悪魔とダラダラ異世界道中

灯籠

文字の大きさ
17 / 55

第17話

しおりを挟む
 「あなたは私にとっての恩人です、シイマさん。あの言葉のおかげで目が覚めました。」

 俺はレソにそう言われ、そっぽを向くしかなかった。ちょっとした辱めを受けているようだ。

 「それ以上言わないでください。僕なんてそんな大した人間じゃないですよ。」

 とレソに言うと、

 「いえ、そんなことはないです。むしろ、あなた達はもっと大したことをしそうですよ。」

 と返された。この世界に来た目的からすると、的を射ている気がする。

 「それでずっと考えていたのですが、お願いがあるんです。」

 「なんですか?」

 これはもうR-18まっしぐらだな。

 「その・・・私のことは呼び捨てで呼んでもらっていいですか?それから、いつものように話をしてください。」

 「え?」

 「ええ。・・・ダメですか?」

 「アッハハハ・・・」

 俺は笑うしかなかった。

 「な、なにがおかしいんですかっ。」

 レソは自分がからかわれていることに気がついた。

 「だって、そんなことだけで畏まってるから、滑稽だなーって思ってさ。」

 「こ、こーいうのは慣れてないから仕方ないじゃないですか。」

 慣れてないのはお互い様だ。俺だって、異性との交流はずっと避けてきたから、しゃべる口調すら分からない。

 けど、せっかくの異世界だ。少しは自分を変えてみるか。

 「分かったよ、レソ。」

 と俺がそう言った瞬間、彼女が急に固まった。

 「どうした?」

 と俺が聞くと、レソはハッとして、

 「いや、私のことをそんな感じで呼ぶ人を思い出しまして・・・。」

 と言った。一応聞いておこう。元カレくらいだったら、そいつを忘れさせるくらいの体験にさせてやろうじゃないか。童貞だけど。

 「それって誰?」

 「私の主人です。」

 ・・・え?

 「しゅ、主人?」

 「そういえば言ってませんでしたね。私、結婚してるんです。」

 ・・・は?エロ展開は?俺のこのムラムラはどうすんだ?俺は8割がそれ目的だったんだぞ?

 その瞬間、イーギが、

 「プ、プクククク・・・。」

 と口で腕を隠して笑い始めた。なるほど、そういうことか・・・。

 そう思いながらレソに顔を向き直すと、レソが涙を流していることに気がついた。

 「ど、どうしたんだ?」

 俺が戸惑いながらレソの様子をうかがうと、

 「いや、あの人のことや、子供のことを思い浮かべると、急に寂しくなって・・・うう。」

 と言ってきた。これですべてが腑に落ちた。レソの家が大きい理由も、イーギがくすくす笑っていた理由も。そして、レソがどうして自分を押し殺していたのかも。

 「レソ、アンタは主人や子供に会わせる顔がないから、その人たちのことを忘れて、別の顔を作ってたんだな。」

 「はい、はい・・・。」

 レソはそう言って泣き崩れ、俺に抱きついてきた。

 「頑張ったな、レソ。もう大丈夫だ。」

 俺はその人の代わりとして、レソの頭をなでてやった。



 レソが落ち着いて泣き止んだのを見て、俺はレソに一つ断った。

 「ちょっとイーギと話があるから、席を外していいか?」

 「ええ。いいですけど・・・。」

 許可を得た俺は、イーギを連れてレソの家を出た。

 レソの家の裏側に行った俺は、早速イーギの胸ぐらをつかんで家の壁に押しやって、魔女裁判の尋問をすることにした。

 「おいてめえ、いつから分かってた?」

 「あの女のことを調べ始めたのハ、俺達がそいつを助けたときダ。何があったのかラ、そーいうことが分かったんダヨ・・・ケケッ。」

 「なるほど、それを前もって知った上で、白々しい演技をして、俺のガッカリを待ちわびてたんだな?」

 「そういうこっタ。楽しませてもらったゼェ、オイ!」

 そこまでは分かる。

 「けどお前、それだけじゃ説明できない部分があるんだよ。」

 「なんダ?」

 「お前は俺の反応を楽しんでるんだよな。それも俺の内側の反応だ。それを知るために、俺にテレパシー使っただろ。」

 「ああ、使ったナ。」

 「よし、死ね。」

 「待テ待テ!だから前もって謝ったじゃんかヨ!それニ、こんなおもしれー状況で使わない手はないダロ!」

 「正直、あの状況でテレパシーを使うのはまだ分かる。俺も使う。けどな、俺の失念でお前が得するのがなんか気に食わねえんだよ。」

 「ハッ、残念でしター!お前のリアクション、見事だったゼェ!これだけで飯が何杯も食えるワ!愉悦、ゴチになりまース!ギャハハハハ!」

 「このヤロー・・・。」

 「そんなにムラムラしてたんなラ、寝取っちまえばいいだロ。まあ、お前には無理なことも知ってるんですけどネー!」

 「いっぺん死んでみるか。」

 この発言の後、俺はイーギをフルボッコにした。  
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート

みーくん
ファンタジー
気づいたら異世界に飛ばされていた、おっさん大工。 唯一の武器は、腰につけた工具袋—— …って、これ中身無限!?釘も木材もコンクリも出てくるんだけど!? 戸惑いながらも、拾った(?)ギャル魔法少女や謎の娘たちと家づくりを始めたおっさん。 土木工事からリゾート開発、果てはダンジョン探索まで!? 「異世界に家がないなら、建てればいいじゃない」 今日もおっさんはハンマー片手に、愛とユーモアと魔法で暮らしをDIY! 建築×育児×チート×ギャル “腰袋チート”で異世界を住みよく変える、大人の冒険がここに始まる! 腰活(こしかつっ!)よろしくお願いします

コンバット

サクラ近衛将監
ファンタジー
 藤堂 忍は、10歳の頃に難病に指定されているALS(amyotrophic lateral sclerosis:筋萎縮性側索硬化症)を発症した。  ALSは発症してから平均3年半で死に至るが、遅いケースでは10年以上にわたり闘病する場合もある。  忍は、不屈の闘志で最後まで運命に抗った。  担当医師の見立てでは、精々5年以内という余命期間を大幅に延長し、12年間の壮絶な闘病生活の果てについに力尽きて亡くなった。  その陰で家族の献身的な助力があったことは間違いないが、何よりも忍自身の生きようとする意志の力が大いに働いていたのである。  その超人的な精神の強靭さゆえに忍の生き様は、天上界の神々の心も揺り動かしていた。  かくして天上界でも類稀な神々の総意に依り、忍の魂は異なる世界への転生という形で蘇ることが許されたのである。  この物語は、地球世界に生を受けながらも、その生を満喫できないまま死に至った一人の若い女性の魂が、神々の助力により異世界で新たな生を受け、神々の加護を受けつつ新たな人生を歩む姿を描いたものである。  しかしながら、神々の意向とは裏腹に、転生した魂は、新たな闘いの場に身を投じることになった。  この物語は「カクヨム様」にも同時投稿します。  一応不定期なのですが、土曜の午後8時に投稿するよう努力いたします。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

処理中です...