職業賢者、魔法はまだない ~サバイバルから始まる異世界生活~

渡琉兎

文字の大きさ
31 / 56
第1章:異世界転生

ギルドカードと昇級と

しおりを挟む
 ギルマスとのやり取りを終えて部屋を出るとすぐにマリンさんから声を掛けられた。

「ちょっと! 試験もなしに冒険者になるだなんて前代未聞なんですけど!」
「……なんで知ってるんですか?」
「ギルマスから魔法通信が入ったのよ! 全く、いきなりギルドカードを準備しろって言うんだから驚きですよー」
「……魔法通信?」

 なんだか聞き慣れない響きである。元の世界で言うところの電話みたいなものだろうか。

「それって、離れたところにいる人へ連絡できる手段ですか?」
「そりゃそうよ、魔法通信だもの」
「……それってスキルですか?」
「そうそう、スキルよ」

 ……この世界、スキルを極めることができたら最強になれるんじゃないだろうか。
 しかし、スキルということは俺も習得できる可能性が高い。
 習得できるスキル一覧には載ってなかったから、何かのスキルから発展して現れるかもしれないな。

「それはそうと――はい、これ!」
「これは?」
「さっきも言いましたよー! これが冒険者を証明するギルドカードです!」
「おぉっ、これが! ……って、茶色い金属ってことは、アースレイロッグ?」
「んなアホな! 新人のギルドカードにそんな高級品を使うわけないじゃないですかー!」
「あー、そっか、そうだよな、あははー」

 実は大量に持っているんです、とは言えずに空笑いをするにとどめた。
 そういえば、リリアーナがこれを売れば三ヶ月は遊んで暮らせると言っていたけど、どこで売ればいいんだろうか。
 ……うん、どうやらマリンさんに聞いてはいけないようだ。リリアーナがものすごい勢いで首を横に振っているんだもの。

「ギルドカードも冒険者の等級によって材質を変えて支給します。新人には銅プレート。下級には銀、中級には金、そして上級にはアースレイロッグが使われます!」
「へぇー、上級がアースレイロッグなのか」
「ですから、リリアーナさんのギルドカードはアースレイロッグで作られているんですよー!」
「それはそうと、その等級を上げるにはどうしたらいいんですか?」

 正直なところ、ギルドカードの材質なんてどうでもいい。身分証明になればなんでもいいのだ。
 それよりも、しっかりと自分で稼ぐためには等級を上げて実入りの良い依頼をこなせるようにならなければならないのだから、そちらの方が重要である。

「……はい、それじゃあ説明しますねー」
「……い、いきなりやる気がなくなってませんか?」
「そんなことないですよー。別にー? 私が元気よく説明したことをどうでもいいみたいに言われたから拗ねているとかそんなんじゃないですしー?」

 いや、絶対に拗ねてるでしょうよ!

「えっと、ギルドカードの素材で等級が分かるだなんて、考えられてますねー! ぱっと見だと実力が分からない人もいますけど、ギルドカードを見れば一目瞭然だー!」
「……そう、そうなんですよ! 数年前までは一律で銀プレートだったんですが、いちいちギルドカードを確認して、等級を見て、それで依頼を受けれる受けれない判断をしていたので面倒だったんですよー!」
「そ、そうなのか、凄い進歩だなー!」
「そうなんです! ですから、どうでもいいものじゃないんですからねー!」
「ありがたく頂戴しますー!」

 ……な、何なんだよ、このやり取りは!
 そしてリリアーナも冷たい視線を向けるだけじゃなくてマリンさんを止めてくれよな!

「それじゃあ、次の話ですけどー……等級の上げ方でしたっけ?」
「そ、そうです」
「新人から下級には比較的簡単に上がることができます。それは、素材を一定数納品することですねー」
「……えっ、それだけ?」
「はい、それだけですー。ですが、素材と言っても何でもいいわけではないですよー。良質な動物の素材だったり、魔獣の素材だったりが評価基準となりますー」
「……魔獣? 魔族じゃなくて?」

 俺が倒したのはエルフの森ででかくなっていた動物だったり、鑑定で魔族と出たゲジュランダとオルトロスの二匹。
 魔獣という存在がいるのなら、オルトロスあたりは魔獣と出てもおかしくないと思うんだけどなぁ。

「魔族って、そんな素材があったら下級どころか、中級に上がってしまいますよー!」
「……そうなのか?」
「そうですよー。魔族というのは魔獣の上位種であり、出会ってしまったら死を覚悟するくらいの化物なんですよ?」
「……えっと、そうなのか、リリアーナ?」
「そうよ。だけど、アマカワは今のところ気にしないようにね。絶対に、気にしないでね?」
「……は、はーい、気をつけまーす」

 これは絶対に魔族の素材を出すわけにはいかないな。そんなことをしたらマリンさんに疑われてしまう。
 ただでさえ試験免除で冒険者になってしまったのだ、これ以上目立つ行動は慎むべきだろう。

「下級から中級、さらには上級に上がるにはちゃんとした手順もありますから、それは下級に上がった時にでも説明しますねー」
「……よ、よろしくお願いします」
「それじゃあ、後はリリアーナさんに聞いてくださーい。私は仕事に戻りますのでー!」

 ……これは、魔獣や魔族のことについて詳しく教えてもらう必要がありそうだな。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって? そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界転生旅日記〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
 農家の四男に転生したルイ。   そんなルイは、五歳の高熱を出した闘病中に、前世の記憶を思い出し、ステータスを見れることに気付き、自分の能力を自覚した。  農家の四男には未来はないと、家族に隠れて金策を開始する。  十歳の時に行われたスキル鑑定の儀で、スキル【生活魔法 Lv.∞】と【鑑定 Lv.3】を授かったが、親父に「家の役には立たない」と、家を追い出される。   家を追い出されるきっかけとなった【生活魔法】だが、転生あるある?の思わぬ展開を迎えることになる。   ルイの安寧の地を求めた旅が、今始まる! 見切り発車。不定期更新。 カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

処理中です...