異世界従魔具店へようこそ!〜私の外れスキルはモフモフと共にあり〜

渡琉兎

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第三章

第103話:開店は……お暇!

「…………暇ですね~」

 時間は昼を回り、太陽が傾き始めていた。
 その間、やってきた客は一人としておらず、楓はカウンターに突っ伏しながらそんなことを呟いた。

「だから言っただろう? 新装開店の宣伝もしてないんだから、今までと変わらない客足になるってな」

 オルダナがこれがいつも通りだと言わんばかりに口を開いた。

「これがいつも通りなんですか!?」
「あー……いいや、いつもより酷いな」
「なんでですかね~?」

 楓は突っ伏したままオルダナの方へ顔を向ける。

「そりゃお前、最近まで閉まっていたからな。開いているかも分からない、こんな奥まった場所にある従魔具店にわざわざ足を運ぶ客なんていないだろう」
「常連のお客様とかはいなかったんですか?」
「いたにはいたが……潰れたと思ったんじゃないか?」
「えぇっ!? そ、それは問題じゃないですか!!」

 オルダナとしては冗談のつもりだったが、楓は本気で心配の声を上げた。

「従魔具のメンテナンスもありますし、常連のお客様にだけでもお伝えしなきゃ!」
「俺の従魔具はそんな柔な作りはしてねぇよ。それに、あいつらは俺の家も知ってるからな。何かあってこっちが閉まっていたら、家に押しかけてくるから安心しろ」
「……それは安心してもいいことなんですか?」
「その時に新装開店したって伝えればいいだろう?」
「いや、そういうことじゃなくて」

 家に押しかけられることは問題じゃないのかと言いたかったのだが、オルダナは特に気にした素振りを見せない。
 こちらの世界ではそういうものなのかと納得しようと思った楓だが、自分がそれをされたら嫌だなと思い、聞いてみることにした。

「何かあったら家に押しかけられるのが普通なんですか?」
「んなわけあるか! ガキの頃から面倒を見ていた奴らだからって意味だよ! 誰にでも家の場所を教えるバカがいるわけないだろうが!」
「あ、あはは~。そ、そうですよね~」

 オルダナに怒鳴られながら、楓は頬を掻き苦笑いを浮かべる。
 とはいえ、こうも客が来なければ何もやることがない。
 楓とオルダナは交代で裏の作業場へ行き、既製品の従魔具を作っている。
 今はリディとミリーが休憩で作業場を使っているため、二人で店舗に立っている状況だ。
 しかし、このままでは仕事中が休憩中みたいになってしまうため、楓はリディとミリーの邪魔にならないよう、裏にこもって作業をしようかと考えてしまう。

「……休める時に休むんだろう?」
「あー……バレましたか?」
「横目で作業場を見てたら、誰だって気づくだろうが」

 苦笑いの楓だが、そこへオルダナが釘を刺す。

「子供たちが無理をしないよう、大人が積極的に休憩を取るって言ったのは、嬢ちゃんだろうが」
「そう、なんですけどね~」
「けどね~、じゃねえよ。決めたことならしっかり守れ」
「は~い」

 ダラ~っとした返事をした楓は、なんとか体を持ち上げて大きく伸びをする。
 椅子から立ち上がると、壁際の机に置かれたカタログに目を向けた。

「……このカタログ、ものすごく良い出来ですよね」

 カタログはセリシャが準備してくれたもので、従魔具のイラストも描かれている。
 パッと見ただけで首輪なのか、腕輪なのか、足輪なのか、これら以外にも様々なイラストがあるため、客が欲しいものが一目瞭然になっていた。

「さすがは商業ギルドのギルマスだよな。どこにそんなコネがあるんだか」
「そのコネの一つになっているのが、オルダナさんじゃないですか」

 オルダナは元々、商業ギルドと直接契約を結んでいた。
 それがセリシャにとってのコネの一つではないかと楓は口にする。

「それを言うなら、嬢ちゃんだって直接契約を結んでただろうが」
「うっ!?」
「うっ!? じゃねえからな? ったく、お前はよぅ……」

 こんな何気ない会話ができるのも、客がいないからだ。
 開店初日だというのに、このままこんな時間が続くのかと思っていた――その時だ。

 ――カランコロンカラン。

 従魔具店の扉が開き、呼び鈴が鳴った。

「いらっしゃいませ! ……って、あなたは!」

 来店した人物に見覚えがあった楓は、驚きの声を上げた。

「よう! 新装開店だって? 見に来たぜ!」
「ぼ、冒険者ギルドの、ギルマス様!!」

 現れたのは、強面でガタイの良い冒険者ギルドのギルドマスターだった。
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