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第一章

キラキラ

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 どうしてこうなった―――


 それしか言葉が出てこない。いや、なんとなく想像は出来た。
 ただ、テンションがあがってしまっていたのだ。

 ポーションが使い物にならない、薬草売るんじゃなかった。ポーションを買ったら薬草いらないと思うだろ。

 ちょっとばかし無理をして戦闘すれば傷を負うことになる。そしたらポーションの出番だ!
 キラキラキラっと瞬時に傷が回復し、感動を覚える!これをしたかったのだ。

 そのためなら無理をするだろう?強いモンスターを倒せばその分、良い素材が手に入るし、スキルだって覚えやすくなる。雑魚モンスターをいくら狩ってもスキルはなかなか覚えられるもんじゃない。

 意気揚々と森に入り、サンダーベアの5匹の群れを発見する。普段ならまず逃げる。サンダーベアは動きが鈍足な為、たとえ群れていてもある程度の距離が離れていれば逃げるのはたやすい。
 戦う上では、群れには必ずリーダーがおり。リーダーは頭一つ強く要注意モンスターだ。

 一度スキルを発動させるとクールタイムがあり、スキルによって一定回数を使用するとしばらく使えなくなる。その為、スキルを発動するタイミングを考えながら戦わなくてはならない。

【隠密】で近づきリーダーを背後から切りつける。切りつけた瞬間に周りの4匹のこちらに気づく。即座に【ソードアロー】を連続で繰り出し牽制を図る。

 リーダーが雄たけびを上げながら腕を振り下ろしてくる。【ゴースト】を発動させ、錯覚させている間に後ろに回り水平切りを放ちさらにダメージを稼ぐ。
 その間に距離を詰めてくる4匹に対し再度【ソードアロー】を繰り出す。

 相手も雑魚では無い、流石に2回目の【ソードアロー】を2匹には避けられ、距離を詰められる。1匹目の攻撃はサイドステップで避け顔面を切りつけ、2匹目の攻撃は懐に入り込み切り上げる。その瞬間に後ろからのリーダーの攻撃を確認し、再度サイドステップでかわし合い打ちさせる。
 これにより1匹を倒すことに成功。あと4匹だ。

 どうやら【ソードアロー】を二連続で食らった2匹は雄たけびを上げるだけだ。同じサンダーベアの中でも戦いには慣れていない様子だった。ならば、後回しで言いただろうと考えたのが失敗だった。

 リーダーともう1匹に振り返った瞬間に、後方の2匹に地面に落ちていた石を投げられ、避けたところをリーダーともう1匹の同時攻撃がくる。流石に片方は避け切れず左腕に激痛が走る。

 バックステップで一度距離を常備していたポーションの3/1を左腕にかける。
 キラキラキラ~!
 とはならず回復しない⋯⋯。


 嘘でしょ?なんで?
 量が足りなかったか?この状況ではゆっくりもしていられない。思い切って残りもかけるが、回復しない⋯⋯
 買い間違えた?いや、ポーションくださいといったはず⋯⋯、ってことは偽物?
 最後の願いを込めて、もう1個のポーションを急いで全てかける。

 ⋯⋯⋯?


 それは無いって!!マジで!!2本で40kもしたんだぞ。
 その瞬間、ゴンと鈍い音がすると右目が見えなくなった。何が起きたのか理解が追いつかない。
 触ると額から流れた血が目にかかっていることがわかった。足元には拳大の石。石を投げられたのか?マズイ!
【ソードアロー】を連続で出すが、距離感がつかめず誰にも当たらない。マズイ!

 逃げるしかない。念のため残しておいた【スタミナ】と【SPEED】を使えばこの距離からなら、まだ逃げられる。
 そう思いスキルを唱えようとした瞬間。雷に打たれる。。。嘘だろ?
 よく見ると倒したと思っていた1匹は、かろうじて生きていた。クソッタレ!!

 意識が飛びそうになるが、グッとこらえスキルを発動する。
 しかし来た道のほうには5匹いる為、逆にしか逃げられない。ここにいるよりかはマシだと考え、この場から離れることを第一に考え走る。 

 ダメージがデカ過ぎたため、スキル効果時間は減少しており目に止まった洞窟へ何とか逃げ切る。

 マジでどうしてこうなった⋯⋯
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