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第1章:異世界転生
追及と朝ご飯
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「──カワ」
……ぅぅん、何か、聞こえる?
「──マカワ」
…………もう少し、寝かせて。
「アマカワ!」
「……んあ? ……あぁ、おはよう、リリアーナ」
俺は体を起こして大きく伸びをする。
床に寝ていたからか、身体中からコキコキと音が鳴り、そのまま大きな欠伸が出てしまう。
「おはよう……って、違うわよ! あなた、なんで床で寝てるのよ!」
「んあ? ……あー、うん、えっと……あ、あれだ! ね、寝相が悪くてな!」
「……はあ?」
「その、隣で寝てたんだけど、転がって地面に落ちちゃって。起き上がるのも面倒だったから、そのまま床で……あは、あははー」
ものすごく無理やりな言い訳なんだが、今の俺の頭ではこれくらいしか思い浮かばない。だって、寝起きなんだもんよ。
「……ふーん」
……いや、なんでそこで自分の胸元とか確認しているんでしょうか、リリアーナ?
「……まあ、いいわよ。……その、今度はちゃんと一緒に、寝てね?」
「――! ……わ、分かった」
な、なんでそこで上目遣い? というか、なんでそんなに寝たいんだよ!
……いやまあ、俺だって一緒に寝たい気持ちはあるんだが。
「……と、とりあえず! 今日はどうする? アレッサさんとギャレミナさんのところに行くのは確定だけど」
「ギャレミナさんのところは夜だし、朝ご飯を食べたらアレッサさんのお店に行ってみようかしら。その後に冒険者ギルドに顔を出してみましょう」
というわけで、とりあえずの俺たちの行動が決まった。
※※※※
宿屋に併設されている食堂に足を運ぶと、そこにはアガサさんが他のお客さんの注文を取っていた。
「おや、おはよう」
「おはようございます、アガサさん」
「……おはようございます」
あの状況を作り出した張本人……後で問い詰めなければ。
「……おやおや、この様子じゃあ、何もなかったのかしら?」
「あるわけないでしょうに!」
「とりあえず空いている席に座っておくれ。後で注文を取りに行くからね」
ちょうど朝ご飯の時間帯ということもあり、食堂にはどんどんと人が入ってきている。
こんな忙しい時間に問い詰めるのはどうかと考えて仕方なくリリアーナと一緒に空いている席へ座った。
「アマカワ、どうしたの?」
「いや、なんでもない」
というか、何かぼそぼそと話をしていたのはリリアーナじゃなかったか? ……まあいいや、本人に聞くのは何だか俺が恥ずかしいしな。
とりあえず、テーブルの置かれているメニューから頼むものを決めておくか。
「なあ、リリアーナ。ここのオススメとかって分かるか?」
「そうねえ……森の果物を使ったスイーツがオススメよ!」
「……えっと、朝ご飯なんだけど」
「スイーツもご飯になるじゃないの」
……ダメだこりゃ。名前だけではよく分からんが、とりあえず軽く食べられそうなものに当たりを付けておくか。
「はいよ、お待たせしたね」
しばらくしてやって来たアガサさんに、いくつかのメニューを指差してどんな料理かを聞いてみた。
「このギャロプ焼きは馬の魔獣の肉を焼いたものだね。旨みは強いけど、朝から食べるのはガタイの良い冒険者くらいさね。こっちのシープサラダは森の野菜に軽く味付けをした料理だから食べやすいかね。朝ご飯にはパンも付いてくるから、あっさり食べたいならシープサラダをオススメするよ」
「それじゃあ、俺はそのシープサラダとパンを」
「私はいつもので!」
「はいよ!」
注文を受けたアガサさんはすぐに厨房へと引っ込んでしまった。
昨日来た時はアガサさん一人しか姿を見なかったが、他にも従業員はいるようだ。
まあ、結構大きな宿屋だし当然と言えば当然か。
「リリアーナは何を頼んだんだ? いつものって言ってたけど」
「うふふー! 木苺とクリームを挟んだサンドイッチよ!」
「……おぉ、そうか。さすがは女の子、なのかな?」
そのチョイス、俺には無理だわ。
またしばらくすると、今度は従業員の人が料理を運んできてくれた。
「おぉ、美味そうだな」
「アガサさんの料理は美味しいって有名なの。だから、宿屋を利用していないお客さんが食堂を利用しにくることもあるんだって」
「それはすごいな」
しかし、昨日のレストランで食べた料理があれだったからなぁ……見た目に騙されてはいけないという教訓を得た俺は、とりあえず一口食べてみることにした。
「いただきます」
……ほほぅ……ふむ……これは……。
「う、美味いなあ!」
「でしょでしょー! うふふ、こっちのサンドイッチも美味しいけど、食べてみる?」
「……いや、遠慮しておこう」
確かに気になるけど、さすがにサラダとスイーツを一緒に食べる勇気はないよ。
「そうだ!」
「どうしたの?」
「リリアーナ、ちょっと失礼」
「何を――!?」
俺はリリアーナのほっぺについていたクリームを人差し指で拭い、それを自分の口に入れる。
「……へぇ、甘さ控えめで、これも美味いなあ! 木苺の酸味をクリームに混ぜ合わされてるみたいだし、これなら人気になる理由も分かるよ」
「……」
「どうしたんだ、リリアーナ?」
「あ、あの、その……な、なんでもないわよ!」
「そうか? ……あ、もしかしてシープサラダが食べたかった――」
「違うから! もういいからー!」
何故だかそっぽを向かれてしまった。
……いったい、何だったんだろうか。
……ぅぅん、何か、聞こえる?
「──マカワ」
…………もう少し、寝かせて。
「アマカワ!」
「……んあ? ……あぁ、おはよう、リリアーナ」
俺は体を起こして大きく伸びをする。
床に寝ていたからか、身体中からコキコキと音が鳴り、そのまま大きな欠伸が出てしまう。
「おはよう……って、違うわよ! あなた、なんで床で寝てるのよ!」
「んあ? ……あー、うん、えっと……あ、あれだ! ね、寝相が悪くてな!」
「……はあ?」
「その、隣で寝てたんだけど、転がって地面に落ちちゃって。起き上がるのも面倒だったから、そのまま床で……あは、あははー」
ものすごく無理やりな言い訳なんだが、今の俺の頭ではこれくらいしか思い浮かばない。だって、寝起きなんだもんよ。
「……ふーん」
……いや、なんでそこで自分の胸元とか確認しているんでしょうか、リリアーナ?
「……まあ、いいわよ。……その、今度はちゃんと一緒に、寝てね?」
「――! ……わ、分かった」
な、なんでそこで上目遣い? というか、なんでそんなに寝たいんだよ!
……いやまあ、俺だって一緒に寝たい気持ちはあるんだが。
「……と、とりあえず! 今日はどうする? アレッサさんとギャレミナさんのところに行くのは確定だけど」
「ギャレミナさんのところは夜だし、朝ご飯を食べたらアレッサさんのお店に行ってみようかしら。その後に冒険者ギルドに顔を出してみましょう」
というわけで、とりあえずの俺たちの行動が決まった。
※※※※
宿屋に併設されている食堂に足を運ぶと、そこにはアガサさんが他のお客さんの注文を取っていた。
「おや、おはよう」
「おはようございます、アガサさん」
「……おはようございます」
あの状況を作り出した張本人……後で問い詰めなければ。
「……おやおや、この様子じゃあ、何もなかったのかしら?」
「あるわけないでしょうに!」
「とりあえず空いている席に座っておくれ。後で注文を取りに行くからね」
ちょうど朝ご飯の時間帯ということもあり、食堂にはどんどんと人が入ってきている。
こんな忙しい時間に問い詰めるのはどうかと考えて仕方なくリリアーナと一緒に空いている席へ座った。
「アマカワ、どうしたの?」
「いや、なんでもない」
というか、何かぼそぼそと話をしていたのはリリアーナじゃなかったか? ……まあいいや、本人に聞くのは何だか俺が恥ずかしいしな。
とりあえず、テーブルの置かれているメニューから頼むものを決めておくか。
「なあ、リリアーナ。ここのオススメとかって分かるか?」
「そうねえ……森の果物を使ったスイーツがオススメよ!」
「……えっと、朝ご飯なんだけど」
「スイーツもご飯になるじゃないの」
……ダメだこりゃ。名前だけではよく分からんが、とりあえず軽く食べられそうなものに当たりを付けておくか。
「はいよ、お待たせしたね」
しばらくしてやって来たアガサさんに、いくつかのメニューを指差してどんな料理かを聞いてみた。
「このギャロプ焼きは馬の魔獣の肉を焼いたものだね。旨みは強いけど、朝から食べるのはガタイの良い冒険者くらいさね。こっちのシープサラダは森の野菜に軽く味付けをした料理だから食べやすいかね。朝ご飯にはパンも付いてくるから、あっさり食べたいならシープサラダをオススメするよ」
「それじゃあ、俺はそのシープサラダとパンを」
「私はいつもので!」
「はいよ!」
注文を受けたアガサさんはすぐに厨房へと引っ込んでしまった。
昨日来た時はアガサさん一人しか姿を見なかったが、他にも従業員はいるようだ。
まあ、結構大きな宿屋だし当然と言えば当然か。
「リリアーナは何を頼んだんだ? いつものって言ってたけど」
「うふふー! 木苺とクリームを挟んだサンドイッチよ!」
「……おぉ、そうか。さすがは女の子、なのかな?」
そのチョイス、俺には無理だわ。
またしばらくすると、今度は従業員の人が料理を運んできてくれた。
「おぉ、美味そうだな」
「アガサさんの料理は美味しいって有名なの。だから、宿屋を利用していないお客さんが食堂を利用しにくることもあるんだって」
「それはすごいな」
しかし、昨日のレストランで食べた料理があれだったからなぁ……見た目に騙されてはいけないという教訓を得た俺は、とりあえず一口食べてみることにした。
「いただきます」
……ほほぅ……ふむ……これは……。
「う、美味いなあ!」
「でしょでしょー! うふふ、こっちのサンドイッチも美味しいけど、食べてみる?」
「……いや、遠慮しておこう」
確かに気になるけど、さすがにサラダとスイーツを一緒に食べる勇気はないよ。
「そうだ!」
「どうしたの?」
「リリアーナ、ちょっと失礼」
「何を――!?」
俺はリリアーナのほっぺについていたクリームを人差し指で拭い、それを自分の口に入れる。
「……へぇ、甘さ控えめで、これも美味いなあ! 木苺の酸味をクリームに混ぜ合わされてるみたいだし、これなら人気になる理由も分かるよ」
「……」
「どうしたんだ、リリアーナ?」
「あ、あの、その……な、なんでもないわよ!」
「そうか? ……あ、もしかしてシープサラダが食べたかった――」
「違うから! もういいからー!」
何故だかそっぽを向かれてしまった。
……いったい、何だったんだろうか。
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