイフを慣れない手つきで構える。
そして、茂みから姿を現したのは──
「……な、なんだ、こいつ?」
『……ピキャ?』
長い耳に赤いクリクリの瞳。後ろ足で器用に立ち、前足をちょこんと垂らしている。
普通の兎が一回り大きくなったような奴なんだけど、見た目は完全に兎なので可愛らしい。
これは動物なのか? 魔族ではないのか──
『ビグルアアアアッ!』
「やっぱり魔族かああああいっ!」
さっきの可愛らしい鳴き声はどこにいったんだよ!
曲げていた後ろ足で地面を蹴りつけ、弾丸のように突っ込んできた。
「うわあっ!」
とにかく避けなきゃ!
俺は横に転がるようにして倒れ込み、なんとか兎の体当たりを避けると、すぐに起き上がって向き直る。
すると、そこにはまさかの状態が出来上がっていた。
──ミシミシ、バキバキ、ドゴオオオオン。
「……う、嘘だろ?」
兎のぶつかった大木が半ばから粉々になってしまい、そのまま轟音と共に倒れてしまったのだ。
『……ビギャギャ!』
「し、死ぬから! マジで死ぬから!?」
こ、こんなの勝てるわけないだろうが!
俺は遮二無二走り出す。兎から遠ざかるために。というか、あれは兎なのか? 絶対に違うだろ!
対抗手段は錆びたナイフのみ、選択肢は……逃げる!
ただ、逃げ切れるかどうかは別問題。
『ビギャ! ビギャギャー!』
「やっぱり、速いよな!」
湖に飛び込もうと考えていたのだが、あっという間に兎に回り込まれてしまう。
……こうなったら、覚悟を決めるしかない。
「こ、来いや、でか兎! お、俺にはこのナイフが! ……ナイフ、が?」
構え直して気づいたんだ。うん、それまでは全く気づかなかったんだ。
「……や、刃が、なくなった?」
錆びてボロボロになっていた刃が根本からポッキリいっていたのだ。
いつ、どのタイミングでそうなった?
そして、一つの可能性に行き着いた俺はでか兎の体を観察する。
「……やっぱり、避けた時にたまたま刺さったのか!」
奇跡的に攻撃が当たっていたようだ。
いや、実際は避けた腕がたまたま残ってて、それがでか兎にたまたま刺さっただけなのだが。
「……いやいや、だからってピンチには変わりないから!」
『ビグルアアアアッ!』
「やっぱり来たー!」
待て待て待て待て、武器すらもなくなった今の俺では対抗手段が皆無なんだが!
『グルアアアアッ!』
「あ、死んだわ」
いやー、転生して一時間も経たずに死ぬことになるとはー、マジで駄女神様々だわー。
今度転生するタイミングで現れたらー、絶対に一発ぶん殴ってやるー。
俺はすぐに訪れるであろう衝撃に備えて目を閉じ、体を強ばらせた。
……あ、あれ? なんで何も起きない? 風の音が耳の横を吹き抜けていくだけなんだが?
恐る恐る目を開けてみると──
「……あれ? なんで、でか兎が倒れてるんだ?」
いったい何が起きたんだ。俺の目の前では、でか兎が勝手に死んでいたのだ。
2
あなたにおすすめの小説
無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~
枯井戸
ファンタジー
力も強くない、足も速くない、魔法も使えないし、頭も大してよくない、どこにでもいるちょっとオタク趣味の主人公・東雲真緒が白雉国に勇者として転生する。
同期の勇者はそれぞれ力が強かったり、魔法が使えたり、回復ができたりと各々の才能を開花させ頭角を現していくのだが、真緒に与えられた才能は異世界転生モノでよく見る〝ステータスオープン〟のみだった。
仲間には使えないと蔑まれ、ギルドには落第勇者の烙印を押され、現地人には殺害されかけ、挙句の果てに大事な人を亡くし、見ず知らずの土地の最底辺で生きていくことになった真緒だったが、彼女はまだ〝ステータスオープン〟の可能性に気づいていないだけだった。
─────────────
※投稿時間は多少前後しますが毎日投稿は続けていくつもりです。
※タイトルは予告なしにガラリと変わる場合があるのでご了承ください。
※表紙は現在の主人公のイメージ図です。もしまた別の国へ行く場合、彼女の装いも変化するかもしれません。
社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命
遊鷹太
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。
幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚
熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。
しかし職業は最強!?
自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!?
ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。
異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~
ヘッドホン侍
ファンタジー
◆異世界転移したサラリーマンがサンドボックスゲームのような魔法を使って、家をつくったり街をつくったりしながら、マイペースなスローライフを送っていたらいつの間にか世界を救います◆
ーーブラック企業戦士のマコトは気が付くと異世界の森にいた。しかし、使える魔法といえば念動力のような魔法だけ。戦うことにはめっぽう向いてない。なんとか森でサバイバルしているうちに第一異世界人と出会う。それもちょうどモンスターに襲われているときに、女の子に助けられて。普通逆じゃないのー!と凹むマコトであったが、彼は知らない。守るにはめっぽう強い能力であったことを。
※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。
異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。
桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。
だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。
そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。
異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。
チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!?
“真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる