悪魔とダラダラ異世界道中

灯籠

文字の大きさ
47 / 55

第46話

しおりを挟む
 「一応、もう一回だけ確認するが、お前がホントにクリプッセン姫なのか?」

 「そうよ、何か悪いの?」

 クリプッセン姫を見つけた俺達は、とりあえず人気のなさそうな場所に移り、状況を整理することにした。

 「なんか、姫っぽい恰好じゃねえからさ。」

 イーギの言う通り、姫の服装はそこいらの庶民と全く変わらなかった。

 「そりゃそうよ。豪華なドレスを身にまとって活動できると思ってるの?」

 「確かにそうだけどよ、それにしては溶け込むのが上手過ぎねーか?」

 「だからバレないと思ってたのよ。そのはずだったのに、コイツときたら・・・!」

 そう言って、クリプッセンが俺の方を指差し、俺の方を向いてきた。

 「分かってるの!?アンタのせいで、私がどれだけドキドキハラハラさせられたと思ってんのよ!?おかげで、初めての国外のワクワクが半減したわよ!」

 「へー、そーなんだ。」

 「もっと申し訳なさそうにしなさいよ。・・・まあ、バレちゃったし、今さらか。」

 そう言って姫は大きくため息をついて下を向くと、改まった態度で俺達を向き直し、こう聞いてきた。

 「で、私に何の用?このことをネタにして、私に脅しでもかけるつもり?それとも、私の命でも狙いに来たの?」

 ・・・まあ、そう考えるのがフツーだよな。

 「ブッブー。不正解だ。実は俺達、お前を国に送り届けるように言われてんだ。」

 これを伝えた瞬間、

 「へえ、そう、なんだ・・・。」

 と言って、姫の様子がおかしくなった。思っていたよりも落ち込み具合がハンパじゃない。ていうか、なんだこの感じ。コイツ、絶対落ち込んでるだけじゃねえだろ。

 「じゃあ、今まで私を助けてくれたり、声をかけてくれたのも、全部このためだったっていうのね?」

 「・・・は?」

 「分かってたわよ、こうなることくらい。結局、姫としての私のことしか考えてないんだから。」

 「・・・。」

 「ほら、連れて行きなさいよ、ほら。どうせ、手段は問わないとかって言われてるんでしょ?」

 そう言って、姫は俺に両手を差し出してきた。

 「・・・なあ、姫。」

 「何か質問?」

 「アンタは、姫であることのどこがそんなに嫌なんだ?」

 「窮屈よ。私を囲って閉じ込めるものでしかないわ。しかも、誰もにかまってくれないもの。それが嫌なのよ。」

 「そうか。・・・おい、イーギ。」

 「ん?どうした?」

 「気が変わった。コイツに付き合ってやる。文句ねえよな、イーギ?」

 「ケケッ、ああ。」

 「え、今なんて・・・?」

 「とにかく俺についてこい、クリプッセン。」



 今後の予定を変更した俺達は、クリプッセンを連れてそこいらの宿屋で部屋を借りた。俺達が泊まっていたあのホテルを使えば、変装していても姫だとバレかねないからだ。

 そうして無事に本日の宿を借りた俺達は、部屋でクリプッセンと雑談することにした。

 「お前、お忍びを始めて何日目だ?」

 「今日で3日目よ。・・・ていうかアンタ、私のことをお前呼ばわりしないでよ。」

 「お前こそ、俺のことをアンタ呼ばわりしてんだし、お互い様じゃねーか。それともアレか?姫扱いしてほしいのか?」

 「仕方ないじゃない。だって私、アンタ達の名前を知らないもん。」

 「ああ、そういや自己紹介してなかったな。俺はシイマ。そんでコイツがイーギだ。・・・てか、よくよく考えたら、名前も知らない赤の他人に、よくもまあホイホイとついてきたもんだな。」

 「確かにそうかもしれないけど、私を助けてくれたことは事実じゃない。それに・・・ッ!」

 そう言うと、急にクリプッセンが顔を背けだした。

 「それに、何だ?」

 「な、何でもないわ。・・・でも、とにかく私はこれまで通りに動いていいのよね?」

 「まあ、そうなるが・・・。ところでクリプッセン、その3日間で何やった?」

 これを聞くと、クリプッセンは意気揚々として3日間の行いを語ってきた。

 「ええと、そうね。名前だけ知ってる食べ物や飲み物を味わってみたり、夜の街を散策したり、読みたかった本を読んでみたり。とにかく、やりたかったことをやって、自由を満喫したわ。」

 「そうかそうか。それは良かったな。じゃあ、普通の人の暮らしに興味はあったりするのか?」

 「もちろんよ。皆からすると、私の暮らしがうらやましいと思ってるでしょうけど、私もうらやましがる側の立場でもあるのよ。」

 そう言っていたクリプッセンの顔は、さっきの顔から急にしんみりとした。

 「ほう。そんじゃ、俺達が普通の人の暮らしってやつを教えてやる、って言ったら、どうする?」

 「そりゃ、願ってもないチャンスだわ。ぜひお願いしたいわね。」

 「よし分かった。何をするか考えておくから、さっさと寝るとするか。」

 そう言って、俺とイーギはベッドで寝ることにした。

 「・・・ちょっと待ちなさいよ!私、床で寝ろっていうの!?」

 実はこの部屋、ベッドが2つしかないのだ。

 「あ、やべ。そーいや俺達、3人だったな。」

 「ホントだな、イーギ。」

 「う、嘘でしょ?私がカウントされてないんだけど・・・。」

 「シイマ、どうするよ?」

 「そうだな。ひいきするのは良くねえから、ここはジャンケンにでもするか。なあ、クリプッセンはジャンケンを知ってるか?」

 そう言ってクリプッセンの方を向くと、

 「ジャン、ケン・・・?」

 と言って思考がフリーズしていた。これって、俺の世界とこの世界、どっちが悪いんだ?

 そこで俺達はなんとか姫にジャンケンのルールを教え、ベッドで寝る人を決めてから就寝した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

コンバット

サクラ近衛将監
ファンタジー
 藤堂 忍は、10歳の頃に難病に指定されているALS(amyotrophic lateral sclerosis:筋萎縮性側索硬化症)を発症した。  ALSは発症してから平均3年半で死に至るが、遅いケースでは10年以上にわたり闘病する場合もある。  忍は、不屈の闘志で最後まで運命に抗った。  担当医師の見立てでは、精々5年以内という余命期間を大幅に延長し、12年間の壮絶な闘病生活の果てについに力尽きて亡くなった。  その陰で家族の献身的な助力があったことは間違いないが、何よりも忍自身の生きようとする意志の力が大いに働いていたのである。  その超人的な精神の強靭さゆえに忍の生き様は、天上界の神々の心も揺り動かしていた。  かくして天上界でも類稀な神々の総意に依り、忍の魂は異なる世界への転生という形で蘇ることが許されたのである。  この物語は、地球世界に生を受けながらも、その生を満喫できないまま死に至った一人の若い女性の魂が、神々の助力により異世界で新たな生を受け、神々の加護を受けつつ新たな人生を歩む姿を描いたものである。  しかしながら、神々の意向とは裏腹に、転生した魂は、新たな闘いの場に身を投じることになった。  この物語は「カクヨム様」にも同時投稿します。  一応不定期なのですが、土曜の午後8時に投稿するよう努力いたします。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート

みーくん
ファンタジー
気づいたら異世界に飛ばされていた、おっさん大工。 唯一の武器は、腰につけた工具袋—— …って、これ中身無限!?釘も木材もコンクリも出てくるんだけど!? 戸惑いながらも、拾った(?)ギャル魔法少女や謎の娘たちと家づくりを始めたおっさん。 土木工事からリゾート開発、果てはダンジョン探索まで!? 「異世界に家がないなら、建てればいいじゃない」 今日もおっさんはハンマー片手に、愛とユーモアと魔法で暮らしをDIY! 建築×育児×チート×ギャル “腰袋チート”で異世界を住みよく変える、大人の冒険がここに始まる! 腰活(こしかつっ!)よろしくお願いします

処理中です...