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第1章:異世界転生
ゼルジュラーダのギルドマスター
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緊迫した空気が流れ、リリアーナもマリンさんも口を挟もうとはしない。
「……そ、そうですが?」
「へぇ、君、面白いねぇ」
「……あの、何がでしょうか?」
理解できない言葉を呟き、無言のまま上から下まで視線を注いだ後――ギルマスは突然大笑いを始めてしまった。
「……くくく、あははははっ! ごめんね、ちょっと驚かせたかっただけなのよ!」
「……も、もう、師匠! アマカワに変なことしないでくださいよ!」
「いや、すまないな。それにしてもリリアーナが惚れ込むとはな。いやはや、さすがの美貌の持ち主だよ」
「ちょっと、そんなんじゃないですからね!」
……ん? 惚れ込むとはどういうことだ?
転生者だからスキルの有用性を認められているってことだろうか。
「……あぁ! だからパーティも組めるってことか!」
「ちょっと、今どういう解釈をしたのよ!」
「え? 俺とパーティを組む利点について、スキルの有用性かなって――」
「スキルの有用性、だと?」
「「……あっ!」」
やべぇ、転生者ってことを隠すのもそうだけど、スキルについてもあまり公にはできないんだった。
……めっちゃ見てるんですけど、ギルマス!
「……名前は、アマカワケントか」
「……は、はい」
「どれ、アマカワ。少し私と話をしようじゃないか――二人っきりでな」
「えっ!」
「ダ、ダメですよ!」
「どうしてだ、リリアーナ。別にお前に許可が必要なわけではないだろう。恋人でもあるまいし」
「こ、ここここ、恋人ではないですけど! ……そうなってほしいとは……いやいやいやいや、そうじゃなくて! 私とアマカワはパーティなんです! 見守る義務がありますから!」
実際に恋人じゃないけどさ、そこまで強く否定させるとさすがに傷つくわ、うん。
「パーティねぇ……まあいいさ、それでは三人で話をしよう。マリン、アマカワの書類は貰っていくぞ」
「あ、はーい」
「それと、ちゃんと仕事をしろよ? これでも、職員の仕事ぶりは見ているからな?」
「……す、すみませ~ん!」
泣き出しそうなマリンさんを置いて、俺はギルマスの後に続いて歩き出した。
そこは冒険者ギルドの奥の部屋。本来なら関係者以外立ち入り禁止の場所ではないだろうか。
「入れ」
「し、失礼します」
通された部屋には特に華美な装飾などはなく、とても実用的にテーブルやイスが配置されている。
壁には冒険者ギルドだからだろうか、剣や盾や鎧など、まさに冒険者が身に付けそうな物が飾られているのだが、こちらも観賞用ではなく実用性を重視した作りのように見えた。
「リリアーナから聞いていると思うが、私はゼルジュラーダ冒険者ギルドのギルドマスター、ルシアナ・クレセンスだ」
「よ、よろしくお願い、します」
これから何が始まるのか、そもそも冒険者になるための試験はどうなったのか、気になることだらけだが今の俺には流れに身を任せることしかできない。
「単刀直入に聞こう。アマカワよ、お前は転生者か?」
「――!」
い、いきなりバレてるんですけどー!
いや、これは俺がポロリとスキルについて口走ってしまったのが悪いんだが、有用性ってだけですぐにバレるものなのか? それとも、かまをかけているだけなのか?
「……な、なんのことでしょうか?」
「白を切るつもりか? というか、否定しない時点で肯定しているようなものだぞ?」
「ぐぬっ!」
「いや、そこで唸られても。お前、嘘が付けないタイプの人間か」
……はい! 墓穴を掘りましたー!
もう作り笑いを浮かべるしかできないんだが。
リリアーナは……うん、そんな残念そうなものを見る目でこっちを見ないでほしいんだけどね!
「……えっと、その……はい」
「し、師匠! アマカワは転生して間もないようで、グランザリウスのことをほとんど知らないんです! その、あまり取って食うような真似は――」
「お前はアホか」
「ア、アホとはなんですか!」
「なんで私がアマカワを取って食わねばならんのだ」
「……だって、師匠ですし、かわいいもの大好きですし」
ん? 今、かわいいものって言ったか?
「確かにアマカワはかわいい! リリアーナに勝るとも劣らない美貌を持っている! だが、弟子が手を付けた以上、奪うような真似はせんよ」
「ですから! 私とアマカワはそういう関係では――」
「はいはい、御託はいいから本題に入らせてもらうぞ」
「も、もう! 師匠のバカ!」
アホやらバカやらが飛び交っているが、いったい今の状況はどうなっているのだろう。話の行き先の見当が全くつかないんだが。
「さて、アマカワよ。まずは君が冒険者になるための試験なんだが……」
「……はい」
「……試験なんぞパスして、合格だ」
「「……えっ?」」
「転生者を逃すわけがないだろう。とは言っても、リリアーナが実力を保証しているのだから、普通に試験をしても合格だろうしな」
「……あの、そんなんで決めちゃっていいんですか? 書類にも書いてますが、賢者ですけど魔法は使えませんよ? 戦い方はナイフで接近戦ですよ?」
「使える奴ならどんな戦い方をしてくれても構わんさ。だが一応、ステータスは見せてもらうがいいかな?」
「……は、はい」
よく分からないが、どうやら俺は冒険者になれたようだ。
「……そ、そうですが?」
「へぇ、君、面白いねぇ」
「……あの、何がでしょうか?」
理解できない言葉を呟き、無言のまま上から下まで視線を注いだ後――ギルマスは突然大笑いを始めてしまった。
「……くくく、あははははっ! ごめんね、ちょっと驚かせたかっただけなのよ!」
「……も、もう、師匠! アマカワに変なことしないでくださいよ!」
「いや、すまないな。それにしてもリリアーナが惚れ込むとはな。いやはや、さすがの美貌の持ち主だよ」
「ちょっと、そんなんじゃないですからね!」
……ん? 惚れ込むとはどういうことだ?
転生者だからスキルの有用性を認められているってことだろうか。
「……あぁ! だからパーティも組めるってことか!」
「ちょっと、今どういう解釈をしたのよ!」
「え? 俺とパーティを組む利点について、スキルの有用性かなって――」
「スキルの有用性、だと?」
「「……あっ!」」
やべぇ、転生者ってことを隠すのもそうだけど、スキルについてもあまり公にはできないんだった。
……めっちゃ見てるんですけど、ギルマス!
「……名前は、アマカワケントか」
「……は、はい」
「どれ、アマカワ。少し私と話をしようじゃないか――二人っきりでな」
「えっ!」
「ダ、ダメですよ!」
「どうしてだ、リリアーナ。別にお前に許可が必要なわけではないだろう。恋人でもあるまいし」
「こ、ここここ、恋人ではないですけど! ……そうなってほしいとは……いやいやいやいや、そうじゃなくて! 私とアマカワはパーティなんです! 見守る義務がありますから!」
実際に恋人じゃないけどさ、そこまで強く否定させるとさすがに傷つくわ、うん。
「パーティねぇ……まあいいさ、それでは三人で話をしよう。マリン、アマカワの書類は貰っていくぞ」
「あ、はーい」
「それと、ちゃんと仕事をしろよ? これでも、職員の仕事ぶりは見ているからな?」
「……す、すみませ~ん!」
泣き出しそうなマリンさんを置いて、俺はギルマスの後に続いて歩き出した。
そこは冒険者ギルドの奥の部屋。本来なら関係者以外立ち入り禁止の場所ではないだろうか。
「入れ」
「し、失礼します」
通された部屋には特に華美な装飾などはなく、とても実用的にテーブルやイスが配置されている。
壁には冒険者ギルドだからだろうか、剣や盾や鎧など、まさに冒険者が身に付けそうな物が飾られているのだが、こちらも観賞用ではなく実用性を重視した作りのように見えた。
「リリアーナから聞いていると思うが、私はゼルジュラーダ冒険者ギルドのギルドマスター、ルシアナ・クレセンスだ」
「よ、よろしくお願い、します」
これから何が始まるのか、そもそも冒険者になるための試験はどうなったのか、気になることだらけだが今の俺には流れに身を任せることしかできない。
「単刀直入に聞こう。アマカワよ、お前は転生者か?」
「――!」
い、いきなりバレてるんですけどー!
いや、これは俺がポロリとスキルについて口走ってしまったのが悪いんだが、有用性ってだけですぐにバレるものなのか? それとも、かまをかけているだけなのか?
「……な、なんのことでしょうか?」
「白を切るつもりか? というか、否定しない時点で肯定しているようなものだぞ?」
「ぐぬっ!」
「いや、そこで唸られても。お前、嘘が付けないタイプの人間か」
……はい! 墓穴を掘りましたー!
もう作り笑いを浮かべるしかできないんだが。
リリアーナは……うん、そんな残念そうなものを見る目でこっちを見ないでほしいんだけどね!
「……えっと、その……はい」
「し、師匠! アマカワは転生して間もないようで、グランザリウスのことをほとんど知らないんです! その、あまり取って食うような真似は――」
「お前はアホか」
「ア、アホとはなんですか!」
「なんで私がアマカワを取って食わねばならんのだ」
「……だって、師匠ですし、かわいいもの大好きですし」
ん? 今、かわいいものって言ったか?
「確かにアマカワはかわいい! リリアーナに勝るとも劣らない美貌を持っている! だが、弟子が手を付けた以上、奪うような真似はせんよ」
「ですから! 私とアマカワはそういう関係では――」
「はいはい、御託はいいから本題に入らせてもらうぞ」
「も、もう! 師匠のバカ!」
アホやらバカやらが飛び交っているが、いったい今の状況はどうなっているのだろう。話の行き先の見当が全くつかないんだが。
「さて、アマカワよ。まずは君が冒険者になるための試験なんだが……」
「……はい」
「……試験なんぞパスして、合格だ」
「「……えっ?」」
「転生者を逃すわけがないだろう。とは言っても、リリアーナが実力を保証しているのだから、普通に試験をしても合格だろうしな」
「……あの、そんなんで決めちゃっていいんですか? 書類にも書いてますが、賢者ですけど魔法は使えませんよ? 戦い方はナイフで接近戦ですよ?」
「使える奴ならどんな戦い方をしてくれても構わんさ。だが一応、ステータスは見せてもらうがいいかな?」
「……は、はい」
よく分からないが、どうやら俺は冒険者になれたようだ。
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