俺TUEEE出来るって常識だよね？

第一章

リベンジ

『モンスターやっつけてからが冒険者だぞ』
　なんて言葉をギルドや、酒場でよく耳にした。俺はまだ酒は飲まないが情報収集の為に酒場に顔を出すこともしばしばしていた。
　《モンスター討伐が出来てEランク》らしく、Eランクから冒険者と認められるとの事だ。

　んじゃ今の俺は何なんだ？と思いはしたが、この世界ではそうなのであればそうと思う事しか出来ない。Fランクの俺がDランクとかに突っ掛かった所でボロ雑巾にされるのが目に見えている。

　そんな俺でも遂にモンスター討伐のクエストを受ける日がやって来た。
　長かった⋯⋯。その一言に限る。
　俺ときたら３ヶ月以上も町中を走り回っていたんだから、下積みが長いと言わざるを得ないのではないか？

【ツノウサギの角を３つ採取する】という、かなりイージーなものと噂のクエストからスタートすることにした。もう油断はしない。
　これでロングソードを失ったらただのマヌケだ。
　馴れさえすれば、角だけを取り無駄な殺生はしないのだが、初心者は倒してから角を採るのがセオリーなんだとか。

　採取クエストではあるが、討伐しても良いとの事で、討伐クエストと認識され初心者冒険者のスタートラインでもある。

　ギルドでクエストを決め、気持ちを落ち着かせながら、ツノウサギのいる場所へと向かいターゲットを見つけると、しっかりとツノウサギを凝視する。すると仄かに白く光っていることが分かった。やはり、ツノウサギはただの雑魚で間違い無かった。
　なぜただの雑魚にこう何度もやられているのか？
　考えるまでもない。俺の知識が足りなかったからだ。もちろん調子に乗っていたからではない。

　今度こそ慎重にと、足元の小石を拾い投げ1匹のツノウサギに命中させる。するとこちらに向かって突っ込んできた。
　落ち着いて見てみれば決して速くはない。
　サイドステップをし、ツノウサギの横からロングソードを振り下ろすだけで難なく倒せた。残り2匹も同様に石を投げ、挑発し、サイドステップし、振り下ろす。それだけだ。たったそれだけでクエストを達成できた。

　ギルドへ報告すると報酬として40kを貰う。俺は無言で受け取り、宿屋に帰る。いつもなら夕方過ぎまで走り回って40kを手入れ帰宅する。
　まだお昼前だというのに俺は40kを持って宿屋に帰ってきた。
　自室に着くと自然と涙が出た。


　何でかは解らなかった⋯⋯。


　時間にしてたった3分ほどだ。それだけで一日中走り回っていたのと変わらない報酬。疲れも無い。
　少し前には、死にかけるまで痛め付けられたツノウサギのはずだ。

　一昨日もツノウサギにやられている。
　怒りでも、呆れでもなく。虚無感と言えば言い過ぎだろう。
　それでも俺も冒険者としてスタートラインに立つことが出来たんだ。ここから新たな道のりを考え立ち止まることは無いんだ。