職業賢者、魔法はまだない ~サバイバルから始まる異世界生活~

渡琉兎

文字の大きさ
9 / 56
第1章:異世界転生

ゲビレット

しおりを挟む
 拠点にしている湖に戻った俺は早速ゲビレットを細かく観察することにした。
 鑑定スキルのレベルが2に上がったことで、対象の使い道が部位ごとに分かるようになっていたんだ。

「まあ、人間っぽい見た目で牙とか角とかがあるわけじゃないし、ほとんど使えないみたいだな。食料としても……無理みたいだし」

 食べれたとしても人間に近い見た目のゲビレットを食べようとは思わないかな。
 ただ、スパッと斬れたもののその外皮は貴重な素材のようで俺はナイフで丁寧に剥ぎ取っていく。
 あぁ、やっぱりこの作業はまだ慣れないなぁ。特にゲビレットは見た目が……うぷっ!
 ……ふぅ、一波越えたな。
 苦戦したものの、外皮を剥いだ時にはこいつの使い道を思いついていた。

「この外皮を使って鞄を作ってもいいかもしれない」

 剥いだ外皮を引っ張ってみると、柔軟性がありとても丈夫で簡単には破けそうもない。
 二メートルくらいあったゲビレットから剥いだので外皮の量も結構あるのだ。

「とりあえずやることもなくなったし、ステータスを確認するか。下位とはいえ魔族だ、レベルも一気に上がってるんじゃなのかな~」

 少しだけ期待しながらディスプレイを見ていくと──

「おぉ! レベルが3から5まで上がってるよ!」

 一気に2も上がったとなれば、スキルの振り分けが楽しみになってくるな。
 スキルの画面に移るとスキルポイントが今回は11となっている。

「レベルが5になったから、レベル1あたりのスキルポイントが増えたのか?」

 ……まあ、多いに越したことはないか。
 忘れないうちに木材加工スキルを習得して残り8ポイント。
 次に鞄を作るのに必要となる道具を考えていく。

「糸が必要だけど、代用品になりそうな物は……おぉ、近くにあるじゃん」

 湖の近くの木にぶら下がっていた蔦があるんだが、それを鑑定すると使い道の部分で糸の代わりになることが分かった。
 もちろん蔦の繊維を剥いだりとやることはあるのだが、それでも代用品が見つかったことはラッキーである。

「あとは針なんだけど、これは……あー、なるほど、これを削ればいいのか」

 ゲビレットの歯。
 先ほどまでは使い道が出てこなかったのだが、俺が針が欲しいと思ったからだろうか、再度鑑定をしてみると針の代わりになると出てきたのだ。
 糸も針も加工は必要だが時間はたっぷりあるし、野営の準備ができたら作業に取り掛かろうかな。

「まあ、準備とはいっても特にやることもないんだけど」

 すでに火種は手に入っているし、その時になれば火を起こして寝るだけだ。
 まさかいきなり寒くなるなんてことはないと思うけど、もしそうなったらすでに剥ぎ取っているでか兎の皮を毛布にして寝てもいいだろう。

「……俺、結構適応しているんじゃないか?」

 そんなことを考えながら残りのスキルを見ていくことにした。
 目に留まったのは金属加工スキルである。
 俺の手元には金属なんてないが、もし近くで手に入ったなら調理道具を作ることができるかもしれない。
 4ポイントも消費してしまうが、その価値はあるだろう。
 その他だと潜水スキルが気になった。
 なぜかというと、俺のすぐ隣に湖があるからだ。
 とても透明度の高い綺麗な湖なのだが、その底は見えないくらいに深い。
 もしかしたら湖底にお宝でも眠っているんじゃないかと勝手に想像してしまった。

「金属加工が4、潜水が2、残るは2ポイントか」

 ポイントを温存しておく手もあるが、とりあえず2ポイントで有用なスキルが習得できるかを探していく。

「……ん? 採掘スキルか」

 採掘と聞いて思い浮かんだのは、金属加工とも関係性が高い鉱石の採掘だ。
 ちょうど2ポイントで習得できるし、この三つを習得するので問題はないかもしれない。

「また賢者への道からは遠ざかることになるけど、今は仕方ないよな……うん、仕方ない」

 俺はそう自分に言い聞かせて金属加工、潜水、採掘スキルを習得した。

「さて、日も沈んできたことだし、森に入るのはもう止めとくか」

 そう言って立ち上がった俺は火を起こしてから近くの木へと向かい蔦を切り取り、ゲビレットの歯を剥ぎ取る。
 そして火の近くに腰掛けてから加工を始めた。
 蔦に切れ目を入れて繊維を剥いでいく。
 思いのほか丈夫な糸もどきが手に入ったので代用品としては申し分ない。
 ゲビレットの歯もこのナイフを使えばすぐに削ることができたので、一時間もしないうちに針も作ることができた。

「それじゃあ、鞄を作りますか」

 ゲビレットの外皮は本来硬いはずなのだが、その本人の歯を加工した針だからかすぐに刺さってくれた。

「なるほど。だからでか兎やでか豚の歯だと針としての使い道が出てこなかったのか」

 その素材が持つランク、みたいなものだろう。
 同ランクの外皮と歯だからこそ、今みたいに簡単に縫い合わせることができている。
 さすがに鞄作成には時間を使ってしまったが、それでも二時間程度では完成させることができた。

「……うん、悪くないんじゃないか?」

 肩から下げるタイプの鞄だ。
 この中に簡易食料や必要になるかもしれない道具を入れておけば、いざという時に役立つだろう。

 ──ぐううううぅぅ。

「……よし、晩飯だ!」

 俺はすぐに捌き済みのでか豚の肉を串に刺して焼いていく。
 料理スキルがあるのでもっと美味しく作れるのだが、今は早くお腹を満たして眠りたい。
 食事を簡単に済ませてお腹を満たした俺は、明日の予定を決めることもなくそのまま泥のように眠りについたのだった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~

枯井戸
ファンタジー
力も強くない、足も速くない、魔法も使えないし、頭も大してよくない、どこにでもいるちょっとオタク趣味の主人公・東雲真緒が白雉国に勇者として転生する。 同期の勇者はそれぞれ力が強かったり、魔法が使えたり、回復ができたりと各々の才能を開花させ頭角を現していくのだが、真緒に与えられた才能は異世界転生モノでよく見る〝ステータスオープン〟のみだった。 仲間には使えないと蔑まれ、ギルドには落第勇者の烙印を押され、現地人には殺害されかけ、挙句の果てに大事な人を亡くし、見ず知らずの土地の最底辺で生きていくことになった真緒だったが、彼女はまだ〝ステータスオープン〟の可能性に気づいていないだけだった。 ───────────── ※投稿時間は多少前後しますが毎日投稿は続けていくつもりです。 ※タイトルは予告なしにガラリと変わる場合があるのでご了承ください。 ※表紙は現在の主人公のイメージ図です。もしまた別の国へ行く場合、彼女の装いも変化するかもしれません。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

遊鷹太
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~

ヘッドホン侍
ファンタジー
◆異世界転移したサラリーマンがサンドボックスゲームのような魔法を使って、家をつくったり街をつくったりしながら、マイペースなスローライフを送っていたらいつの間にか世界を救います◆ ーーブラック企業戦士のマコトは気が付くと異世界の森にいた。しかし、使える魔法といえば念動力のような魔法だけ。戦うことにはめっぽう向いてない。なんとか森でサバイバルしているうちに第一異世界人と出会う。それもちょうどモンスターに襲われているときに、女の子に助けられて。普通逆じゃないのー!と凹むマコトであったが、彼は知らない。守るにはめっぽう強い能力であったことを。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

処理中です...