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第1章:異世界転生
売却
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冒険者ギルドを後にした俺たちは、リリアーナの提案でアースレイロッグを売るために馴染みのお店へ向かうことになった。
道中では多くの人からリリアーナは声を掛けられていたので、実力だけではなく知名度も相当高いのだと分かる。
それに、信頼されているということも。
「リリアーナって人気者だな」
「どうかしら。普通に話して、普通に買い物してるだけなんだけどね」
「それが身近に感じられるポイントなのかもな」
そんな話をしながらだったからか、目的地にはすぐに到着した。
しかし、さすがは上級冒険者馴染みのお店というべきか……めっちゃでかいお店なんだけど。
「ここは、私の親戚が営んでいるお店なのよ」
「そ、そうなんだ。リリアーナは上級冒険者で、親戚はこんな立派なお店を営んでいるって、すごい家系なんだな」
「そうかしら? 周りはこんな人ばかりだから分からないわ」
……あぁ、そうですか。
もしかして、俺はものすごい人とパーティを組んでしまったのかもしれない。
「とりあえず、外にいても始まらないしさっさと入りましょう」
「あ、あぁ、そうだな」
リリアーナに促される形でお店の扉を開けた。
──カランコロンカラン。
「はーい! って、リリアーナじゃないの!」
「お久しぶりです、アレッサ」
「本当に久しぶりね、元気にしてた?」
「うん。顔を出せなくてごめんね、なかなかお店で売れそうな素材が手に入らなくてさ」
「リリアーナからならなんでも買い取るって言ってるんだから、顔を出してよね」
この綺麗な女性がリリアーナの親戚の方だろうか。
敬語を使っているということは年上ということかな。ということは……うん、やっぱり年齢のことは忘れよう。
「それでー? さっきから気になってるんだけど、そっちのかわいい子は誰なの? リリアーナの彼氏?」
「かれ!? ま、まだ違うわよ!」
「まだ? それって──」
「あー! ああー! 違うから! アマカワは私とパーティを組んだ新人冒険者よ!」
「えっと、天川賢斗、です」
「アマカワ君ね。私はアレッサ、このお店のオーナーよ、よろしくね」
手を差し出されたので握り返したのだが……ものすごく見られているんだけど。それに、手も離してくれないし。
「ねえねえ、あなたから見てリリアーナはどうなの? 彼女候補になれるかな?」
「えっと、なんの話でしょうか?」
「もしなれないなら、私で手を打たない? こんなかわいい男の子なんて、なかなかお目に掛かれな──」
「アレッサアアアアァァ? 何を言っているんですかああああぁぁ?」
俺とアレッサさんの間に体を入れてきたリリアーナがものすごい形相で睨んでいる。
「あはは! 冗談よ、冗談! もう、リリアーナもかわいいんだからー!」
「じょ、冗談に聞こえないのよ!」
「まあ、半分冗談だからかしら?」
「ちょっと!」
「だーかーらー! 冗談なんだって! それで、素材っていうのはなんなのかしら? さっきの発言からだと、私のお店で取り扱える素材が手に入ったってことよね?」
アレッサさんの言葉にリリアーナがこちらを振り返り頷いたので、俺は鞄から出すフリをして空間収納からアースレイロッグを取り出した。
「おぉーっ! これって、アースレイロッグじゃないのよ! アマカワ君が見つけたの?」
「えっと、そうですね」
「どこでどこで? もし採掘場が見つかったなら、高値で情報を買い取るわよ?」
「そこは言わせませーん!」
「えぇーっ! ……ということは、リリアーナも知っているのね?」
ターゲットが俺からリリアーナに変わったのか、肩に手を回して壁際まで移動しようとする。
しかし、リリアーナはその腕をどかしてアースレイロッグの値段を聞いていた。
「まずは、これの値段から聞いてもいいかな?」
「値段かぁ……そうねえ、このサイズなら10リラで買い取るわよ」
「じゅ、10リラ!?」
それって、円で言うと10万円ってことですけど!?
「その言葉に偽りはないわよね?」
「私がリリアーナに嘘を言ったことなんてある?」
「……ある。ついさっき」
「あれは冗談であって、嘘ではないわよー。って、いったいなんなのよ、他にも何か素材があるの?」
「……アマカワ、全部出していいわよ?」
「い、いいのか? 結構な量になるけど」
「大丈夫。だって、アレッサだもの」
「ん? 全部って……ま、まさか!」
どうなっても知らんからな。
俺はリリアーナに言われた通りアースレイロッグを全て取り出した。
明らかに鞄には入らない量なのだが、空間魔法持ちということで誤魔化しは効くはずだ。
そして、取り出したその量は最初に見せた物の10倍はある。単純計算で……100万円相当になってしまうんだが、大丈夫なのだろうか。
「……あは、あはは……マ、マジ?」
「マジマジ。それで、これってまとめて買い取れたりする? まとめての売却ってことで、少し色を付けてもらえると嬉しいんだけど」
さ、さらにたかるつもりですか、リリアーナは!
「もちろんよ! これなら、120リラで買い取ってあげるわ!」
そして即決ですか!
えっと、120リラ……120万円……無一文から、一気にお金持ちになってしまった。
道中では多くの人からリリアーナは声を掛けられていたので、実力だけではなく知名度も相当高いのだと分かる。
それに、信頼されているということも。
「リリアーナって人気者だな」
「どうかしら。普通に話して、普通に買い物してるだけなんだけどね」
「それが身近に感じられるポイントなのかもな」
そんな話をしながらだったからか、目的地にはすぐに到着した。
しかし、さすがは上級冒険者馴染みのお店というべきか……めっちゃでかいお店なんだけど。
「ここは、私の親戚が営んでいるお店なのよ」
「そ、そうなんだ。リリアーナは上級冒険者で、親戚はこんな立派なお店を営んでいるって、すごい家系なんだな」
「そうかしら? 周りはこんな人ばかりだから分からないわ」
……あぁ、そうですか。
もしかして、俺はものすごい人とパーティを組んでしまったのかもしれない。
「とりあえず、外にいても始まらないしさっさと入りましょう」
「あ、あぁ、そうだな」
リリアーナに促される形でお店の扉を開けた。
──カランコロンカラン。
「はーい! って、リリアーナじゃないの!」
「お久しぶりです、アレッサ」
「本当に久しぶりね、元気にしてた?」
「うん。顔を出せなくてごめんね、なかなかお店で売れそうな素材が手に入らなくてさ」
「リリアーナからならなんでも買い取るって言ってるんだから、顔を出してよね」
この綺麗な女性がリリアーナの親戚の方だろうか。
敬語を使っているということは年上ということかな。ということは……うん、やっぱり年齢のことは忘れよう。
「それでー? さっきから気になってるんだけど、そっちのかわいい子は誰なの? リリアーナの彼氏?」
「かれ!? ま、まだ違うわよ!」
「まだ? それって──」
「あー! ああー! 違うから! アマカワは私とパーティを組んだ新人冒険者よ!」
「えっと、天川賢斗、です」
「アマカワ君ね。私はアレッサ、このお店のオーナーよ、よろしくね」
手を差し出されたので握り返したのだが……ものすごく見られているんだけど。それに、手も離してくれないし。
「ねえねえ、あなたから見てリリアーナはどうなの? 彼女候補になれるかな?」
「えっと、なんの話でしょうか?」
「もしなれないなら、私で手を打たない? こんなかわいい男の子なんて、なかなかお目に掛かれな──」
「アレッサアアアアァァ? 何を言っているんですかああああぁぁ?」
俺とアレッサさんの間に体を入れてきたリリアーナがものすごい形相で睨んでいる。
「あはは! 冗談よ、冗談! もう、リリアーナもかわいいんだからー!」
「じょ、冗談に聞こえないのよ!」
「まあ、半分冗談だからかしら?」
「ちょっと!」
「だーかーらー! 冗談なんだって! それで、素材っていうのはなんなのかしら? さっきの発言からだと、私のお店で取り扱える素材が手に入ったってことよね?」
アレッサさんの言葉にリリアーナがこちらを振り返り頷いたので、俺は鞄から出すフリをして空間収納からアースレイロッグを取り出した。
「おぉーっ! これって、アースレイロッグじゃないのよ! アマカワ君が見つけたの?」
「えっと、そうですね」
「どこでどこで? もし採掘場が見つかったなら、高値で情報を買い取るわよ?」
「そこは言わせませーん!」
「えぇーっ! ……ということは、リリアーナも知っているのね?」
ターゲットが俺からリリアーナに変わったのか、肩に手を回して壁際まで移動しようとする。
しかし、リリアーナはその腕をどかしてアースレイロッグの値段を聞いていた。
「まずは、これの値段から聞いてもいいかな?」
「値段かぁ……そうねえ、このサイズなら10リラで買い取るわよ」
「じゅ、10リラ!?」
それって、円で言うと10万円ってことですけど!?
「その言葉に偽りはないわよね?」
「私がリリアーナに嘘を言ったことなんてある?」
「……ある。ついさっき」
「あれは冗談であって、嘘ではないわよー。って、いったいなんなのよ、他にも何か素材があるの?」
「……アマカワ、全部出していいわよ?」
「い、いいのか? 結構な量になるけど」
「大丈夫。だって、アレッサだもの」
「ん? 全部って……ま、まさか!」
どうなっても知らんからな。
俺はリリアーナに言われた通りアースレイロッグを全て取り出した。
明らかに鞄には入らない量なのだが、空間魔法持ちということで誤魔化しは効くはずだ。
そして、取り出したその量は最初に見せた物の10倍はある。単純計算で……100万円相当になってしまうんだが、大丈夫なのだろうか。
「……あは、あはは……マ、マジ?」
「マジマジ。それで、これってまとめて買い取れたりする? まとめての売却ってことで、少し色を付けてもらえると嬉しいんだけど」
さ、さらにたかるつもりですか、リリアーナは!
「もちろんよ! これなら、120リラで買い取ってあげるわ!」
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